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教室のすみに咲いた、ひとこと


    「…ねぇ、これって、ほんとにテスト?」

    すみれはノートのページを指でなぞりながら、声を潜めた。

    「うん、でも“テスト”って言っても、“誰かに伝える”ためのテストだって。」

    そう答えたのは、となりのケイ。
    少し声が大きくて、ちょっと笑いすぎて、でもなんとなく安心できる存在だった。

    今日は共育中学校のペアテスト。
    お題はこうだった。

    『学校やペアテストについて、ふたりで話し合ってSNSの最初の投稿をつくりなさい。形式は自由。』

    すみれは、自分が「自由」と言われるのが苦手だった。
    「何を書いてもいいよ」と言われると、余計に何も書けなくなる。

    ケイはそんなすみれの様子を見て、机の間にそっとメモを滑り込ませた。

    『じゃあ、ぼくが質問する。すみれがこたえて。』

    すみれは小さくうなずいた。

    ⸻

    「この学校の、いちばんすきなとこは?」

    「…答えがひとつじゃないところ。」

    「じゃあ、ペアテストって、すみれにとってなに?」

    「…“だまってても、となりが待っててくれる”もの。」

    「それ、すごくいいな。」

    ⸻

    ケイはそのまま、投稿文をまとめた。

    『この学校では、黙っている子の中にも、言葉がちゃんとある。
    となりの子と、それを見つけるのがぼくらのテスト。』

    ふたりはその投稿に、机の上に並べた文房具の写真を添えた。
    すみれの指先が少し写っている。ペンを握るのではなく、そっと触れるように。

    ⸻

    【おわりに】

    「…それ、ほんとに投稿するの?」

    すみれが恥ずかしそうに聞くと、ケイはにっと笑った。

    「うん。たぶん、誰かの“となり”に届くかもしれないから。」

    ⸻

    このペアもまた、教室の片隅でひとつの光を咲かせていた。

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