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「モリオの0面」


     ファミコン時代の話。今の時代の子には分かりにくいかもしれないが、某配管工が活躍するアクションゲームは、「ファミリーコンピュータ」というゲーム機で発売されて、一世を風靡したんだ。当時は今より法律があやふやだったから、偽物ソフトも発売されていた。その名も「モリオ」といい、森を舞台にしたアクションゲームだった。某配管工的でありながら、ずっと難しく、キャラデザインも禍々しく、人気もなかった。メーカーは訴えられて倒産して、幻のソフトとなっている。検索しても出てこないだろう。

     裏技、隠しコマンド、というのが流行っていた時期でもあった。特殊な順番でキーやボタンを押すと、最初からキャラが最強だったり、ステージを飛ばせたりする。上上下下左右左右BAスタート、いわゆる「コナミコマンド」が有名だね。他にもいろいろあり、「モリオ」にもその機能は搭載されていた。それを使用すると、「0面」という特殊ステージで遊ぶことができたんだ。

     当時のアクションゲームは通常は、様々なブロックで起伏があったり、敵キャラが出てきて邪魔したり、といったものだった。某配管工ゲームのパクリであるモリオもそうなのだが、0面に限って敵は出てこない。ステージの舞台も森ですらない。黒い背景の平面ステージをただひたすら走るだけ。それでいてスコアは上がっていく。途中、ラスボスであるワニの王が後ろから追いかけてくる。しかしこちらが止まれば向こうも止まる。走り続けているうちにワニの王は消えてしまう。0面はただ延々と走り続けるだけのステージで、リセットボタンを押すか電源を切るまでは終わらない。敵と戦わないから死ねないんだ。そうして走り続けていると、ワニの王がまた現れる。今度は骨の姿になってね。でもモリオに追いつけずにフェイドアウトしていく。また何時間かすると、今度は小さなワニが現れる。また消える。少し成長したワニが現れる。また消える。またワニの王が追ってくる。代替わりしたんだね。でもまた骨になる。後はそれの繰り返し。

     老いとか死とか、そういう哲学的な意味も込められてたのかな。0面自体がテストモードでしかなくて、ワニの王が出てくる設定にはしてない、っていうホラーな都市伝説もあるみたい。そもそも通常ステージが難しすぎて、誰もラスボスであるワニの王にはたどり着けてないみたいなんだ。制作者も行方不明になったらしくて。ソフトの中に入り込んで、延々とワニの王を演じている、っていう噂もあった。

     という曰く付きのこのファミコンソフト「モリオ」買い取ってくれませんか? 一万円、いや千円でもいいです。今なら0面をプレイできるコマンドも特別にお教えします。百円でいいです。もうただであげます。早くもらってください。千円あげますから。一万円あげます。お願いしますワニの王が子どもになっている今のうちなら、ばれないかもしれないので。あいつらすぐに大きくなるんですよ。いつまでも追いかけてくる。こっちは若返ったり生まれ変わったりできないっていうのに。あいつらはいつまでもいつまでも。百万円あげるから。そんな金持ってないけど、今から作ってくるから。話聞いたんだろ。もう逃げられないんだよあんたも。

    ※お金はあげません

     
     
    ドロベ・ゴロウ。二児の父。脳脊髄液減少症。何かしら書いてます。旧名「名無しさ」「村野」「楢山孝介」「新都社モラトリアム新書」「山下チンイツ」など。「みんなのフォトギャラリー」で画像を使用していただいた記事にスキをつけることがあります。見知らぬ人からのスキだと怖がらないでください。

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