
誕生日に誰かが殺しにやってくる #14 エピローグ
エピローグ
「響ちゃん、これからはぼくがお兄さんだよ」
彼はワインを飲み干した。
『眼をとじて』
闇の中から声が聞こえる。
彼は眼をとじる。
『なにが見える?』
『響ちゃんが見えるよ』
彼女が微笑む。
『これからもずっと一緒よ』
彼は眼をひらく。
そこに彼女の姿はない。
眼の前にはただ暗黒の闇があるだけだ。
彼は再び眼をとじる。
彼女が微笑んで、彼を見つめている。
そして、手をのばしてくる。
彼女の指が彼の指にからまる。
眼をひらく。
両手を握りしめる。
触れることのできる指はない。
空虚な闇を握りしめる。
顔をふせる。
顎が震える。
ケーキの横の一枚のバースデーカード。
真っ白なカードに真っ赤な薔薇。
毎年、彼女が用意してくれていたものだ。
カードをひらいて、彼は文面を読む。
〈八代巧様
お誕生日おめでとうございます
この特別な日
あなたに最高の幸せが訪れますように
北浦響子〉
(了)