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【温泉ファンタジー】Sa・Ga3 温泉の覇者 第23話 雪女です

    白い影は、吹雪の向こうでこちらを見ていた。

    大きな肩、長い腕、白い毛に覆われた身体。遠目には確かに、雪原に現れた怪物のように見えた。

    スパロウ
    「よし、話してみようぜ。」

    スパ子
    「まず様子を見なさいって言ってるでしょ。」

    スパロウ
    「逃げられたら困るだろ。」

    スパ子
    「逃げられるような近づき方をするなって話よ!」

    スパロウは雪の上を踏みしめ、白い影へ向かって進んだ。

    白い影
    「ウ、ウゴ……。」

    低い声を出そうとしているようだったが、どこか頼りない。腹の底から響くというより、分厚い何かの奥で声がこもっているだけのようにも聞こえた。

    パー美
    「なんか、かわいくない?」

    ぺーすけ
    「威嚇としては弱いですね。」

    メカ
    「対象、生体反応ハ想定ヨリ小型。外形ト実寸ニ差異アリ。」

    スパ子
    「それ、どういうこと?」

    メカ
    「毛皮状ノ外装ニヨル誤認ノ可能性アリ。」

    スパ子
    「毛皮状の外装?」

    その時、白い影が一歩後ずさった。

    スパロウ
    「待てって!」

    白い影
    「ウゴ、ウゴゴ……!」

    白い影は背を向けて逃げようとした。

    だが、速くはなかった。むしろ雪に足を取られ、どたどたと不器用に進んでいる。見た目ほど大きな生き物ではないらしく、吹雪の中で膨らんで見えていただけだった。

    スパロウ
    「逃がすか!」

    スパ子
    「だから待ちなさい!」

    スパロウが雪を蹴って飛びかかろうとした瞬間、足元が深く沈んだ。

    スパロウ
    「うおっ!」

    伸ばした手が、白いもこもこの腕を掴む。次の瞬間、スパロウと白い影はまとめて雪の上に転がった。

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    白い影
    「きゃあ!」

    雪原に、妙に可愛らしい悲鳴が響いた。

    スパロウ
    「……。」

    スパ子
    「……今、きゃあって言ったわよね。」

    パー美
    「言ったね〜。」

    ぺーすけ
    「雪男の発声としては、不自然です。」

    メカ
    「対象、雪男デハナイ可能性ガ上昇。」

    白い影は雪の上でもがいていた。分厚い着ぐるみが邪魔なのか、手足がうまく動いていない。

    白い影
    「あ、あの、すみません、起きられません……。」

    スパ子
    「普通にしゃべったわね。」

    スパロウ
    「雪男じゃないのか?」

    白い影
    「違います。」

    パー美
    「じゃあ、ちょっと止まっててね〜。」

    パー美が指先を軽く動かすと、白い影の身体が雪面からふわりと浮いた。

    白い影
    「ひゃっ。」

    パー美
    「大丈夫大丈夫。落とさないから。」

    スパ子
    「パー美、乱暴にしないでよ。」

    パー美
    「してないよ〜。ふわっとだよ〜。」

    メカ
    「対象、浮遊中。」

    ぺーすけ
    「説明しなくても見れば分かります。」

    パー美が白い影をそっと雪の上に下ろすと、その身体はようやく落ち着いた。

    近くで見ると、それは巨大な雪男ではなかった。

    白い毛足の長い、分厚い着ぐるみ。大きな手足。角のような飾りのついた頭。吹雪の中では怪物に見えたが、目の前に立つと、どう見ても誰かが中に入っている。

    スパ子
    「……着ぐるみ?」

    白い影
    「はい。」

    スパロウ
    「なんで雪原で着ぐるみ着てるんだ?」

    白い影は少し迷ってから、もこもこの頭部分を両手で持ち上げた。

    中から、薄い水色の髪がこぼれた。白い肌。柔らかい顔立ち。寒そうに赤くなった頬。着ぐるみの奥から顔を出したのは、怪物ではなく、一人の女の子だった。

    白い影
    「雪女です。」

    スパロウ
    「雪女!」

    パー美
    「ほんとにいるんだ〜。」

    ぺーすけ
    「雪男ではなく、雪女だったわけですね。」

    メカ
    「識別情報ヲ更新。対象、雪女。」

    女の子は着ぐるみの頭を抱えたまま、ぺこりと頭を下げた。

    雪
    「雪と申します。」

    スパ子
    「雪さん?」

    雪
    「はい。」

    パー美
    「お雪さんって呼んでいい?」

    雪
    「はい。大丈夫です。」

    スパロウ
    「で、お雪さんはなんで雪男の格好してるんだ?」

    雪
    「雪男ではなく、イエティのつもりです。」

    スパ子
    「イエティ。」

    パー美
    「これ、イエティなんだ。」

    雪
    「はい。たぶん。」

    スパロウ
    「たぶん?」

    雪は少しだけ目をそらした。

    雪
    「本物とは、少し違います。」

    スパ子
    「少し?」

    雪
    「だいぶ、違います。」

    パー美
    「自覚あるんだ。」

    雪
    「あります。」

    スパ子は改めて、お雪さんの着ぐるみを見た。

    白くて大きくて、もこもこしている。遠目なら分からないかもしれないが、近くで見ると、かなり無理がある。

    スパ子
    「それで、どうしてそんな格好を?」

    雪は当然のように答えた。

    雪
    「寒いので。」

    一瞬、風の音だけが聞こえた。

    スパ子
    「……雪女よね?」

    雪
    「はい。」

    スパ子
    「寒いの?」

    雪
    「寒いです。」

    パー美
    「雪女なのに?」

    雪は真面目な顔でうなずいた。

    雪
    「雪女でも寒いものは寒いですし、冷え性は体質です。」

    スパ子
    「妙に説得力あるわね。」

    ぺーすけ
    「体質と言われると、反論しづらいですね。」

    メカ
    「雪女ノ体温調整機能ハ未登録デス。」

    雪
    「登録しないでください。」

    スパロウは雪まみれの頭を払いながら笑った。

    スパロウ
    「まあ、雪男じゃなくてよかったな。」

    スパ子
    「飛びかかった本人が言うことじゃないわよ。」

    雪は着ぐるみの頭を抱え直し、少し困ったように笑った。

    雪
    「驚かせてしまって、すみません。」

    スパ子
    「こっちこそ、うちのが飛びかかってごめんなさい。」

    スパロウ
    「捕まえるつもりはなかったんだよ。」

    スパ子
    「逃がすかって言ってたわよ。」

    スパロウ
    「言葉の勢いだ。」

    パー美
    「勢いで雪女に突っ込むの、太郎くんっぽ〜い。」

    スパロウ
    「褒めてるのか?」

    パー美
    「うん、たぶん。」

    ぺーすけ
    「たぶんが多いですね。」

    吹雪は相変わらず続いていた。

    白い大陸の真ん中で、一行は雪女の着ぐるみ姿と向き合っていた。

    スパ子は麦わら帽子を押さえながら、もう一度お雪さんを見た。

    スパ子
    「とりあえず、寒いならその頭、かぶり直した方がいいんじゃない?」

    雪
    「あ、はい。」

    お雪さんは慌てて、もこもこのイエティ頭をかぶり直した。

    再び、白い毛玉のような姿になる。

    パー美
    「やっぱりかわいい。」

    雪
    「ありがとうございます。」

    メカ
    「イエティ偽装率、低。」

    雪
    「それは言わないでください。」

    スパ子
    「メカ、今は黙ってて。」

    メカ
    「了解シマシタ。」

    白い大陸で出会った最初の住人は、雪男ではなかった。

    寒がりで冷え性の、雪女だった。

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    第22話 白い大陸   目次   第24話 お雪さんの住処

     
     
     
    DERAです。 ガンダムやMSについて、好きな機体や勝手な仮説を書いていきます。 走る前から何かがズレるマラソン日記、普通なら流すところに引っかかる雑談、温泉に3分入ると強くなる男の創作ファンタジーを書いています。

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