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Bigbeatの構造 -Rockafeller Skankを分解してみる-

    前回の記事において、Bigbeatの構成要素を4つ挙げた。そのうちの一つである「サンプリングによる「継ぎはぎ」の美学」である。今回は、Bigbeatアンセム1つであるFatboy SlimのThe Rockafeller Skank(1998年)がどのように多様なサンプリングを活用して継ぎはぎされながら作られているかを解説したい。


    Whosampledによると、このアンセムには13 の楽曲からサンプリングされたパーツが使用されている。まずはこの歴史的大ヒット曲の土台となったのが、1972年に発売されたJust BrothersのSliced Tomatoesだ。この曲は、1960年代後半から1970年代前半にイギリスで生まれたダンスカルチャーNorthern Soulに必要不可欠な一枚と言われている。個人的には、Bigbeat誕生の根底にはNorthern Soulという文化が影響を及ぼしていた、という仮説を持っており、この点はいずれ深掘りしていきたい。


    次にBigbeatの重要な構成要素であるドラム・ブレイクビーツパートだが、The Clashのカバーで一躍有名になったThe Bobby Fuller FourのI Fought the Law(1965年)や、David BowieのファーストアルバムにJoin the Gang(1967年)、そして同じくFatboy SlimのGangster Trippinのヴォーカルサンプルでも有名なDJ ShadowのEntrophy(1993年)など、
    実に6曲もの異なる楽曲からドラムサウンドがサンプリングされている。



    次に、印象的なギターリフは1960年代前半の3つの楽曲からギター部分がサンプリングされている。


    最後に象徴的なボーカルは3曲からサンプリング。何度も繰り返される「Right About Now Funk Soul Brother」のフレーズは、米国のラッパーであるLord FinesseによるVinyl Dogs Vibe (1997年)から抽出されたものである。


    ここまでそれぞれの楽曲を聴いてみると、確かに聴き覚えのあるフレーズもある一方で、どこに使われているのだろうと疑問に思う曲もある。そんな悩みを解決してくるのがこちらのリール。Rockafeller Skankの一部分ではあるものの、上記の曲のどこをサンプリングして使用しているのかを非常にわかりやすくショート動画でまとめている。曲のテンポ。ピッチを変えたり、1秒に満たない使用だったりと、Fatboy Slimのサンプリングの切り貼りがいかに繊細でクリエイティブに溢れているものかがよくわかる。



    このようにBigbeatは細やかな継ぎはぎの美学によって構成されたマッシュアップ的な手法で誕生した音楽なのである。一方で、これだけのサンプリングを使用していることは、その分だけ著作権問題をクリアしなければ正式にリリースができないということであり、このライセンス問題はのちにBigbeatが一時的なブームで衰退してしまった要因の一つになっていると思われる。ちなみにこの曲のサンプリングのロイヤリティに関して、Fatboy Slimは2006年に実施されたHigher Frequencyのインタビューで次のように語っている。

    Q : Thinking of “Bird of Prey” and other Fatboy Slim classics, you use a lot of high profile samples. Tell me about what’s involved in getting clearance.
    A (Fatboy Slim) : Lawyers. Two lots of lawyers, our lawyers and the person’s you sampled lawyers, and nowadays there’re lawyers who simply deal with samples. So you just have to come with an arrangement with the person you’re going to sample – sometimes it’s expensive, sometimes it’s not. It’s a necessary thing for what I do. Sometimes the record company would say to me “Why don’t you just pay it yourself? It would be so much cheaper” So I would say “Yeah, but it wouldn’t be so much fun”

    Q : What’s the most you’ve had to pay for a sample?
    A : 100%. Royalty for the entire song. If there was more than a 100%, I probably would have paid that.

    Q : Can we ask which song?
    A : Well it’s normally when there’s more than one sample. When you have to split it between say ‘The Rockafeller Skank’ there was four different samples on it we had to clear, and they all wanted 40%, or 50%, and we were like “Hold On, there’s only like 100% that’s available”. So we were like, “you can all have 25%”, and there was none left for me.

    以下日本語訳
    Q : 「Bird of Prey」やファットボーイ・スリムの他の名曲を考えると、あなたは多くの著名なサンプルを使用していますね。使用許諾を得るためのプロセスについて教えてください。
    A(Fatboy Slim) : 二組の弁護士、つまり我々の弁護士と、サンプル元の人物の弁護士だ。最近では、サンプル専門の弁護士もいるよ。だからサンプリングする相手と事前に取り決めが必要なんだ。費用がかかることもあれば、かからないこともある。僕の仕事には欠かせないプロセスさ。レコード会社から「自分で支払えば?ずっと安くなるよ」と言われることもあるけど、僕は「そうだけど、それじゃ面白くないだろ」って答えるんだ。

    Q : サンプル使用で支払った最高額は?
    A : 100%。楽曲全体の使用料だ。100%を超えても、おそらく支払っていただろう。

    Q : どの楽曲か教えていただけますか?
    A : 通常、複数のサンプルを使用する場合だ。例えば『The Rockafeller Skank』には4つの異なるサンプルが使われていて、それぞれに40%や50%の権利料を要求されたんだ。僕らは「待って、使えるのは100%だけだよ」って。結局「全員で25%ずつ分けよう」ってことで、僕には何も残らなかったんだ。


    このインタビューから察するに、The Rockafeller Skankのサンプリング使用料は100%であり、Fatboy Slimには一切利益がなかったということになる。このことが事実なのか、または誇張された話なのかはわからないが、Fatboy Slimにとって、そしてBigbeatにとって、サンプリングは欠かせないものであり、そして使用許可を得たアーティストを尊重しリスペクトしていたことは間違いない事実である。

     
     
    Big Beatを愛するDJ。 高円寺Yakusyuにて、Big Beatで踊りながら餃子を食べるDJイベント「Big Beat餃子」を不定期開催中

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