
東京の地下はカレーの匂いがする
先日、親戚の結婚式へ参列しに家族で東京に行く機会がありました。
家族で新幹線に乗ったのはいつぶりでしょうか。もう私が小学生になる前とかその辺りかも知れません。
正午過ぎに東京駅を降りて、丸の内南口から外へ出ます。目の前に広がるのは一面の緑では無く、首が痛くなる程見上げる高層ビルの群れ。気温の暑さもさることながら、人の往来の多さに相変わらず私は目が回ります。遠くに視線を向ければ、走る車も全く違います。いきなり現れたのはランボルギーニ、ポルシェ、高級外車ばかりです。行き交うバスも、岩手で見るようなくたびれた車体では無く、未来から来たような見た目の車両ばかりです。
訪れる度に、東京は私たちが普段住んでいるような、人よりも動物の往来の方が多いような場所とは別世界だと思わされるのです。
反面、東京という大都市に対してライバル意識も密かにあります。
仲の良かった友人や知人の数名は、学校卒業と同時に上京し向こうで生活を確立させています。地元の学校の校外学習では"私たちの故郷は素晴らしい"と教育されていたにも関わらず、向こうに行ってしまいそれきり会えないこの寂しさ。まるで東京に思い出を取られてしまったような気分です。
東京よりも地元の方が"勝っている"部分、そんな漠然としたものを探すように辺りをキョロキョロと見回しながら、私は家族と共に東京駅前を闊歩します。
結婚式会場へは、在来線を乗り継ぎます。私たち田舎者は乗り換えなんて分かりません。幸いにも都会育ちの私のパートナーが結婚式に参列するので、まるでツアーのように家族全員で後ろに付いていきます。普段は小さいパートナーの背中がこの日ばかりはランドマークの如く大きいです。
東京駅から地下鉄に乗り継ぐようで、辺りを見回している内に、私たち家族は東京の地下へと入っていきます。エスカレーターや階段を何か所も下り、気が付けば外の空気も感じられない地下3~4階の辺りを家族全員パートナーに付いて歩きます。
昔プレイした、小人をゴールまで誘導するゲームを思い出しました。プレイヤーは階段を作ったり、道を作ったりして小人全員をゴールさせるとクリアという内容です。さながら私たちはあのゲームの小人のようです。
東京の地下道は、通気口と言えば良いのか、所々に風が吹き抜けるポイントがあります。外の空気を取り込んでいるのかは分かりませんが、不思議な事にどこのフロアを歩いても、カレーのような香辛料の香りがします。
岩手県には地下4階にも及ぶような建物は存在しませんから、日中の正午過ぎに外の空気を感じられない上に、どこを歩いても香辛料の香りがする建造物に不思議な感覚と息苦しさを覚えます。隣を歩く母親も、外の空気が吸いたいと息を切らしながらボヤきます。
私も少しの息苦しさを覚えながら、自分の地元でも地下4階にも及ぶ何かを作ったらそこにはカレーの匂いが充満するのかと考えていました。
東京に私たちの地元は何が勝っているのか、何に魅了され彼らは旅立ったのか、地下道を歩いても私には分かりません。ただ一つ言える事は、空気はこっちの方が良いって事だけで、そんな事も忘れ去られてしまう程に東京は人もコンテンツも溢れかえっています。或いは、もっと歳を取れば分かるのでしょうか。
そんな事を思う私の頭上を今頃ランボルギーニが快音を轟かせて走っているのでしょう。畜生。