
【コラム】彼岸と父のこと 季節が心を整える
毎月1日と15日、名古屋・大阪で薬膳資格を学ぶ方々に向けて、一般社団法人「紡ぐしあわせ薬膳協会」のホームページに薬膳コラムを綴っています。
2026年3月1日に、コラム「彼岸と父のこと 季節が心を整える」を更新しました。
ここに転記しましたので、ご覧いただければ嬉しいです。
「暑さ寒さは彼岸まで」とは、よく言ったもので、春の彼岸が近づくと、冷たい空気が少しやわらいでくるように感じます。
春は「肝」が動き出す季節とされています。
肝は気の巡りや感情の流れをつかさどるところです。
理由のない不安や涙もろさ、胸のつかえなどが春先にふっと表に出てくることがあります。
それらは、季節が身体を動かし始めたサインでもあるのでしょう。
父が亡くなってから、私はこの感覚を以前よりも敏感に感じるようになりました。
日常は淡々と続いていますが、心の奥にぽつんと空いた場所は、まだ形を定めないまま、そこにあります。
けれど、春の気配に触れることで、その空洞に少しだけ風が通ればいいなとも思っています。
さて、春は、冬にため込んだ老廃物を排出する、解毒作用のある旬の食材を摂るとよいとされています。
アスパラガス、こごみ、せり、ぜんまい、たらのめ、菜の花、ふき、ふきのとう、三つ葉などがその代表です。
肝を養うには以臓補臓(いぞうほぞう)といって臓を以って臓を補う、あん肝(きも)、レバーがおすすめです。
気の巡りを助けるものには、たまねぎ、にら、ピーマンなどの香りのある野菜や柑橘が挙げられます。
父の死を受け止めきれない日も、「食べることは生きること。」と心に刻み、台所で食事の支度を続けていました。
彼岸は、此岸(こちら側)と彼岸(あちら側)が最も近づくとされる時期です。
亡くなった人を思い出すためだけの行事ではなく、今を生きる私たちが、心と身体を整えるための時間なのだと、今年はしみじみ感じています。
父が遺してくれたものは、私の性格や生き方を形づくり、今の私そのものになっているのかもしれません。
季節が巡るたび、父の気配は少しずつ形を変えながら、私の中にあり続けていくのでしょう。
春の光が強くなってきました。
そろそろ、一度お墓参りに行きたいと思います。