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孊校、捚おたもんじゃない 〜孊びの倚様化孊校䞍登校特䟋校で芋た小さな奇跡〜


    プロロヌグ孊校っおオワコンですか

    「孊校なんお、マゞで行かなくおいいよ」

    最近、SNSのタむムラむンをスクロヌルしおいるず、そんな蚀葉が毎日のように目に飛び蟌んでくる。
    䞍登校を経隓したむンフル゚ンサヌが明るく楜しそうな動画をあげおいるず、心から「ほんずによかった」ず蚀いたくなる。垌望だ。

    䜕を隠そう、私は長い間、「保健宀の先生逊護教諭」ずしお孊校ずいう修矅堎  あ、いや、珟堎で働いおきた人間だ。

    公立の小孊校、私立の小・䞭・高、そしお䞍登校を経隓した子どもたちが集たる「孊びの倚様化孊校䞍登校特䟋校」以䞋、特䟋校

    孊校ずいう堎所を離れたあずも、粟神科の蚪問看護や高霢者支揎の珟堎で、ずっず「人をケアする」ずいう、正解の出ない仕事に身を眮いおきた。

    だからこそ、誰よりも知っおいる぀もりだ。
    孊校ずいうシステムが、時にどれほど残酷かずいうこずを。

    毎朝、呜を削るような思いで校門をくぐり、保健宀のベッドに逃げ蟌んできおは、声もなく泣いおいた子どもたちの震える背䞭を、私は知っおいる。

    だから、「孊校なんお行かなくおいい」ずいう蚀葉に救われる芪子がいるこずは、玛れもない事実だし、その蚀葉は䞀぀の匷烈な「救い」のシェルタヌだ。私だっお、子どもや芪にそう蚀っお、避難させおきたこずも少なくない。

    けれどね 

    同時に、私の胞の奥には、ずヌっず蚀葉にできない、モダモダずした「違和感」が居座り続けおいる。

    「孊校なんお無理しお行かなくおいい」が正矩になりすぎお、たるで「孊校諞悪の根源」みたいな極端な空気になっおいない

    孊校ずいう堎所を、たるごず「オワコン」認定するのは、ちょっず気が早すぎやしない

    同じ幎霢ずいうだけで、たたたた同じ地域に生たれたずいうだけで、地匕き網でガバッず䞀網打尜に集められた子どもたち。それもなんか乱暎な気もするけどね

    圌らがぶ぀かり合い、すれ違い、傷぀き、それでも誰かず目が合っお爆笑し、倧勢の䞭で「自分の座る怅子」を䞍噚甚に探しながら、小さな小さな瀟䌚を䜜っおいく。

    こんな、コスパもタむパも最悪で、だけど゚ネルギヌに満ちあふれた劇堎みたいな堎所っお、他にどっかある今の日本で。
    しかも、この囜ではそれが矩務教育のうちは基本的に「無料」で、誰にでも平等に開かれおいるのだ。

    私は特䟋校ずいう、ちょっず特殊な孊校で、数え切れないほどの「小さな奇跡」を目撃しおきた。

    だから 

    「孊校ずいう堎を、このたた捚おちゃうのは、あたりにもったいなさすぎるんじゃない」

    そんな私の心の叫びを、芪しい友人に話すような、ちょっずポップでくだけたリズムで、だけど本気で、曞き残しおおこうず思う。

    第䞀章「孊校は悪」ずいう極端なトレンドの裏偎で


    圌女ず初めお、特䟋校の狭い廊䞋ですれ違った日のこずを、私は今でも鮮明に芚えおいる。

    圌女の党身からは、「声かけんなよ。こっち芋んなよ。近づいたら刺す」ず蚀わんばかりの、ビンビンに尖った譊戒心が溢れ出おいた。

    自衛のためだろう、長く䌞ばした前髪で深く顔を芆い、マスクをこれでもかず深く匕き䞊げ、誰ずも目を合わせようずしなかった。

    数か月経ったある日の䌑み時間、圌女は珍しくプレむルヌムの片隅にぜ぀んず䜇んでいた。

    そこでは、い぀ものように、やんちゃな生埒たちが倧汗をかきながら、ワヌワヌず楜しそうにドッゞボヌルに興じおいた。

    圌女は、その熱気あふれる光景を、長い前髪の隙間から、じヌヌっず芋぀めおいた。

    その時、保健宀はたたたた誰もいなくお暇だったので、私は圌女の数歩隣にスッず立ち、同じようにドッゞボヌルの軌道を黙っお眺めた。

    数分間の、心地よい沈黙。
    圌女がぜ぀りず、小さな小さな声で呟いた。

    「  楜しそうだね」

    小さな呟きだった。

    でも、それは圌女が初めお発した、䞭孊生らしい、生身の感情が乗った蚀葉だった。
    マスクの奥から響いたのは、ちょっずおしゃれなハスキヌボむス。
    私は心の䞭で小さくガッツポヌズをした。

    次の日から、圌女の「心の氷解」は、静かに、だけど確実に始たった。

    ある日から、前髪を小さなヘアピンで、ちょこんず留めるようになった。
    マスクが少し䞋がっお、切れ長の綺麗な目が芋えるようになった。

    秋も深たった頃、䌑み時間のプレむルヌムの颚景は少し倉わっおいた。

    隅にぜ぀んず䜇んでいた圌女はもういない。
    そこには、みんなず汗だくで笑顔で走り回る圌女が居た。

     こんな「小さな奇跡」が、この孊校には日垞のあちこちに転がっおいたんだ。

    極端な「孊校オワコン説」を少し棚に䞊げずいお、ちょっずリアルな珟堎の雰囲気を感じおみおほしい。

    ある䞭孊2幎の男の子の話をしよう。

    圌は小孊校の高孊幎から完党な䞍登校。
    コロナ犍の長期䌑校が重なったり、お母さんが䜓調を厩しおしたったりず、いく぀かの䞍運がドミノ倒しのように重なっお、すっかり孊校から足が遠のいおいた。

    特䟋校に入孊しおからも、しばらくは家から出られず、幜霊郚員ならぬ幜霊生埒状態が続いおいた。

    そんな圌が、ある日突然、なんの予告もなしに孊校に珟れたのだ。
    しかも、その日はよりによっお「運動䌚」の圓日。

    おいおい、チャレンゞャヌすぎるだろ。

    いきなりの参加は無理。ずいうこずで、圌は私ず䞀緒に、数名の“芋孊組”ずしお、教宀の窓から運動䌚を眺めるこずになった。

    私はその日、圌ず初めお察面した。

    「はじめたしお。 ずころでさ、なんで今日来たの」

    私はわざず、コンビニの店員さんに「今日、倩気いいですね」ず話しかけるくらいのあっけらかんずしたトヌンで聞いた。

    䞍登校の子どもたちっお、倧人の「心配そうな顔」や「気を遣っおる空気」に察しお、超高性胜のセンサヌを持っおいる。

    こちらが「倧䞈倫  無理しないでね 」ずやるず、かえっお「あ、自分は特別に心配されなきゃいけないダメな存圚なんだ」ず心を閉ざしおしたうこずがあるからだ。

    私の雑な質問に察しお、圌は少しはにかみながら、こう蚀った。

    「いやぁ〜、ゲヌム、飜きちゃっおさ」

    え
    なにそれ 。

    「俺、小孊校の時、䞭孊受隓の勉匷しろっお芪が厳しくおさ、党然ゲヌムさせおもらえなかったんだよね。だから䞍登校になっお、よっしゃず思っお、思いっきりやりたくったの。最初は最高だったんだけど、党クリしお、やりたいや぀党郚やり尜くしちゃっお。もう、やるこずなくなっちゃったんだよね」

    たじか 

    私はその蚀葉を聞いた瞬間、爆笑するず同時に、「あ、この子はもう倧䞈倫だ」ず確信した。

    「そりゃそうだわ リアルのクラスっおマゞで面癜いよ。バグった倉な奎いっぱいいるからさ」

    私がそう蚀うず、圌は「確かに」ず蚀っお倧笑いした。

    その翌日から、圌は嘘みたいに、ほが毎日䌑たず登校するようになった。
    䌑み時間になれば、汗びっしょりになっお鬌ごっこをしおいる。

    圌の姿を芋ながら、私は぀くづく思った。

    ずきに、倧人は、䞍登校の子どもたちに「取扱泚意」マヌクを぀けすぎおんじゃないかな

    もちろん、倜も眠れないほどの深い苊しみやトラりマを抱えおいる子もいる。そこは慎重か぀䞁寧なケアが必芁だ。

    だけど同時に、子どもの心の動きっお、倧人が思うよりも、もっずシンプルで、もっずしなやかだ。

    「なんか暇だな」
    「面癜そうだな」
    「行ったら楜しいかも」

    そんな、ちょっずした奜奇心のスパヌクで、止たっおいた時蚈の針が突然動き出すこずだっおある。

    そしお、その針を動かすために絶察に必芁なのが、
    久しぶりにひょっこり登校した子が、眪悪感を感じずにすっず入れる「空気」なのだ。

    空気、ずいうや぀は目に芋えない。
    でも、私たちはそれを皮膚感芚で、確かに感じ取っおいる。

    ピリピリず匵り詰めた、監芖するような空気。
    「なんで」ず詮玢するような空気。
    「うわぁ 来おくれたんだね」ず、たるで絶滅危惧皮を発芋したかのように過剰に歓迎する、ありがた迷惑な空気。

    特䟋校にあったのは、そのどれでもない。

    「あ、来たの おはよ」で終わる、圧倒的な【平垞】の空気だった。

    誰も口に出さないけど、「今日、この子がここにいおくれお嬉しいな」ずいうじんわりずした喜びが、先生たちの䜇たいからマむナスむオンのように滲み出おいた。
    その「平垞」ずいう名の安心感が、孊校党䜓を優しく包み蟌んでいたのだ。

    特䟋校は、民間のフリヌスクヌルや、いわゆる「居堎所」ずは少し違う。
    少人数制で、時間割も柔軟にカスタマむズされおいるけれど、「公立の䞭孊校」だ。
    定期テストもあるし、運動䌚や修孊旅行ずいった孊校行事もある。圓然、内申点も぀く。

    芋孊䌚に来た子が「うわっ、普通の孊校っぜくお嫌だ」ず、キャッチ―な拒吊反応を瀺す子がいるくらいの、「孊校」のフォヌマットは保っおいる。

    ただ、決定的に「普通の孊校」ず違っおいたのは、最初から「みんなず同じレヌルを、同じスピヌドで走るこず」を誰䞀人ずしお匷芁しない、ずいうこずだった。

    教宀が苊しければ、保健宀でサボっおあ、䌑んでいい。
    自習宀で䞀人で勉匷しおもいい。
    䞀日䞭、䞀人で読曞をしお過ごす日があっおもいい 

    だけどそこには、確かに「クラス」があり、「仲間」がいお、「めんどくさい授業や行事」があり、倚様な他者ずの関わりが、セッティングされおいた。

    第二章特䟋校の職員宀の密かな実隓


    私が勀めおいた特䟋校の職員宀は、毎朝時から、ちょっず異様な熱気に包たれる。

    普通の孊校の職員宀の朝瀌なんお、たいおい10分か15分で「今日の連絡事項は〜」ず事務的に終わる。

    しかし、ここでは違った。

    生埒たちが登校しおくる時たでの䞞々䞀時間、先生党員が生埒䞀人ひずりの「昚日のディテヌル」を培底的にシェアするのだ。

    「A君、昚日の数孊の時間、ちょっず眉間にシワが寄っおたした。䜕かあったかな」
    「Bちゃん、䌑み時間に珍しくC子ずアニメの話で盛り䞊がっおお、笑っおたしたよ」
    「D男、最近たた昌倜逆転が始たっおるみたいで、お母さんがお疲れ気味です」

    授業䞭の様子、友達ずの距離感、家庭での小さな倉化、前日に亀わした䜕気ない雑談の内容たで、情報が共有されおいく。

    長い逊護教諭生掻の䞭で、こんなに密床の濃い朝瀌は初めおの経隓だった。

    でも、この特䟋校では、この䞀時間が呜綱。

    なぜなら、ここに通う子どもたちの心のメヌタヌは、毎日、いや毎時間ごずに、激しく乱高䞋するからだ。
    先生によっお察応がバラバラになっおしたったら、䞍信感の塊である子どもたちは、すぐに䞍穏な空気を察知しお逃げ出しおしたう。

    「この子にずっお、今日ずいう日をどう過ごすのがベストか」

    職員宀の倧人たちは毎朝、本気で、ちょっず泥臭いくらいにそれを考えおいた。

    そこには、刻々ず倉化する、目の前の生身の人間ず向き合うために、自分たちの今たでの教育芳を解䜓し、新しいものを目指し続けるクリ゚むタヌ集団がいた。

    ある日の朝の打ち合わせで、ある議論が巻き起こった。

    「䌑み時間になるず、教宀の自分の垭から䞀歩も動かず、う぀むいたたた固たっおいる生埒が数人いる。どうにかアプロヌチできないか」

    ある熱血掟の先生が蚀った。
    「せっかく孊校に来られおいるんだから、みんなの茪に混ざる経隓をさせた方がいいんじゃないでしょうか。䞍登校だった子たちだからこそ、人ず遊ぶ楜しさを取り戻しおほしい」

    その蚀葉を聞いた瞬間、私の逊護教諭ずしおのレヌダヌが「ビビビッ」ず危険信号を発した。私はすかさず手を挙げた。
    「先生、それはちょっず酷です。圌らにずっお、登校しお教宀の怅子に座っおいるだけでも、フルマラ゜ンを走っおいるくらいの疲劎ず緊匵状態なんですよ 䌑み時間たで『みんなず䞀緒に』ず远い詰めたら、身䜓も心もパンクしおしたう。䞀人で静かに本を読んだり、自分の気持ちをリセットしたりする時間は必芁だず思いたす」

    するず、別の先生がうヌん、ず腕を組んで蚀った。

    「竹田先生の蚀うこずもわかる。でもさ、じゃあ、ずっず䞀人で過ごすこずに慣れきっちゃったら、その子は『みんなでワむワむやる楜しさ』の味を知らないたた卒業しちゃうこずにならないかな それもたた、もったいない気がするんだよね」

    どっちの蚀い分も、ぐうの音も出ないほど正しい。

    安心は絶察に必芁だ。

    だけど、䞀人だけの安党地垯にずっずこもっおいるだけでは、なんかもったいない気がするのもわかる。

    職員宀で頭を突き合わせおあヌだこヌだず話し合った結果、私たちは䞀぀の「実隓的な折衷案」を思い぀いた。

    『みんながガダガダ遊んでいるプレむルヌムの䞭に、あえお、䞀人でいられる堎所を䜜ろう』

    遊んでいる奎らの゚ネルギヌは感じられるけれど、自分は匷制参加しなくおいい。そんな空間を䜜っおみよう、ずいうこずになった。

    その堎所を、生埒たちは「ホットスペヌスホッずできる堎所」ず名付けた。

    プレむルヌムの片隅に、ふかふかの゜ファず、いく぀かのボヌドゲヌム、そしお本棚を眮いただけのささやかなスペヌスだ。


    䜜戊は、芋事に成功した。

    䌑み時間になるず、ホットスペヌスには䞍思議なグラデヌションの人間暡様が描かれた。

    ゜ファに深く腰掛けおむダホンをしお読曞をする子。
    自分は喋らないけれど、楜しそうに話す友達の声を、BGM代わりに聞いおいる子。
    みんながじゃれ合っお隒いでいる様子を、たるでサファリパヌクの猛獣を芋るように眺めおいる子。

    そこには、「ほら、みんなず遊んで」ず急かすりザい先生はいない。

    ただ、同じ空間にいるこず。
    それだけがルヌルだった。

    それから数週間が経った、ある日の䌑み時間。

    私は廊䞋を歩きながら、ふずプレむルヌムを芗いた。

    あれっ

    か぀おホットスペヌスの゜ファで、䞀人で膝を抱えおいた子が、倧爆笑しながらトランプの『倧富豪』をやっおいる。

    そのすぐ暪では、ドッゞボヌルを終えお汗だくになった子が、゜ファにドサッず倒れ蟌んでカルタを読んでいる。

    気づけば、私たちが倧真面目に議論しお䜜ったはずの“安心するための特別な聖域”は、䜕の埌付けのルヌルもなく、自然に、普通に、孊校党䜓の混沌ずした空気に溶け蟌んで消滅しおいた 。

    倧人たちが硬い頭で必死に考えた䜜戊を、子どもたちはその爆発的な゚ネルギヌで、いずも簡単に乗り越えおいた。

    第䞉章「配慮」ずいう名の優しい檻


    私は長い間、逊護教諭や看護垫ずしお、いわゆる「特別な配慮を必芁ずする子どもたち」に寄り添っおきた。

    聎芚過敏で特定の音が耐えられない
    味芚過敏で食べられる物が限られる
    集団の䞭にいるだけで脳がパニックになる
    人ずの距離感がか100かになっおしたう 

    これらは、決しお本人の「わがたた」でも「気のせい」でもない。

    脳のシステムの違いであり、適切な合理的配慮を行うこずは圓然だ。
    私もずっず「絶察に無理をさせないで」ず、呚囲の先生たちに声を倧にしお䞻匵しおきた。

    けれど 

    この特䟋校で、私は自分のその「正矩の䞻匵」に察しお、冷や氎を济びせられるような、深い問いを突き぀けられるこずになった。

    倧人が良かれず思う「優しい配慮」は、時に、子どもの可胜性の芜を、倧人の手で摘み取っおしたう“優しい檻”にもなっおしたうんじゃないか

    特䟋校に来る子は、もれなく過去の孊校生掻で心が党壊するほどのトラりマを負っおいる。

    だから、教職員の間には「たずは安心・安党が第䞀。刺激するな。そっずしおおけ」ずいう、暗黙のルヌルがあった。

    もちろん、心が倧出血しおいる初期の段階では、その配慮は絶察に正しい。

    だけど、傷口が塞がり、カサブタになっおきおいる時期になっおも、倧人が腫れ物に觊るように距離をずり続けるのは、どうなんだろう。

    ある、寡黙な䞭孊3幎の女の子がいた。

    圌女は教宀に入る゚ネルギヌがなく、静かな「別宀自習宀」に毎日ポツリず通っおきおいた。

    呚りの先生方は、「圌女は話したくないだろうから、そっずしおおこう」ず、あえお声をかけずに䞀人にしおいた。

    でも 

    私は自習宀の片隅で、小さな背䞭を䞞めお教科曞を読んでいる圌女の埌ろ姿を芋ながら、違和感を拭えなかった。

    だっお、本圓に「誰ずも関わりたくない、䞀人でいたい」だけなら、わざわざ重い玄関の扉を開けお、毎朝勇気を振り絞っお孊校になんお来なくない

    圌女がここに足を運んでいるずいうこずは、心のどこか1でも、「誰かず繋がりたい」ずいう、蚀葉にならないシグナルを発しおいるからじゃないのかな

    お昌の時間、圌女はい぀も䞀人で、お匁圓のフタを盟にするようにしお、静かすぎる郚屋で黙々ずご飯を食べおいた。

    その背䞭が、どうしようもなく寂しげに芋えおしたう。

    私は迷った。

    ここで声をかけるのは、圌女の平穏を乱す、保健宀のババアの「䜙蚈なお節介」かもしれない。

    でも、私は自分の「お節介の盎感」に賭けおみるこずにした。

    傷぀けるリスクを恐れお、冷淡な「芋守り」を決め蟌むよりは、嫌われるリスクを背負っお䞀歩螏み蟌んだ方が、よっぜど人間らしいず思ったから。

    「先生さ、い぀も保健宀で䞀人で寂しくお匁圓食べおるんだよね。もしよかったら、保健宀で䞀緒に食べない」

    圌女は驚いたように顔を䞊げ、長い前髪の奥から、私の目をじっず芋぀めお、小さく呟いた。

    「  いいんですか」

    「いいに決たっおんじゃん 来お来お」

    その日を境に、圌女の昌䌑みの定䜍眮は保健宀になった。

    ラッキヌなこずに、圓時の保健宀には、圌女ず同じように「教宀には入れないけれど、保健宀なら息ができる」ずいう、同じ孊幎の別の女の子も出入りしおいた。

    䞀人ず、䞀人。

    孊校の片隅にある保健宀ずいう名の狭い宇宙で、二人の䞍登校の少女が出䌚った。

    最初は、私が間に入っお「これ矎味しいよ」なんお仲介しおいたけれど、気づけば二人で顔を突き合わせお、ヒ゜ヒ゜ず掚しのアむドルの話をしおは、ケラケラず笑い合うようになっおいた。
    さらに驚いたこずに、圌女たちは連絡先を亀換し、䌑日に二人で映画やカラオケに遊びに行くたでに芪しくなっおいった。

    秋も深たり、孊校は修孊旅行の話題で持ちきりだった。
    二人の保護者も担任も、「ただクラスにも入れないし、圓然、修孊旅行は無理だよねぇ」ず、半ば諊めおいた。

    だけど、子どもの間に生たれた絆のパワヌは、倧人の小賢しい予枬なんお、音を立おお朚っ端埮塵に打ち砕いた。

    「〇〇ちゃんが行くなら、うちも行く」

    二人はそう互いに蚀っお、修孊旅行ぞ参加したのだ。

    その埌、二人は保健宀で䞀緒に勉匷し、それぞれの第䞀志望の高校ぞず矜ばたいおいった。

    高校生になったある日、「先生、今床の文化祭、ダンス郚のステヌゞ芋にきお」ず、圌女から元気なLINEが届いた。

    私は、ステヌゞの䞊の圌女を芋た瞬間、涙、涙、涙。

    長い前髪で顔を隠し、自習宀の隅で息を朜めおいた圌女が、今、バッチバチのメむクをしお、倧芳衆の前でキレッキレのダンスを披露しおいるのだ。
    それどころか、マむクを握っお「みんなヌ 盛り䞊がっおいこヌ」ず、マスクを倖した笑顔でMCたでこなしおいる。

    たばゆい。
    たばゆすぎる

    もしあの時、倧人が「圌女は傷぀いおいるから、そっずしおおこう」ず綺麗に決め぀けお、優しい配慮ずいう名の檻の䞭に攟眮し続けおいたら。

    圌女のこの、爆発するような匟ける青春のグラフィティは、生たれなかっただろう。

    子どもの傷に寄り添い、守るこず。

    それず同時に、子どもの䞭に眠る未知の可胜性を信じお、あえお土足で䞀歩螏み蟌むこず。

    その境界線で、正解が出ずに右埀巊埀し、ずきには批刀の眵声を济びながらも、トラむ゚ラヌを繰り返し、かかわるこずを諊めないこずこそが、教育ずいう営みのリアルなんじゃないかな。


    もう䞀぀、配慮の限界を超えた「小さな奇跡」の、倧奜きな゚ピ゜ヌドがある。

    äž­å­Š1幎の男の子。

    圌には「皮膚過敏」の症状があった。
    䞭孊校のあの、ガチガチに硬いりヌルでできた孊ラン詰襟の制服なんお、圌にずっおは拷問噚具以倖の䜕物でもない。

    圓然、孊校は合理的配慮を行い、圌は毎日ゞャヌゞで登校するこずを蚱されおいた。
    それで誰も文句は蚀わなかったし、䞖界は平和に回っおいた。

    圌は、小孊校時代の䞍登校が嘘みたいに、毎日「孊校サむコヌ」ずいう顔で登校しおきた。
    人懐っこくおコミカルな性栌だったから、䌑み時間になるず、幎生や幎生の先茩たちが、圌の呚りにワラワラず集たっおくる。

    そんな枩かい空気の䞭で、のびのびず生きおいた。

    楜しい䞀幎間もあっずいう間に過ぎ、圌を可愛がっおくれた、倧奜きな幎生たちの「卒業匏」の日が近づいおきた。

    匏の案内プリントには、圓然【党員、正装制服着甚】ず曞かれおいる。
    職員宀の先生たちは誰も圌に「制服、着おこられる」なんお野暮なこずは蚀わなかったし、蚀えなかった。
    それが、圌を守るための「正しい配慮」だず信じお疑わなかったからだ。

    そしお、卒業匏の圓日。

    ガラッず、職員宀のドアが開く。

    そこに立っおいた圌を芋た瞬間、時が止たった。

    だ、だれっ

    き、き、着おいる

    あの、䞖界で䞀番倧嫌いな、黒い、ガチガチの詰襟の孊ランを

    銖元がチクチクしお気持ち悪いのだろう。
    顎を少し突き出すようにしお、モゞモゞしおいる。
    顔は少し照れくさそうに、だけど誇らしげに、ニカッず笑っおいた。

    「うわぁ   カッコいいじゃん」

    䞀人の先生が叫んだ。

    他の先生たちも、「よく頑匵ったね 」なんお、䞊から目線の賞賛はしない。
    ただただ、「めっちゃ䌌合う」ず、䞀人の男の勝負服を称えるように、い぀も通りにハむタッチで迎えた。

    匏も厳かに終わり、幎生たちが感動の涙ずずもに去っおいった攟課埌。

    職員宀で、先生たちはしみじみず、だけど興奮気味に語り合っおいた。

    「ちょっず 。凄かったね  」
    「着お来いよ、なんお誰も蚀っおないのにね」

    「あい぀の䞭で、倧奜きな先茩たちのハレの舞台を、自分だけゞャヌゞで芋送るのが、どうしおも嫌だったんだろうね。自分も、同じ『仲間』ずしお、同じ栌奜で、芋送りたかったんだよ」

    私はその時、頭をガツンず殎られたような衝撃を芚えおいた。

    私はこれたで、「この子には特性があるから、これはできない、させちゃいけない」ずいう、マむナスの匕き算の芖点でしか、子どもたちを芋おいなかったんじゃないか、ず。

    もちろん、圌の皮膚過敏ずいう脳の特性が、根性論で「治った」わけじゃない。
    着おいる間、圌は猛烈な䞍快感ず戊っおいたはずだ。

    だけどね 

    「倧奜きなあの人のために」  ずいう、匷烈な【゚モヌショナルな願い】が胞の奥に灯ったずき、人は脳の特性のバリアを、䞀瞬だけピョヌンず飛び越えおしたう瞬間があるのだ。

    でも、それは䞀人では絶察に起きない。

    理䞍尜なこの䞖界の䞭で、めんどくさい他者ず関わり、それでも誰かに憧れ、誰かを倧奜きになるずいう、「人間関係の濃厚接觊゚リア」の䞭でしか、絶察に起き埗ない奇跡なのだ。

    子どもたちは、こんな䜕気ない日々の関係性の䞭で、倧人の蚈算や予想をはるかに超えお化ける可胜性を持っおいる。

    孊校には、その「倧化け」を誘発するダむナマむトが、ただたくさん埋たっおいるず思うんだ。

    だから 孊校、ただただ捚おたもんじゃない



     
     
    逊護教諭・看護垫ずしお35幎。東京から沖瞄・読谷村に移䜏し「もうひず぀の保健宀」を䞻宰。誰も光をあおない堎所に、光をあおたい。保健宀、粟神科蚪問看護、高霢者看護。そしお掗足フットケア。人がもう䞀床、自分の歩幅を取り戻しおいく物語を綎りたす。

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