
私はよく注文を忘れられる。
私はよく注文を忘れられる。
オーダーを店員さんが確認して厨房に消えた後、
店員さんが私にとってのみ帰らぬ人となるのだ。
なにより不思議なのが、
注文自体はしっかり通ったにも関わらず、だ。
あの「2人で注文を復唱した時間」はいったいなんだったのだろうか。
しかも厄介なのがこの「注文を忘れられる」という、
ハーマイオニー・グレンジャーでさえ脳の容量の無駄だと切り捨てるレベルの忘却術は、誰かとご飯を食べているときにも発動してしまうのだ。
その結果私だけが空腹と居心地の悪さで、弾んでいる会話から弾き出されてしまう。
では、実際にどのような場面で私が注文を忘れられてきたのかを見ていこう。
まず1件目は、もつ鍋屋におけるご飯のおかわりの忘れられだ。
もつがたっぷり入っているもつ鍋に加えて、
明太子と高菜が食べ放題のお店、これはおかわりするしかないだろう。
私はもつ鍋の3分の1と明太子で1杯目のご飯を食べ終え、
店員さんにお茶碗を渡しておかわりを頼んだ。
だが、その後15分くらい待っても、
お茶碗が私の手元に戻ってくることはなかった。
確かに口頭で注文しただけなのでたまたま店員さんの頭から抜け落ちてしまうのは分かるが、
じゃあその手に持っているお茶碗はなんだ。
厨房に入った瞬間にお茶碗が砂となって消えたぐらいしか忘れる理由は考えられないので、自分の持つ能力の恐ろしさを改めて実感した出来事であった。
このもつ鍋屋のパターンと同様に、
土鍋で米を炊いているタイプのハンバーグ屋さんでおかわりを忘れられたこともあるが、今回は割愛する。
そこまで米にこだわりを持っているなら一時たりとも忘れるなよとは思うが。
次のパターンは、イタリアンのお店におけるフライドポテトの忘れられだ。
イタリアンのフライドポテトなのでいわゆる前菜のポジションだ。
だが、メインディッシュが先に来た。なんなら食べ終わった。
その後5分たっても来なかったので、
店員さんが近くにいるときに同行者と
「あれ、ポテト頼んだよね?」
みたいなことを店員さんにも聞こえる大きさで話していたら慌てて持ってきてくれた。
そのため、メインを食べ終えて結構お腹いっぱいの状態で、
マクドナルドの女子高生がドン引きするぐらいのスローペースでポテトに手を伸ばし完食する羽目になった。
そしてこのとき以上に気まずかったのが、
カウンターしかない町中華におけるチャーハンの忘れられだ。
このタイプのお店で注文を忘れられたのは私が初めてではないだろうか。
しかもチャーハンを。
餃子とチャーハンを頼み、餃子を食べ終えたタイミングで、
ザ・町中華のような男の料理人さんに
「もしかして……まだ来てないものありますか?」と恐る恐る聞かれた。
ザ・町中華が恐る恐るしてたら世界観が壊れるだろぉ。
珍しい瞬間に立ち会ってしまった。
そして極めつけが、ガストでの忘れられである。
タッチパネルで注文したためしっかり注文履歴も残っている。
それにもかかわらず、待てど暮らせど私の料理だけガストの猫は運んでこない。
ドリンクバーに行くときにすれ違ったので
「もしかして料理忘れてる?」とボソっと話しかけてみたが、
あの猫は定型文しか返してこなかった。
そして例に漏れず周りが食べ終わった頃に店員さんに確認してみた結果、
やっぱり忘れられていた。
以上が私の注文忘れられ史におけるハイライトである。
とはいえ、
「注文を忘れられてそうだったらもっと早く店員さんに確認したらええやん」
と思う人も多いだろう。
残念ながら、
私の「店員さんと話す体力」は最初の1回で全て使われてしまっている。
忘れられたら来なくても帰ろうホトトギス
この忌々しい能力から解放されることを願うばかりである。