
【温泉ファンタジー】Sa・Ga3 温泉の覇者 第1話 伝説を追って
山道を、二人の冒険者が歩いていた。
風はぬるく、遠くで白い湯気が揺れている。秘湯が近い。……はずだった。
スパ子はちらりと前を見る。
先を歩く太郎は妙に静かだった。
いつもなら、
「秘湯ぉぉぉ!!」
とか、
「温泉が俺を呼んでる!!」
とか騒ぎ始める頃なのに、今日はそんな様子がない。
スパ子
「……ねぇ、太郎。」
スパロウ
「ん?」
返事はある。だが、どこか上の空だった。
スパ子
「さっきから静かじゃない?」
スパロウ
「そうか?」
スパ子
「そうよ。」
短い沈黙が流れる。
風が吹き、山肌を撫でるように湯気が流れていった。
スパロウ
「……別に。」
それだけだった。
スパ子は小さく視線を逸らす。
たぶん原因は分かっていた。
――メガネちゃん。
あれから彼女とは別れたままだ。
温泉女神。
向こう側の存在。
最後までふわふわしていて、最後までよく分からない人だった。
でも。
あいつがいなくなってから、太郎は少し変だ。
きっと会いたいのだろう。
きっと気になっているのだろう。
スパ子は唇を尖らせた。
自分だって一緒に旅をしてきた。
自分だって戦ってきた。
なのに。
太郎の頭の中にいるのは、あのメガネ女ばかりだ。
(……なによ。)
胸の奥が、ちくりと痛んだ。
重くなりかけた空気を振り払うように、スパロウが口を開く。
スパロウ
「そういやさ。」
スパ子
「なによ?」
スパロウ
「水瓶伝説の船、この辺りにあるはずなんだけどな。」
スパ子
「そんな簡単に見つかるわけないでしょ。」
スパロウ
「でも伝説だと、この山脈周辺って話だったぞ?」
スパ子
「伝説でしょ? 伝説。」
スパロウ
「船が見つかればさ。」
スパ子
「うん。」
スパロウ
「水瓶伝説も本当だったってことだろ?」
スパ子
「伝説なんて大抵は話を盛るものよ。」
スパロウ
「秘湯もそう言われてた。」
スパ子
「それは否定できないけど……。」
スパロウ
「夢があるだろ?」
スパ子
「はいはい。」
スパロウは少しだけ笑った。
久しぶりに見た、いつもの表情だった。
スパ子は小さく息を吐く。
少しだけ安心した、その時だった。
ゴゴゴゴゴゴ……。
足元が揺れた。
スパロウ
「うおっ!?」
スパ子
「地震!?」
山全体が唸る。
岩肌に亀裂が走り、崖の一部が崩れ始めた。
ドォォォォン!!
土煙が舞い上がる。
二人は慌てて飛び退いた。
やがて揺れが収まり、煙が晴れていく。
スパロウ
「なんだったんだ……?」
スパ子
「あれ?」
崩れた岩肌の奥。
今まで岩に覆われていた場所に、巨大な金属の壁が姿を現していた。
二人はしばらく無言で見つめる。
そこには人工物らしき巨大な構造物が埋まっていた。
遺跡と呼ぶには新しすぎる。
だが、建造物と呼ぶには古すぎた。
スパロウ
「見つけた。」
スパ子
「いやいやいやいや。」
スパロウ
「見つけたぞ!」
スパ子
「早すぎるでしょ!?」
