コンカフェ依存症#34 最終話〜日常へ帰る朝〜
帰り道。
一年前、この街へ初めて来た日のことを思い出していた。
何も分からず、不安ばかりだったあの日。
気づけば、この街にはたくさんの思い出ができていた。
最後は、あれでよかったんだろうか。
でも、たぶん伝えるならあのタイミングしかなかった。
言わずに帰っていたら、きっと後悔していたと思う。
だから、あれが自分なりの答えだった。
相手がどう受け取ったのかは分からない。
それでも、自分が後悔しないための選択だったのだと、そう思うことにした。
次の日。
まだ余韻が残っていた。
静かな部屋で、昨日の出来事を思い返していた。
夜になると、しおりちゃんから最後のお礼DMが届いた。
開くのが少し怖かった。
告白について何か書かれているんだろうか。
DMを開く。
そこには、これまでで一番長い文章が綴られていた。
一緒に過ごした思い出を、覚えている限り書いてくれていた。
その中でも、一番心に残ったのはこの言葉だった。
「最後に言いたかったことを伝えてくれてありがとう。
最後までいい人で居てくれてありがとう。」
その一文を読んで、すべて終わったんだと実感した。
この先はない。
もう会うこともない。
それが当たり前だ。
相手はコンカフェ嬢で、自分はただの客。
最初から分かっていたことだった。
それでも、少しだけ考えてしまう。
想いを伝えた時点で、自分は最後までいい人ではいられなかったんじゃないか。
これからも応援してるとだけ伝えて別れられたら、もっと綺麗に終われたのに。
どこまでが仕事で、どこまでが本心だったのか。
どれだけ仲良くなれたんだろう。
考えても答えは出ない。
もしこれがフィクションなら。
卒業したあともどこかで再会して、ご飯に行って、また笑って話す未来があったのかもしれない。
でも、これは現実だ。
奇跡なんて、そう簡単には起きない。
そして、コンカフェへ行く前の日常が戻ってきた。
営業DMが届くこともない。
インスタの通知に期待することもない。
仕事をして、家へ帰って、ゲームをして、画面越しにアイドルを見る。
何も変わらない毎日。
だけど、どこか物足りない。
ぽっかり空いた穴を、これから何で埋めていけばいいんだろう。
きっとまたコンカフェへ行けば、楽しい時間は過ごせる。
でも、それは一時的なものだ。
だから、もう行かないという選択は間違っていなかったと思う。
それでも。
はるかちゃん。
なちちゃん。
しおりちゃん。
三人と過ごした時間は、これからも消えることはない。
きっとふとした瞬間に思い出して、少し寂しくなる日もあるだろう。
それでも、あの一年を後悔だけの思い出にはしたくない。
あのときの自分が選んだことを否定せずにいられるように。
何も変わらない日常へ戻りながら、あの一年を抱えて生きていこうと思う。