メインコンテンツへスキップ
見出し画像

ロシアスパイ 内閣情報調査室職員情報漏えい事件から学ぶ企業・個人のスパイ対策 ~情報エリートはロシアのスパイに籠絡されたのか〜   https://nonmadofactory.net/

    1.「内閣情報調査室」(当時)とは    内閣情報調査室(内調)は、内閣の重要政策に関する情報を収集・分析し、官邸の政策決定を支援する組織です。

    国内外の情勢について、公開情報だけでなく専門家等からの情報収集も行い、情報コミュニティの情報を集約・分析しています。

    つまり、ここで働く職員は、日本政府の政策判断につながる情報に接する立場にあります。

    今回の事件が重要なのは、「スパイに狙われるのは、特殊な人間だけではない」ということです。

    国家の情報機関ですら、人間関係・好意・金銭・心理的な負い目を利用した工作によって内部情報が流出したいう事例です。

    2.2008年に発覚した「内閣情報調査室情報漏えい事件」

    警察庁の公式資料によれば、2007年(平成19年)7月、当時52歳の元内閣事務官が、ロシアの情報機関員とみられる元在日ロシア大使館二等書記官から唆され、内閣情報調査室の秘密を漏らし、現金10万円の賄賂を受け取ったとされています。2008年1月、警視庁が元職員を検挙しました。

    警察庁・政府も国会答弁で、在日ロシア大使館員との不適切な交際 金銭の受領・内部情報の提供を認め、職員を懲戒免職にしたことを説明しています。

    衆議院・政府広報でも、2008年1月17日に「内閣情報調査室職員による情報流出」が官房長官会見の議題となっています。

    3.重要なのは「いきなり機密を要求されたわけではない」

    ここが今回の事件から学ぶ最大のポイントです。

    後年、TBSの取材に元内調職員「水谷俊夫氏(仮名)」として登場した人物は、ロシア側との関係について詳細を証言しています。

    本人証言によれば、最初から、「日本政府の秘密を教えてくれ」と言われたわけではありません。

    むしろ、

    ●知り合う

    ●会食する

    ●親しくなる

    ●小さな贈り物

    ●商品券

    ●現金

    ●情報を求められる

    ●断りづらくなる

    という段階を踏んでいたとされています。

    これは企業の内部不正・産業スパイ対策でも極めて重要なポイントです。

    4.「小さな贈り物」が最初の入口

    TBSの本人証言では、

    ●最初はハンカチセット

    ●その後、高速道路のカードや商品券など

    ●やがて現金が入った封筒

    本人の証言では、現金は5万円から始まり、その後10万円になったとされています。

    ここで重要なのは金額ではありません。

    問題は「受け取ることへの心理的抵抗が下がる」ことです。最初は、

    「これくらいならいいだろう」だったものが、

    「前にももらった」に変わる。

    そして、「今さら断るのも悪い」になっていく。

    最終的には、「相手から何かをもらっている自分」という状態が出来上がります。

    5.スパイ工作の怖さは「金銭」より「心理的負債」

    「人は、何かをもらったから、何か返さなければ」という心理が危険です。

    これは一般的な心理現象として知られる「返報性」とも関連します。

    例えば、

    「いつもごちそうしてもらっている」

    「何度も相談に乗ってもらった」

    「仕事を紹介してもらった」

    「プレゼントをもらった」

    という関係が続くと、

    「これくらいなら教えてもいいか」

    という境界線の緩みにつながる可能性があります。

    6.決定的に危険なのは「仕事上の情報を求められた瞬間」

    TBS報道による本人証言では、本人が内閣情報調査室から内閣衛星情報セ

    ンターに異動した後、

    ロシア側から、

    ●職場の座席表

    ●どのような職員が働いているか

    ●日本の衛星がどこを撮影しているのか

    などを聞かれたとされています。

    この段階になると、「友人との会食」ではなく「情報獲得工作」と見る必要

    があります。

    7.「断れなかったこと」が次の情報漏えいを生む

    本人証言で非常に興味深いのが、「もう会うのは終わりにしましょうか」という趣旨の相手からの言葉に対して、明確に断れなかったという点です。

    本人は後年、「そのときに、もうやめますと言えばよかった」という趣旨で振り返っています。

    つまり、最初の防御線は「警察」ではありません。

    本人が「これはおかしい」と感じた時点で関係を切ることです。

    8.「少しだけ返す」が最も危険

    本人証言では、相手の機嫌を取るため、職場端末に届いた海外メディアの

    翻訳記事を持ち帰り、自分の解説を加えたレポートとして相手に渡すようになったとされています。

    ここから企業経営者が学ぶべきことは、「機密情報を一気に盗まれる」と考

    えないことです。

    現実には、

    「公開情報だから」

    「これくらいなら」

    「自分の知識だから」

    「会社名は書いていないから」

    という小さな逸脱から始まる可能性があります。

    9.そして「自分はスパイに利用されている」と気づかなくなる

    TBSの取材では、本人は自分がロシアの情報機関関係者と接触しているという認識が十分ではなかったと語っています。

    これは極めて重要です。

    スパイ工作の成功とは、「相手にスパイだと認識させないこと」でもあります。

    相手から、「あなたは日本を裏切ってください」と言われたら、多くの人は断ります。

    しかし、

    「友人として会っているだけ」

    「外国人の知人から食事をごちそうになっているだけ」

    「情報交換しているだけ」なら、警戒心は低下します。

    10.企業経営者が最も警戒すべき「5つの赤信号」

    ①外国人との不自然な親密化

    外国人と付き合うこと自体が問題なのではありません。

    問題なのは、

    ●業務上必要以上に接近する

    ●個人的な会食が増える

    ●家族や私生活を聞かれる

    ●個人SNSへ誘導される

    ●秘密の相談を持ちかけられる

    などの組み合わせです。

    ②「小さな贈り物」

    例えば、

    ●高価な食事

    ●商品券

    ●交通費

    ●高級酒

    ●ブランド品

    ●現金

    ●旅行への招待など

    「この程度なら問題ない」という積み重ねこそ危険です。

    ③「情報交換」という言葉

    企業では、「こちらも情報を提供するので、そちらも教えてください」という形が非常に危険です。

    特に、

    ●顧客名簿

    ●開発計画

    ●未公開技術

    ●価格情報

    ●取引条件

    ●経営会議資料

    ●人事情報

    ●セキュリティ情報

    ●研究者・技術者の情報

    などは絶対に個人判断で提供しない。

    ④個人の「人脈」を狙う

    スパイは必ずしも社長本人を直接狙うとは限りません。

    例えば、社長・役員・部長・技術者・研究者という人間関係を利用

    して接近する可能性があります。

    したがって、

    「重要情報にアクセスできる人」=攻撃対象

    と考える必要があります。

    11.企業が作るべき「外国人接触ルール」

    企業経営者には、次のような簡単なルールを推奨します。

    「外国人との接触禁止」ではなく、「不自然な接触を会社に報告できる仕組み」を作る。

    例えば、

    【無 色】通常の商談・展示会・学会交流

    【YELLOW】個人的な食事・頻繁なSNS連絡・贈り物

    【ORANG】会社情報への質問・社員情報への質問・非公開情報の要求

    【R E D】秘密情報の要求・現金提供・秘密の会合・情報提供の見返り

    という社内基準を作ります。

    12.「社員を疑う」のではなく「社員を守る」

    これは非常に重要です。

    スパイ対策を、「怪しい社員を監視する制度」にしてしまうと、社員は何も報告しなくなります。

    むしろ、「困った接触を受けたら、怒られずに相談できるシステム」を作る。

    例えば、

    「外国人の知人から食事に誘われた」

    「高価なプレゼントをもらった」

    「会社のことを聞かれた」

    という段階で相談できれば、問題を小さいうちに止められます。

    13.個人として注意すべきこと

    ①「自分には重要情報はない」と考えない

    これは非常に危険です。

    本人は重要人物ではなくても、

    ●上司の予定

    ●会社の組織図

    ●誰がどの部署にいるか

    ●新製品の発売時期

    ●海外出張予定

    ●社内システム

    ●セキュリティ体制

    などを知っていることがあります。

    「断片情報」が組み合わされると価値を持つという発想が重要です。

    ②SNSで自分から情報を出し過ぎない

    現在は、スパイ側がゼロから人物を調査する必要はありません。

    SNSから、勤務先・役職・出張・趣味・行きつけの店・家族構成・人間関係・仕事上の悩みなどが分かる場合があります。

    したがって、「自分は情報を出していない」ではなく、「組み合わせれば何が分かるか」で考える必要があります。

    ③「相談相手」を1人作っておく

    最も実践的な対策です。

    もし、「この人、ちょっと変だな」と思ったときに、1人で判断しない。

    上司、コンプライアンス担当、セキュリティ担当、弁護士など、相談できる人を平時から決めておく。

    スパイ工作では、本人が、「考えすぎかな」と自分で危険を打ち消してしまうことがあります。

    ④「断る練習」をしておく

    例えば、「会社のことなので答えられません」

    「個人的に判断できることではありません」

    「贈り物は受け取れません」

    「会社の規則で禁止されています」

    「今後の会食については会社に確認します」

    という言葉をあらかじめ決めておく。

    重要なのは「理由を長く説明しない」ことです。

    断る理由を細かく説明すると、相手に交渉材料を与えてしまいます。

    14.経営者自身が狙われるケース

    企業経営者の場合、社員とは別のリスクがあります。

    例えば、

    ●海外旅行

    ●海外投資

    ●ゴルフ

    ●会食

    ●高級クラブ

    ●経済団体

    ●国際交流

    ●業界団体・大学・研究機関との交流など。

    そこで知り合った人物から、「社長なら、このくらいの情報は知っているでしょう」と言われる。

    このとき、「社長だから答えていい」ではありません。

    むしろ社長は、「会社を代表して情報を管理する最後の防波堤」と考えるべきです。
                        15.企業経営者向け「5原則」

    【原則1】社員個人の善意だけに情報管理を依存しない

    【原則2】贈答・会食・接待について明確なルールを作る

    【原則3】外国政府関係者・外国企業・外国人研究者等との接触を一律に禁止するのではなく、透明性を確保する

    【原則4】「おかしい」と感じた段階で報告できる文化・仕組みを作る

    【原則5】重要情報へのアクセス権を必要最小限にする

    プロフィール

    松丸俊彦
    元警視庁公安部外事捜査官。国内外の防諜・情報収集・テロ対策に従事。
    退官後は防犯コンサルタントとして企業・官公庁・自治体・学校向け講演を展開。
    NHK・プレジデント・日経などメディア出演多数。
    現在はドラマ『VIVANT』シーズン2の公安・警察監修を務めている。
    モットー:「防犯は観察の芸術である」

    普段はセキュリティコンサルタントとして、コンサルティング、企業顧問、講演、研修、訓練、執筆、ドラマ監修、日本在外企業協会や海外建設協会のアドバイザー、防災士としても支援を行うなど国内外で活動しています。

    こうした経験をもとに、身近な防犯について具体例を用いて解説します。

    講演や研修はご要望の項目や時間に従って構成します。質疑応答や実演などのご要望にも対応させていただきます。公安的視点と外事警察の手法なども用いて解説します。

    松丸俊彦への講演、研修、コンサルティングのご依頼を心よりお待ちしております。お気軽に info@nonmadofactory.com  までお問い合わせください。

    また、詳細は当社ホームページでもご覧いただけます。
    ホームページからのお問い合わせもぜひご活用ください。
    ▶️ お問い合わせフォームはこちらhttps://nonmadofactory.net/

    松丸俊彦の記事は、noteのプロフィールページにも掲載してあります。https://note.com/dreamy_fowl9992/n/n6d7f434e30bb

    著書には『ハニートラップにかかった男たち』
    https://amzn.to/4wigAgT
    ・楽天ブックス
    https://books.rakuten.co.jp/rb/18675211/

    『元公安、テロ&スパイ対策のプロが教える! 最新リスク管理マニュアル 激増する国際型犯罪から身を守るために』

    https://amzn.asia/d/7XEwE4C

    『強盗から詐欺まで シニアのための防犯対策読本』があります。https://www.amazon.co.jp/dp/4834779629/


    メディアではNHK「クローズアップ現代」など、主要ニュース番組にコメンテーターとして出演。

    https://www.facebook.com/watch/?v=1395006747842966

    最後までお読みいただきありがとうございます。

    #防犯 #口座悪用 #SNS詐欺 #マネーロンダリング #巻き込まれ型犯罪 #松丸俊彦 #防犯コンサルタント #公安 #詐欺対策 #リスク管理 #在宅勤務 #リモートワーク防犯 #エンジニア防犯 #サイバー攻撃 #情報漏洩 #AI詐欺 #ITセキュリティ #社会安全 #銀座事件 #貸金庫 #窃盗事件 #侵入対策 #犯罪者の視点 #狙いにくい環境 #下見対策 #重層的な防犯 #防犯対策 #警視庁 #日本在外企業協会 #日外協 #海外建設協会 #領事 #経済安全保障 #リスク管理 #企業防衛 #情報管理 #産業スパイ #危機管理 #講演 #東京大学


    あなたへのおすすめ