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クロとジャック

     名前は「クロ」

     君が我が家にやってきたのは、俺が小学2年ときだった。近所の飼い犬に子どもが生まれたという吉報が叔母から届いた。子犬は5、6匹いた。ひときわ活発で人懐っこかったのが君だった。子犬たちの中でいちばん大きくて、ずっと動きまわってた。
     名前はクロ。俺が付けた。
     犬種は雑種で、シベリアンハスキーと柴犬が融合したような様相だった。模様はシベリアンハスキー柄の黒と白。だから名前はクロ。今思うと、真っ黒でもないのにクロってセンスないね(笑)。一時カラスを飼ったことがあった。真っ黒なカラスを見て、「名前はクロがピッタリやな」って思ったけど、すでにクロは存在しているから結局名前は付けなかった。俺にとってクロは君だけだ。
     弟や妹がほしいって駄々をこねるのは末っ子あるある。君がやってきたとき、俺がどんな気持ちだったか想像できるかな。けど、弟なんてそんな生易しい君ではなかった。散歩のとき君がリードを引っ張る力は、当時の俺にとっては凄まじかった。引っ張られて、振り回されて、散歩しているというより、君が俺を鍛えているみたいだった。しんどかったわぁ。ちょっとずつコツを掴んで慣れてきたけどね。大変だったよ、ほんと。
     覚えてるかな? 親に叱られたのか、わがままが通らなかったのか、覚えてないけど、拗ねた俺が「家出する」って宣言して向かったのは、君の犬小屋だった。今では到底無理だけど、あの頃の俺は犬小屋に身を収めることができた。めいっぱい体を丸めて君の家に住み着くことにした。すると君は、俺の顔を舐める舐める。「うわぁ、ちょっとちょっと……」あんな狭い空間でのペロペロ暴雨には耐えられなかった。結果、すぐ本来の棲み家に戻った。あのとき君はそこまで計算してた?慰めてくれた?舐め回したかっただけ?俺の顔面はどんな味だった? ちなみに、この家出の話は家族や親戚に広まって笑い者にされたわ、ちくしょー。犬小屋があったら入りたいぐらい恥辱な気持ちだったけど、もう家出しないって心に決めたよ。
     1つ謝りたいことがあってね。覚えてるかな? 俺が、君の頭を強めに叩いたこと。でもね、あれはそもそも君が悪かったんよ。だって君はね、俺の足にオシッコをかけた。鼻の利く君が、草っ原や電信柱と、俺の足を間違えるなんてあり得ないよね? 片脚を上げしっかりションベンポーズまで決めて、君は俺の足にオシッコをした。反射的に君の頭を強く叩いてしまったな。痛かったよね、ごめん。でも君も悪いと思うから、謝ってもらっていいかな(笑) 3回まわって「ワン」で許したるワン。あっ。
     クロがやってきておよそ1年後に、ジャックがやってきた。2匹になってからは姉と俺がそれぞれ担当を決めて散歩するようになった。1匹ずつ行くと、残されたほうが吠え吠えてうるさかったからな。最初の頃は気分でコロコロ変えてたけど、やがて担当を固定することになり、俺はクロの担当になった。だからどうしても、君と関わる機会のほうが多かったね。



     名前は「ジャック」

     君が我が家にやってきたのは、俺が小学3年のとき。君との出会いは突然だった。いつものように登校すると、校門の前に騒々しくヒトが集まっていた。そこにいたのは、2匹の子犬だった。おそらく小学校なら早々に貰い手が見つかると踏んで、誰かが子犬を捨てたんだ。そして、そこに君はいた。「飼いたい!」帰宅した姉と俺はさっそく親に懇願したけど、「クロがおるけんダメよ」って叶わなかった。2日後には、誰かが連れて帰ったようで、いなくなってた。でも、それは1匹だけ。1匹だけ残された。それが君だった。姉と俺はもう一度親に頼み込んだ「飼いたい」と。「ちゃんと面倒みなさいよ」約束を交わして、親は首を縦に振った。晩に君を迎えに行くと、暗がりのグラウンドにひっそりと立つ朝礼台の下で、君はひとりぼっちだった。姉と俺は君を撫でた。そして君はうちにやってきた。
     名前はジャック。俺が付けた。
     雑種だと大人は言った。雑種ってなんなんだ。よく分からんかったけど雑種らしい。だってさ、クロも雑種らしいけど、君の見た目はクロとは全然違う。ほとんどビーグル犬。垂れ耳で、ゴールデンレトリバーのようなサラサラした毛並み。赤茶色が主で、鼻のまわりやお腹まわり、足先などは部分的に白。和名は違うなぁーって思って、名前はジャック。英名ボキャブラリーが乏しい当時の俺が思い浮かぶのは、ジョンかジャックぐらいでね、そんなノリでジャックに決めた。君の容姿には合っていると思ったけど、どうだろ?気に入ってくれてたかな?
     小学校にいる間にたくさんのヒトと戯れたおかげか、我々に対して警戒する様子はなかったね。連れ帰ったときの君の肌はかなり荒れていて、あちこち毛が抜け、ガザガサの肌が剥き出しだった。当時は、田舎に動物病院があるのかどうかも知らなかったし、動物を病院に連れて行くっていう風習は馴染みのないものだったと思う。犬用シャンプーで体を洗い、犬用皮膚薬を塗った。どちらも市販の物だった。母と姉がしているのを俺は手伝う程度だったけどね。最適な処置なのか分からなかったけど、経過は良好だった。クロのモサモサした毛並みも気持ちよかったけど、サラサラした君の毛並みも心地よかったなぁ。
     日に日に生気に満ちていく姿、それに弟が増えたみたいで嬉しかった。しかし、弟なんてそんな生易しい君ではなかった。散歩のとき君がリードを引っ張る力は、当時の俺にとっては凄まじかった。ビーグル犬は狩猟犬としての歴史を持つ。ビーグルの血を引いていると思われる君の脚力・体力はクロよりも凄まじかった。クロに鍛えられたはずだったのに、引っ張られて、振り回されて、散歩しているというより、君が俺を鍛えているみたいだった。しんどかったわぁ。散歩担当が固定になり、俺がクロの担当に決まったときは正直ちょっと安堵しました。はい、すみませんね。どっちのほうがかわいいとか、そういうことではないので誤解せんといて。


     クロとジャック、2匹になった。

     君たちを接近させたとき、ケンカしてるように見えたから離して飼うことになった。当時は、特に田舎では家の中で犬を飼う風習は珍しく、ちなみに俺は知らなかった。小学6年のとき、友達が家の中で犬を飼い始めたと耳にしたときは驚いたもんね。そのとき初めて知った、家の中で飼えることを。うちは例に倣ならって外に犬小屋を置いて飼った。もしも家の中で飼っていたら、思い出はもっと違ったものになっただろうね。 
    『飼い犬=番犬』という1つの習わしが存在していた。クロも、ジャックも、その役目を十分に果たしてくれたね。よーーーう吠える吠える。「知らない人が来たら吠えなさい」そんな指令を与えたわけでもないのに、君たちはよう吠えた。友達、親戚、郵便屋さん、配達屋さん、ご近所さん、知らない人が家の近くまでやって来るとちゃんと吠えてた。ごくろうさん。威嚇するように何度も吠える君たちの声は、山や空にまで響いていたよ。近所迷惑になっていたでしょうね、まぁでもしゃーないわな。いま俺が大声で呼んだら、こだまする声は君たちのところまで響くのかな。
    「吠える」で1つ思い出したわ。君たちは歌ってたね。「朝になったら歌いよる」そう母から聞いたときは、「歌う?どうゆうこと?」って懐疑的だった。うちの町では早朝6時に町内放送で音楽が流れる。てっぺんにホーンスピーカーが設置された電信柱は、ウチのすぐ隣にあった。新しい朝を知らせるエーデルワイス、デカデカと流れる音楽に合わせるように、君たちは遠吠えのような声で奏でていたね。初めて耳にしたときは驚いた。クレッシェンドやデクレッシェンド、メゾピアノやフォルテッシモを駆使しているように聴こえたよ。上手とは言えないけど、あれはまさしくカンタービレだった。懐かしいね。

     犬の成長は早いもので君たちはみるみる成長したね。どちらも中型犬。ジャックのほうが少し大きかった。生まれた順で言えば俺が上なのに、犬のほうが年を取るのが早いらしいね。君たちのほうが先に大人になったんだな。俺だって成長してた。年々身長も伸びて、体力もついて、わりと足は速いほうやったんよ。散歩中、君たちと競争したこともあったけど結局勝てずだったかなぁ。だけど、出会った頃を思えば成長してたでしょ? どうよ? そんな俺も、今はもうすっかり大人になったよ。どうよ? あの頃と同じ匂いがするのかな?

     覚えてるかな? 父が2匹を連れ散歩に行ったとき、誤ってリードを手から離してしまった事件があったよね? 君たちは山道のほうへ駆けていった。車1台が通れるぐらいのあの道はね、隣の地区に繋がっているけど使う人はほとんどいない。姉と2人で手前のほうまで散策しに行ったことがあるけど、イノシシ避けの笛を持たされたよ。そんな山道へ君たちは駆けていった。2人で競争でもしていたのかい? 追いかけて待っていた父は、あきらめて引き返してきた。2人で先に帰ったら負けみたいな我慢比べ対決でもしていたのかい? 家と外を行ったり来たり。信じて待った。数時間後、宵の口に戻ってきた――クロが。クロだけだった。2人で助け合って情を深めながら戻ってくるみたいな、そんな気持ちはなかったんかねぇ。一応クロのほうが兄なんだから、自由奔放に動きまわった挙げ句「つかれた」「おんぶして」そんなふうにぐずる弟を宥なだめながら、なんとかして2人で帰って来いよ。人間界ではそういう展開がウケるのよ。っていうか俺、「2人」って言うてもうてるがな。何はともあれクロは帰ってきた。よかった、安心したよ。いっぽうジャックは、夜が更け、世を照らす役目を月が太陽と交代しても、まだ戻ってこなかった。ビーグルの血が滾たぎっていたのかな。薫る自然を浴びながら1人自由に駆ける大地は、君の心に何をうつした? 俺が犬なら君と同じだったかもしれない。そんなジャックも、無事に戻ってきた。疾走して失踪してから丸一日が経っていた。おつかれさん、そして、おかえり。2匹とも無事に帰ってきたのは嬉しかったな。

     退屈が敵だった俺にとって、君たちの存在はとても大きかった。習得させたお手やおかわりをいたずらに何度も何度も繰り返したり、ドックフードを投げてキャッチさせたり、両前足を持って立たせて踊ってみたり、待てをどのくらい耐久できるか試したり、いろんな遊びをした。待てに関しては2匹とも優秀で、俺が姿を隠しても君たちはずっと待ってた。ベロをペロペロしながら、ヨダレを垂らしながら、小刻みに前足を動かしながら、ずっと待ってたね。タチの悪い遊びだったな、すまん。かわいかったもんでつい。
     余談やけど、ドックフードのカケラをポロポロと1匹のアリのそばに落としてみた。そしたらね、アリが集まる集まる。アリってすごいな。ヒトには聞こえない何かを発しているのか、テレパシーなのか、分からんけど、1匹だけだったのにみんな集まってすごいなーって感心したわぁ。1匹で運ぶのはギリ無理だろう程度にデカめに砕いて、アリのそばにポンって置いてみたんよ。そしたら動く動く。よたよたと運んでみせるアリの姿に「アリすげーー!」「力つよっ!」って感嘆したわぁ。そんなアリの動線に小石や枝などの障害物を置いて妨害するっていう遊びもしてた。自分で与えといて妨害するって、ねぇー。っていうか「アリの話なに?」って感じよね? 「ドックフード」で思い出したから話したくなって(笑)アリで遊びだしたら暇つぶしの末期よね(笑)。ちなみにドックフードを口にしてみたこともあったけど、ペッペッペッ。ヒトの口には合わんかったね。

     一時期ハマっていた遊びがあった。名付けて「ドキドキ寝起きドッキリ」。リビングの戸窓から犬小屋が見える。眠っているクロもしくはジャックを、起こさずにタッチするというゲームだ。この説明だけだと簡単に聞こえるかもしれないが、かなり至難。鼻が利くうえに警戒心が強いから、物音を立てると目を覚ましてしまう。玄関の引き戸を開け、5mほどの距離を足音を立てず進まなければならない。足音のザザッ、石ころのコトッ、その程度の物音で目を覚ましてしまうのだ。難関だらけ。まず玄関の引き戸ね、あれを物音を立てずに開けるってもの凄く神経集中させたよ。そして足音を立てずそろーりそろーり近付いていく。気づかれやしないかとドキドキしながら、そろーーーーーりと進む。ザザッ…… コトッ…… 何度も何度も失敗したわ。その度に「くそーーーっ!」思うてね。不撓不屈の精神で挑み続けた。秘策を思いついた「裸足」。そして、そのときはきた。
     ビクッ!!
    「いひひひっ」跳ね起きるサマが面白くてね! 笑ったわーー! ふふふ、ニタニタしながら文字を打ち込んでいる今日この頃です。


     年を重ねるにつれ、共にする時間も、口数も、徐々に減っていく。きょうだいなんてそういうものだろう。それは君たちに対しても同じだった。小学生の間は散歩に連れて行ってたけど、やがて渋々となり、中学に入ってからは時々、そして気まぐれになり、高校に入ってからはほぼ皆無。気がつけば完全に親が担っており、ちゃんと面倒をみるという約束はお約束どおり破られた。学校生活ですり減る気力、部活で疲れてるし、友達と遊びたいし、家にいる間はのんびり自分の思うがままに過ごしたい。誰にも干渉されない空間、誰の顔も見なくていい時間が、英気を養っていく。面倒をみるなんてめんどくさい。そんなふうに自分のことばかりだった。だけど、やっぱり触れたくなるんよね。帰宅したときや外気を吸いに出たとき、気まぐれに撫でたり戯れたり。ろくに面倒もみてなかったのに、それでも君たちは尻尾を振りながら迎え入れてくれたね。それが嬉しくて俺は君たちに触れていたんだろうなって、いま思うよ。寝そべる体を撫でるうちにウトウトし始める君たちを、眠りにつくまで撫でるのが俺は好きだった。
     それが当たり前の日常だった。これからもずっと続くとか、終わりがくるなんてことも、考えやしなかった。「当たり前」はいろんなことを、大切なことも、鈍らせてしまうんだな。





     クロ

     君との別れは突然だった。
     中学3年のときだった。休みの日、俺は自分の部屋にいた。「おーい!」父に呼ばれ、階段を下りた。2匹を散歩に連れて行った父が玄関に立っていた。

    「クロがしんだ」

     はっ?

     そんなことを冗談で言うわけがないから、事実であることは理解したよ。でも不思議なもので事実ではない気がした。いや、そう思いたかっただけなのかもしれない。だって、あまりに突然だったから。散歩の途中で倒れたらしい。父曰く、散歩序盤から息切れしていたという。ジャックだけを連れ、父は帰ってきた。一輪車を押してクロがいる場所に向かった。

     クロ

     寝そべる君を撫でた――。

     目の前の作業に意識を集中させた。クロを一輪車に乗せ、自宅に戻った。埋葬することにした。敷地内にある山を切り拓いたような雑然とした畑地に、父とショベルで穴を掘った。掘った穴にクロを寝かせた。土を被せ、花を添え、手を合わせた。無言のまま作業を終えると、すぐさま自宅の階段を上り、ドアを閉め、部屋にこもった。殺していた感情が一気に吹き返した。泣いた。自分でも驚くほど泣いた。物心ついてこんなに泣いたのは初めてだと思うぐらい咽むせび泣いた。こんなにも悲しみの涙があふれるなんて思わなかった。
     埋葬する直前、ジャックのそばにクロを寝かせた。ジャックは何も言わず何度も何度もクロの匂いを嗅いだ。一気に込み上げてきた涙を、必死で堪えた。埋葬作業をしている間、ジャックは吠え続けた。聴いたことのない怒りがこもったような声で吠え続けた。いちばん心が泣いた瞬間だった。ジャック、君の心にはちゃんとクロがいたんだな。こんな別れ方になってしまってごめん。ヒトは失って初めて気づく、本当にそうなんだな。ごめんよ、クロ――。





     ジャック

     君との別れは突然だった。あの日は俺にとって特別な日だった。
     高校3年の2月、人生初の彼女ができた。彼女は動物好きで犬を飼っていた。人間よりも動物のほうが好きなんだろうなって、どこかそんな雰囲気がにじみ出た人だった。そんな彼女が初めてウチに来る日、2月14日。ジャックに会わせるのが楽しみだった。いつもと同じようで違う新しい朝、起床して階段を下りた。すると、玄関に姿を現した母。

    「ジャックがしんだ」

     はっ?

     なに言ってんの? 昨夕、俺は撫でたよ。信じられなかった。だって、あまりに突然すぎて。昨日までおったのに――。
    「見んほうがいい」
     悲痛な顔で母は言った。
     ジャックがいる場所に向かうと、タオルケットに包まれ、姿を隠してあった。何があったのか、どんな姿で、どんな顔をして眠っているんだろう。いろんな想像をした。見んほうがいい――。見れなかった。

     ジャック

     寝そべる君を撫でた――。

     布の上からは君の体温も、サラサラした毛並みも、感じやしない。母はすでに業者へ連絡を済ませ、数時間後に君は引き取られていった。母は何を見たのだろう。こんな役目を母に担わせてしまったこともまた、心苦しかった。
     ジャック、捨て犬だった君はウチに来て幸せだった?もしも他の人に拾われてたら……って思ってしまうね、どうしても。ごめんよ、ジャック。気づいてやれなくてごめん。自宅の階段を上り、ドアを閉め、部屋にこもった。泣いた。咽び泣いた。悲しみの涙があふれた。あのときと同じだった。俺は何も変わっちゃいなかった。
     ヒトのなかにはね、いっとき抱いた悲しみや後悔で、心を入れ替え反省した気になって、自分は変わったって思い込むヒトがいてね。変わるってそんなに簡単じゃないのに。ずっと思い続けて、何年も積み重ねて、それでやっと変われるのに。そもそも変わったかどうかなんて自分で分かるものなのか、自覚があるうちはまだまだ変われてはいないのかもしれない。俺がそうだ。クロがしんだとき、深い悲しみを抱き、あんなに咽び泣いたのに、結局変わっていなかった。ちゃんとジャックの面倒をみようって決意を改めたのに、それは一時的な悔悟の念による情動だった。高校生になってますます遠のいた。自分のことでいっぱいいっぱい、命を育むのにそんな言い訳は通用しない。ただめんどくさかっただけだ。結局同じだった。気の向くままに撫でたり戯れたりするだけ。気づけばやってきた「当たり前」。そしてまた繰り返す、同じ悲しみを、後悔を。



     そうやって積み重ねてきた――。





     動物を見て
     いちいち君たちを思い出したりはしない

     散歩に連れている犬を見て
     いちいち君たちと重ね合わせたりはしない

     君たちのことを考えない日はいくつもある

     だけど 時々思い出しては

     楽しくなったり  
     ほくそ笑んだり
     懐かしんだり

     悲しくなったり
     悔やんだり
     憂いたり

     それもずっと繰り返してきた

     そして今 ここにいる

     もう君たちに何もしてあげられないけど
     忘れないことはできる

     それは引きずるとかではなくて
     前向きな意味ね

     君たちが教えてくれたこと忘れないよ

     もしも1つだけ願いが叶うとしたら
     過去にタイムスリップして
     クロとジャック
     そして俺
     3人が一緒に写った写真を1枚残したい

     そんな想いもいつか忘れて
     そのときにはきっと
     ただただ私欲を願うんだろうな

     俺はそんはヒト



     そんな俺だけど

     君たちに伝えたいこと

     届かなくてもいい

     それでもどうしても伝えたいこと

     生きていたときに伝えられなかったこと




     一緒にいてくれて

     ありがとう



     ろくに面倒もみてなかったのに
     懐いてくれて

     ありがとう



     それだけはずっと忘れない



        *   *   *



     始まりは子どものわがままだった

     ちゃんと面倒をみるという約束は破られ
     お約束どおり親が担うことになった

     『責任と義務』

     渋々だったと思う

     帰省したとき
     いつまでも犬小屋を捨てずにいるのは
     なんでだろうって聞いてみたくなった

     けどやっぱりやめた

     きっとそのほうがいい




     忘れないよ

     そこに君がいたってこと






     クロとジャック







     名前は俺が付けた

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    誰かの元気は、誰かを元気にする☀️ 今日もがんばるべ🦦

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