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「大丈夫」と言うたびに、少しずつ壊れていた

       〜 心が限界 〜


    「大丈夫です」

    気づけば、それが口癖になっていた。

    職場でも。
    友達にも。
    家族にも。

    本当は全然大丈夫じゃなかったのに、私はずっと笑っていた。

    夜の帰り道。
    車のエンジンをかける。

    静かな駐車場に、コンビニの明かりだけが浮かんでいた。

    誰もいない車の中で、やっと息ができる。

    仕事が嫌だったわけじゃない。

    むしろ、人の役に立てるこの仕事が好きだった。

    「ありがとう」

    その一言だけで救われる日もある。

    でも、いつからだろう。

    “誰かを支えること”ばかりに必死で、自分を支えることを忘れてしまった。

    職場では、常に周りを見て動く。

    空気を読む。
    気を遣う。
    迷惑をかけないようにする。

    利用者さんの表情。
    スタッフ同士の関係。
    その日の空気。

    いろんなことを考えながら動いているうちに、自分の気持ちはどんどん後回しになっていた。

    疲れていても、

    「まだ頑張れる」

    苦しくても、

    「もっと大変な人がいる」

    そうやって、自分に言い聞かせていた。

    でも、人って不思議だ。

    限界になると、“頑張れない自分”を責め始める。

    ある日の帰り道。

    赤信号で止まった時、ふと窓に映った自分の顔を見た。

    びっくりするくらい、疲れた顔をしていた。

    「あれ……こんな顔してたんだ」

    その瞬間、急に涙が出た。

    理由なんて分からなかった。

    ただ、ずっと張っていた糸が切れたみたいだった。

    泣きながら運転した。

    夜の道路は静かで、街灯だけが流れていく。

    いつも見ている景色なのに、その日はやけに遠く感じた。

    私はずっと、

    「ちゃんとしなきゃ」

    と思って生きてきた。

    ちゃんと働かなきゃ。
    ちゃんとしなきゃ。
    迷惑かけちゃダメ。
    期待に応えなきゃ。

    でも、本当は。

    誰かに、

    「もう頑張らなくていいよ」

    って言ってほしかったのかもしれない。

    その日から、少しずつ考え方が変わった。

    無理な日は、無理と言う。

    疲れたら休む。

    全部を完璧にやろうとしない。

    最初は怖かった。

    「頑張れない人」だと思われそうで。

    でも、不思議だった。

    少し肩の力を抜いただけで、景色が変わった。

    空の色とか。
    夜風の匂いとか。
    コンビニで買ったコーヒーの温かさとか。

    そんな小さなものを、ちゃんと感じられるようになった。

    昔の私は、

    “頑張ること”が正しいと思っていた。

    でも今は、

    “壊れる前に休むこと”も、生きるために必要なんだと思う。

    もし今、

    「大丈夫」

    って笑いながら無理をしている人がいるなら。

    どうか、自分のことを後回しにしないでほしい。

    あなたが思っている以上に、
    あなたは毎日、頑張っている。

    ちゃんと疲れていい。

    ちゃんと休んでいい。

    夜の帰り道。

    今日も街の灯りが流れていく。

    でも今は、少しだけ思う。

    「明日も、生きてみようかな」

    って。

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