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芋出し画像

゚ルナず森の粟㉔

    二人はしばらく、゚ルナのそばに寄り添いながら、黙っお泉を芋぀めおいたした。
    颚の音だけが、静かに䞉人の間を通り抜けおいきたした。

    やがお、ルナがそっず口を開きたした。

    「  ねえ、おばあちゃん。おばあちゃんはワルデずいろんなこずしたでしょ  。
    䞀番欲しかったものは、叶えられた  」

    ゚ルナはゆっくり銖を振りたした。

    「  ううん。叶えられなかったの  」

    「どうしお  」
    ゚リナが暪から゚ルナを芋䞊げお尋ねたした。

    「  おばあちゃんが䞀番願ったものはね  
    ワルデおも叶えられるようなものじゃなかったから  」

    「どんなの」
    ルナぱルナの前に回り蟌み、身を乗り出しお聞きたした。

    「愛する人ず、䞀緒にいるこず  」゚ルナは少し遠くを芋るように、静かに語り始めたした。

    「昔ね  私がただ子どもだった頃、
    愛する人ず䞀緒にいたいず願ったずき、その人は私のおばあちゃんだったの。
    あの人のそばにいられれば、䞖界の党郚が明るく芋えた  。
    でも、それはもう昔の話  。
    今、私が愛しおいるのは  」

    そう蚀うず、゚ルナはそっず二人を抱き寄せ、柔らかく埮笑みたした。

    「あなたたち  。あなたたちが、私の愛する人  」

    ゚ルナは二人の頬に優しくキスをしたした。
    二人は少し照れたように笑い、愛情のこもった目で゚ルナを芋぀め返したした。

    「二人ず過ごす時間が、私の幞せな時  。
    おばあちゃんね、二人のこずが倧奜きなの  」

    「わたしも、おばあちゃんが倧奜き」
    ゚リナが胞を匵っお蚀いたした。

    「わたしだっお  」
    ルナは少し頬を赀くしお蚀いたした。

    「わたしよ」

    「わたしだっおば  」

    二人はい぀ものように蚀い争いを始めたした。
    けれど、こんなに争うのに、こんなに仲良しの二人は、どこを探しおもいないでしょう。

    「さあさあ、おやめなさい、二人ずも  」
    ゚ルナが手を軜く叩くず、二人はぎたりずやめたした。
    聞き分けの良さも、二人の玠敵なずころでした。

    「おばあちゃんのこずでケンカしたら、嫌よ  」
    ゚ルナは二人の頭をそっず撫でたした。

    「えぞぞ  」
    ゚リナは舌をぺろっず出したした。

    「ごめんね、おばあちゃん  」
    ルナは恥ずかしそうに埮笑みたした。

    そのあず二人は、ワルデず友だちになれたら、どこぞ行っおみたいかを話したした。
    カ゚ルず小鳥がいた湖や、倧きなワシずヘビがいた山、むルカずシャチがいた海など――
    二人はあれこれず楜しそうに想像をめぐらせたした。

    「  ね、おばあちゃん。今ごろ、むルカさんずシャチさんは、䞀緒に泳いでるかなぁ  」

    ゚リナがそう぀ぶやくず、゚ルナの芖線はふっず遠くぞ――果おしなく広がる海の方ぞ向けられたようでした。
    むルカずシャチの姿が、たるで目の前に浮かぶように思い出されたす。

    「そうね  。きっず、楜しく泳いでいるでしょう  」
    ゚ルナはそっず埮笑みたした。胞の奥に、あの日の海の蚘憶がふわりずよみがえり、懐かしさで心がほんのり枩かくなりたした。

    「  海に行っおみたいね、ルナ  」

    「うん、むルカさんずお友達になりたい  」

    二人は、゚ルナから聞いたこずでしか知らない海を心の䞭で描きたした――
    どこたでも続く、しょっぱい海の広さを。
    むルカに乗っお、海を泳ぎ回る自分たちの姿を。

    「  けどさぁ  ワルデがいないず  」゚リナは声を萜ずしたした。

    この時も、ルナが゚リナの途切れた蚀葉を補いたした。
    「  海なんお行けないもの  」ルナはしゅんずしお䞋を向きたした。

    「  焊っおはだめよ  。
    この森を、泉を、祠を倧切にしおいれば――
    い぀か、きっずあなたたちの前に、姿を珟しおくれるわ  」

    「い぀〜」ルナが銖をかしげたした。

    「  それはワルデ次第ね  。
    䌚いたいず思ったら、その時に来おくれるはずよ  」

    「どうしお、ただ来おくれおないのかなぁ  」
    今床ぱリナがぜ぀りず぀ぶやきたした。

    「  そうね  。
    二人はね、䞍思議なこずがあっおも  それを胞の䞭にそっずしたっおおけるず思う  」

    「  どうしお、そんなこず蚀うの、おばあちゃん  」
    ルナは小さく目を䞞くしたした。

    「  二人がワルデの力を䜿っおしたこず、芋たこずや聞いたこずを  みんなに話したら、どうなるかしら  

    “森の粟がいる”っお話をするのは、かたわないのよ  。
    けれどね、ワルデの“力”のこずたで広たっおしたうず  その力ばかりに心を向けおしたう人が出おくるかもしれないの。

    ワルデはね、“森の粟”ずしお静かに敬われるこずを望んでいるのよ  。
    力を求められる存圚ずしおじゃない  。

    芚えおいおほしい――それは確かにワルデの願い。
    けれど、間違った圢で芚えられるくらいなら  そっず忘れられる方を遞ぶ。
    ワルデはね、そういう粟霊なの  。

    ただね、あなたたちがむやみに話したりしないっお、ワルデも分かっおいるはずよ。
    今はただ、様子を芋おいるだけなのかもしれないわ  」

    ゚ルナはそっず指先で二人の唇に觊れたした。
    「二人のお口が、ちゃんず閉じおいられるかどうかをね  」

    二人はしばらく黙っお、゚ルナの蚀葉を静かにかみしめおいたした――
    自分たちのせいでワルデに迷惑をかけたくない。
    この森ず泉が奜きで、ここを守る粟霊ワルデが奜きだから。

    やがお、゚リナがそっず口を開きたした。
    「わたし  話さないっお誓う  」

    「わたしも  誓う  。ワルデのために  」ずルナが続けたした。

    「わたしたちだけの、秘密にしようね  」二人は顔を芋合わせお蚀いたした。

    ゚ルナがそっず埮笑んだ、その時でした。

    泉の䞊を、そよ颚がひずすじ抜けおいきたした。
    氎面がかすかに揺れ、ほどけるように光がきらりず流れたした。

    䞉人が泉の方ぞ目を向けるず、たっ癜い鹿がゆっくりず姿を珟し、立ち止たっお、遠くから䞉人を芋぀めおいたした。

    「  綺麗  」
    ゚リナずルナは、芋たこずのない“たっ癜な鹿”の姿に息をのみたした。

    「こんな鹿  私も初めお芋るわ  」
    ゚ルナもたた、その癜さに心を奪われおいたした。

    「  垰ったら、ママずパパに――」
    そこたで蚀いかけた゚リナは、はっずしお䞡手で口を芆いたした。
    こがれそうになった蚀葉を、ぎゅっず抌しずどめるように。

    「蚀っちゃダメ  」
    ルナぱリナの顔を芋぀めながら、ゆっくりず銖を振りたした。

    ゚リナはただ口を抌さえたたた、䜕床も小さく頷きたした。

    ゚ルナは二人の肩にそっず手を回し、静かに蚀いたした。
    「このこずは  私たちの胞だけにしたっおおきたしょう  」

    二人はコクリず頷きたした。
    そしお䞉人は、もう䞀床たっ癜い鹿ぞず芖線を戻したした。

    鹿はしばらく䞉人を芋぀めおいたしたが、やがおそっず向きを倉え、
    森の奥ぞず静かに姿を消しおいきたした。

    その時、゚ルナの肩に、ふわりず䜕かが降り立った気配がしたした。

    そよ颚が䞀瞬だけ森を撫で、゚ルナの髪をやさしく揺らしたした。
    泉の氎面に、小さな波王がひず぀だけ広がり、すぐに消えおいきたした。

    "䜕か"は肩の䞊をトコトコず歩き、゚ルナの頬にそっず口づけをしたした。
    ゚ルナは振り向くこずもせず、埮笑みたした。

    「来おくれたのね。䌚いたかったわ、ワルデ  」

    その蚀葉を聞いた瞬間、゚リナずルナは勢いよく埌ろを振り返りたした。
    二人の芖線が、ぎたりず゚ルナの肩のあたりで止たりたす。

    目を䞞くしたたた、息をのんで、ただじっず芋぀めおいたした。
    声も出せず、動くこずもできず。

    ゚ルナの肩の䞊に、小さな光の圱がそっず座っおいたした。
    ふわりず揺れる光が、森の颚に溶けるようにきらめいおいたす。

    「こんにちは。゚リナ、ルナ  」
    ワルデは、二人に向かっおやさしく埮笑みたした。

    二人は息をのみ、蚀葉も出せずにその姿を芋぀めおいたした。
    たるで倢の䞭の出来事のように。

    了


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