
第八章 若手看護師とセラピストへ。
長い物語にお付き合いいただき、ありがとうございました。病院でのリハビリテーションのサバイバル戦略として、オムツを外して快く一人で排泄できるまでの患者さんとの関わりを書いてきました。みなさん、共感していただけたでしょうか。
少し大袈裟な話に聞こえたかもしれませんが、
リハビリテーションセラピストのリアルな毎日です。
読んでくださった看護師さんへ、
ここでは「ベテラン」看護師がかなり悪役になってしまいましたが、ディスっている訳ではありません。
いつも尊厳しています。
リハビリテーションセラピストには、処置もできないですし、長年の患者さんを救ってきた歴史とプライドはこれまでの日本の医療を支えてきました。点滴や採血などの処置も素早く行えることは素晴らしい能力だと思います。
ただ、マンパワー不足や急変者対応のためか、なかなか患者さんのセルフケアやADLに目が行き届かない時もあります。患者さんの髭は伸び放題、目ヤニは拭かれていない、口腔内は汚染されて痰で満たされている現状もあります。必要最低限の整容が行えていないこともあります。
処置で忙しいとは思いますが、リハビリテーションセラピストはこのようなことを考えているんだなぁと心に留めるきっかけになればと思い、
「ベテラン」看護師さんには悪役になってもらいました。
今日も「ベテラン」看護師とは、違う患者さんの件で戦っています。また別の作戦を練っているところです。笑
看護師さんからも、リハビリテーションセラピストに伝えたいことがあれば、その都度話していただけたら幸いです。
読んでくださった若手のリハビリテーションセラピストさんへ、
自信がないことが多々あると思います。
「まずは、自分を信じてください。
自分の評価、直感を信じてください。」
私たちは、魔法使いではありません。
病院の壁をこわすことも、看護師の人数を二倍にすることも、病気そのものを消し去ることも
できません。
しかし、私たちは「板挟み」になりながら、
患者さんの不快感と、看護師の不安の間で
一本の糸を紡ぐことはできます。
あの日、私が廊下で深呼吸して向き合ったのは、一人の「ベテラン看護師」ではなく、私自身の
「セラピストとしての覚悟」でした。
その覚悟がマイノリティーの諦めからマジョリティーを覆すことにつながりました。
このケースでのリハビリテーションの成果は、
「排泄の自立がいかに、人間の生命力を呼び覚ますか」でした。
それが、全人間的復権につながり自己効力感の向上につながりました。
課題になることは、排泄だけではありません。
若年者ならば復職だったり、配置転換。
どんなADL低下やIADL低下も仕事であるからには
我々セラピストには課せられたミッションが
あるはずです。
この物語を読み終え、明日また病院の重い扉を開けるあなたが、どうか孤独でありませんように。
あなたのその自問自答が、いつか誰かの家族の涙を笑顔に変えることを信じています。
当たり前のことを当たり前に行うために、私は戦いました。患者さんの笑顔、家族の嬉し涙、その輝きを知ってしまったら、もう「知らん顔」をすることはできません。
疲れてもいい、悩んでもいい。
しかし、一人で戦わないでください。
この物語を読み終えたあなたが、明日誰かを味方につけてたった一人の「1メートルの世界」を変える一歩を踏み出すことを心から信じています。
「ベテラン」看護師の「陥落」は、私の勝利ではなく組織のリスクへの過度な恐怖からの「解放」でした。
あなたの実感による評価こそが、患者さんや家族が迷った時の「心の羅針盤」になるはずです。
改めて伝えさせてください。
「あなたは一人じゃない。
味方を探して、リスクと戦いましょう。」
完
収録マガジンはこちら。