
「怪談ライター」(四百字のスケッチ)
怪談アンソロジーの一員として執筆していた頃、編纂者からは再三「個性的な文体で書かないように」と釘を刺された。どこの誰とも知れぬ人たちの、のっぺりとした文章の怪談集が何冊も出来上がっていった。読んでもどれが自分の書いたものか分からなくなることすらあった。
編纂者に訊ねたことがある。
「ニ十編収録予定だったのが、どうして二十一編になっていたんですか」
似たような事例は毎回あった。
「本物が勝手に紛れ込んでくるんだよ。入れないわけにはいかんしな」
霊的なものも怪談を執筆したくなるのだろう。やけに霊的な内情に詳しい感じの怪談が大抵そうらしい。
「怖いかというと、微妙だけどな」
続刊が出るたび、怪談のリアリティが増しているのはそういうわけだった。
「全部本物で埋めてはどうですか」
「やったよ。全然売れなかった」
本物が紛れやすいように没個性な文体を書くのがつらくてその仕事は止めた。今は「モテたことがない人によるモテ方指南アンソロジー」に参加している。