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ショートショート 部屋も借りられない私と、2着のシャツと、貧乏な私



    不動産アプリの家賃相場を見て、また閉じた。

    三度目だった。

    保証人なし、初期費用抑えめ、それでも家賃三カ月分がまとまって出せない。手取りは月二十四万円、そこから奨学金の返済が引かれ、残りで生きている。生きているというのは大げさかもしれない。息をして、働いて、また働いている、それだけだ。

    住んでいるのは正確には部屋ではない。カプセルホテルの長期プランと、週に二回のネットカフェの往復。荷物はコインロッカーとリュック一つに収まる量まで減った。

    減らしたものの中に、服がある。

    持っているシャツは二枚。

    一枚は面接用の白いシャツ。もう一枚は、それ以外の全部に着回す紺のシャツ。しわになりにくい生地を選んだから、丸めてリュックに入れても形が保つ、そんなことをSNSに投稿したら、意外と伸びた。「わかる」「うちも二枚」というコメントが並んだ。誰も助けてはくれない。共感だけが無料で降ってくる。

    バイトは三つ掛け持ちしている。深夜のコンビニ、日中の倉庫仕分け、週末のイベント設営。シフトの隙間に面接を入れる。正社員になれば部屋が借りられる。部屋が借りられれば住所が持てる。住所が持てれば、もっとまともな求人に応募できる。

    その入り口の順番が、いつも逆になっている。

    住所がないから、まともな面接に呼ばれない。呼ばれないから、正社員になれない。なれないから、部屋が借りられない。

    輪になった坂道を、上っているつもりで、実はただ同じ場所を回っているだけなんじゃないか。そう思う夜がある。たいてい、コインランドリーの乾燥機が回っている音を聞いているときだ。

    白いシャツが乾くのを待ちながら、スマホで求人サイトをまた開く。

    「未経験歓迎」「学歴不問」「あなたらしく働ける」

    読むたびに、言葉の軽さに笑ってしまう。

    自分らしさより先に、安心していられる場所が欲しい。

    乾燥機が止まる。生乾きの匂いのする、まだ少し湿ったシャツを畳んで、リュックに詰める。

    明日も、この二枚で生きていく。

     
     
     
    断酒で人生リセット。 AIと共に小説を毎日執筆。 副業ノウハウや習慣化、妄想起業アイデアも。 英語中国語の語学学習継続中。 物語もビジネスも妄想から始まる。 |https://note.com/denkenanima ※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれます。

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