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肉まんが好き

    肉まんは完全食

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    肉まんが好きだ。

    どれくらい好きかというと、朝ごはんに肉まんを食べるくらい好きだ。

    朝の肉まんはいい。

    冷凍しておけば、いつでも食べられる。
    レンジで1分20秒。

    それだけで、あの白くて丸い幸福が完成する。

    もはや完全食である。

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    外側の生地はモチモチ。
    湯気の立つ白い皮を割ると、中から肉まん宇宙が現れる。

    ひき肉。
    たけのこ。
    タマネギ。
    椎茸。

    この布陣がすごい。

    ひき肉は主役として堂々としている。
    たけのこは食感担当としてシャキッと立っている。
    タマネギは甘みで全体をまとめる。
    椎茸は奥から静かに旨味を支える。

    誰も出しゃばりすぎない。
    しかし、誰も欠けてはいけない。

    まるで小さなオーケストラである。

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    しかも、味付けがいい。

    濃すぎない。
    薄すぎない。
    朝でも食べられる。
    でもちゃんと満足感がある。

    朝から米を炊くほどではない。
    パンでは少し軽い。
    でも何か温かくて、ちゃんと腹にたまるものが食べたい。

    そんな朝に、肉まんはちょうどいい。

    温かい。
    うまい。
    早い。
    手も汚れない。
    包容力がある。

    朝の自分を救う、白い救命ボートである。

    しかし、肉まんは季節労働者である

    ところが問題がある。

    今の時期、肉まんがあまり売っていない。

    冬場ならどこにでもある。
    コンビニにもある。
    スーパーにもある。
    中華まんコーナーがこちらを向いて微笑んでいる。

    しかし季節が変わると、肉まんは急に姿を消す。

    まるで冬だけ働く非常勤講師のように、春夏になると静かに退場してしまう。

    こちらは一年中食べたいのに、肉まん側が勝手に冬の風物詩みたいな顔をしている。

    違う。

    肉まんは冬だけのものではない。
    朝の生活インフラである。

    スーパーで、ついに見つけた

    そんな中、近くのスーパーで肉まんを見つけた。

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    「おお、あった!」

    私は心の中で小さくガッツポーズをした。

    冷凍食品売り場の一角。
    そこに、肉まんがいた。

    久しぶりに会う友人のようだった。
    旅先で偶然、昔の同級生に会ったような気持ちだった。

    だが、よく見ると様子がおかしい。

    肉まん単体ではない。

    あんまんとセットになっている。

    しかも、半々である。

    肉まんとあんまんが、同じ数だけ入っている。

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    私は固まった。

    これはどういうことだ。

    なぜ肉まんを買いに来た人間が、同じ数のあんまんを背負わなければならないのか。

    なぜ主食を求めた者に、デザートが半分ついてくるのか。

    このセットを考えた人は、本当に朝に肉まんを食べたことがあるのだろうか。

    あんまんが嫌いなわけではない

    ここで誤解しないでほしい。

    私は、あんまんが嫌いなのではない。

    あんまんはおいしい。
    甘くて、温かくて、ほっとする。
    寒い日に食べるあんまんは、たしかに幸せである。

    お茶と一緒に食べれば最高だ。
    小腹が空いた午後にもいい。
    疲れた日の甘いものとしても優秀である。

    あんまんには、あんまんの美点がある。

    だが、あんまんはおやつである。

    主食ではない。

    ここが重要だ。

    肉まんは朝食になれる。
    軽食にもなれる。
    場合によっては昼食の補佐にもなれる。

    しかし、あんまんはおやつである。

    「ああ、ちょっと甘いものでも食べようか」という時の存在である。
    朝のエネルギー補給として、主食席に堂々と座るタイプではない。

    肉まんは食事部、あんまんは甘味部

    ピザまんなら、まだ分かる。

    カレーまんでも、まだ許せる。

    どちらも方向性としては食事側にいる。
    味のジャンルは違っても、同じ会議室には入れる。

    肉まん、ピザまん、カレーまん。
    この三者は分かる。

    中身の方向性は違えど、全員が「食事部」に所属している。

    しかし、あんまんは違う。

    あんまんは完全に別部署である。

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    肉まん、ピザまん、カレーまんが食事部で会議しているとする。

    「朝食需要についてどう考えるか」
    「冷凍保存後の再加熱品質をどう維持するか」
    「レンジ1分20秒市場にどう切り込むか」

    そんな真面目な議題を話している。

    そこに、あんまんが来る。

    あんまんは悪くない。
    笑顔もいい。
    人柄もいい。

    でも、手にはお茶を持っている。
    明らかに午後三時の顔をしている。

    部署が違うのだ。

    同じ中華まんという社屋にいるだけで、担当業務が違う。

    それなのに、なぜ同じセットにするのか。

    しかも半々。

    これが許せない。

    半分デザート問題

    「おやつもどうぞ」という気持ちなら、一つでいい。

    肉まん三つ、あんまん一つ。
    それなら分かる。

    「あ、サービスで甘いのも入れてくれたんだな」と思える。

    しかし半分は違う。

    四個入りなら、肉まん二個、あんまん二個。
    六個入りなら、肉まん三個、あんまん三個。

    主食の半分がデザートになっている。

    これはおかしい。

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    弁当で言えば、白米の半分がプリンになっているようなものだ。

    カレーライスを買ったら、皿の半分がショートケーキだったようなものだ。

    定食を頼んだら、味噌汁の代わりにぜんざいが出てきたようなものだ。

    違う。

    そうじゃない。

    私は肉まんを食べたいのである。

    あんまんを否定しているのではない。
    あんまんの存在価値を疑っているのでもない。
    あんまんにはあんまんの人生がある。

    ただ、肉まんの隣に半分の割合で座らないでほしい。

    そこは肉まんの席なのだ。

    一つなら許す。

    「まあ、たまには甘いのもいいか」と思える。

    しかし半分はダメだ。

    主食陣営を甘味陣営が侵食しすぎている。

    この比率は、食卓の秩序を乱す。

    買わなかった理由

    結局、私はその肉まんあんまんセットを買わなかった。

    悩んだ。

    かなり悩んだ。

    肉まんには未練があった。

    売り場の前で、しばらく考えた。

    肉まんだけなら即決だった。
    何なら二袋買っていたかもしれない。

    しかし、その袋にはあんまんがいた。

    半分もいた。

    私は未来を想像した。

    冷凍庫を開ける。
    肉まんを食べようとする。
    しかし、もう肉まんはない。

    そこには、あんまんだけが残っている。

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    あんまんたちは悪くない顔でこちらを見る。

    「食べる?」
    「甘いよ?」
    「温かいよ?」

    違う。

    今じゃない。

    私は朝の主食を探しているのだ。

    あんまんは優しい。
    だが、優しさだけでは朝食になれない日がある。

    その未来に耐えられなかった。

    私は静かに売り場を離れた。

    ピザトーストという妥協

    そして代わりに、ピザトーストを買って帰った。

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    ピザトーストは分かっている。

    パンでありながら、ちゃんと食事側にいる。

    チーズ。
    トマト。
    具材。
    少しジャンキーだが、朝食としての立場をわきまえている。

    ピザトーストは、朝に出てきても違和感がない。

    「おはようございます。今日は私が担当します」

    そう言って、きちんと食卓に座れるタイプである。

    しかし、心のどこかにはまだ肉まんがいた。

    レンジで1分20秒の、あの完全食。

    白くて丸い、朝の救命ボート。

    私は今日も思う。

    肉まんだけを売ってくれ。

    肉まんだけを売ってくれ

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    あんまんは悪くない。

    これは本当にそうだ。

    あんまんはおいしい。
    あんまんには罪がない。
    午後三時に出てきたら、私は喜んで食べる。

    問題は、組み合わせである。
    そして比率である。

    肉まんとあんまんは仲間ではある。
    しかし、同じ朝食ローテーションに半々で入れていい関係ではない。

    そこには越えてはいけない一線がある。

    肉まんは主食。
    あんまんはおやつ。

    この世界の秩序を、私は守りたい。

    だから私は、スーパーの中華まん売り場に願う。

    肉まんだけを売ってくれ。

    ピザまんやカレーまんとのセットなら、まだ話し合える。
    あんまんを一つ添えるくらいなら、こちらも大人として受け入れる。

    だが、半分はダメだ。

    主食の半分をデザートにしてはいけない。

    それは朝食への裏切りである。

    そして今日も私は、冷凍庫に空いた肉まんスペースを見つめながら思う。

    レンジで1分20秒。

    あの白い幸福が、また我が家に戻ってくる日を。

     
     
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