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宇宙が1番安全な場所だった



    床板がギシッと鳴る。

    お願いだから、鳴らないで。

    私は息を止め、床下で身を縮めていた。

    薄暗い空間。
    湿った土の匂い。

    頭上では男たちの足音が響く。

    床はところどころペコペコと沈み、
    小さな穴まで空いている。

    この穴から息遣いが漏れたら。

    少しでも気配が伝わったら。

    私は終わる。

    殺される。

    いや、正確には違う。

    監禁され、殴られる。

    それを私は知っていた。

    なぜこんなことになったのか。

    思い返せば、きっかけは本当に些細なことだった。

    娘と飛行機に乗ろうとしていた。

    指定席へ向かうと、
    私たちの席には知らない女性が座っていた。

    綺麗な人だった。

    外国語を話していて、
    何を言っているのか分からない。

    私は笑顔で声をかけた。

    「席、間違えていませんか?」

    たった、それだけだった。

    女性の表情が変わる。

    何かを叫び始めた。

    意味は分からない。

    でも、その怒りだけは伝わってきた。

    すると後ろから数人の男が現れた。

    女性の仲間だった。

    その瞬間から、私は追われることになった。

    ・・・

    床下では見つかりそうになり、
    私は家へ逃げ込んだ。

    ようやく安心できる。

    そう思った。

    テレビでは楽しそうな番組が流れている。

    ついさっきまで命からがら逃げていたのに
    私はそのテレビを見て、少しだけ笑ってしまった。

    「こんな状況なのに笑えるんだ。」

    自分でもおかしかった。

    その時

    突然、後ろから腕を掴まれた。

    ゾッとするほど冷たい感覚。

    振り返る。

    あの男たちだった。

    家ですら、安全な場所ではなかった。

    私は力いっぱい腕を振り払う。

    そして迷わず吹き抜けの窓へ向かった。

    飛び降りる。

    「あぁ、終わる。」

    「もうこんな現実は嫌だ。」

    「苦しい。」

    覚悟した。

    それでも私は諦めきれなかった。

    落ちながら両手を必死にバタバタさせる。

    すると....

    飛べた。

    私は空を飛んでいた。

    どこまでも。

    男たちも追いかけてくる。

    もっと高く。

    もっと遠くへ。

    必死に羽ばたく。

    雲を越えた。

    空を越えた。

    気付けば私は宇宙にいた。

    男たちはそこまで来られなかった。

    ようやく静寂が訪れる。

    宇宙は真っ暗だと思っていた。

    だけど違った。

    ピンク。

    紫。

    青。

    黄色。

    色とりどりの光が広がり、息をのむほど美しかった。

    遠くには、小さな星が集まっている。

    一つ一つを見れば、決して強く輝いているわけではない。

    それでも集まることで、あんなにも美しく見える。

    私は、その星たちを目指した。

    現実へ戻れば、また追われる。

    また探される。

    監禁され、殴られる。

    そんな世界には帰りたくなかった。

    宇宙には誰もいない。

    ひとりぼっち。

    なのに、不思議だった。

    人生で一番安心できた場所が、宇宙だった。

    ・・・

    目が覚めた。

    これは私の夢。

    鬱病になってから長くリアルな夢をたくさん見る。


    夢だとわかっていても胸は苦しく、
    あの恐怖だけは今でも鮮明に残っている。

    でも、夢の中で見たあの星たちは、今でも忘れられない。

    一人では弱く感じても、人は誰かと支え合うことで輝ける。

    そんなことを、夢の中の宇宙が教えてくれた気がした。


    #創作大賞2026
    #オールカテゴリ部門

     
     

    ねる

     
     
    31歳|娘と人生第二章スタート🌷 未婚シングルマザー→結婚→離婚 うつ病、DV、モラハラ、たくさん遠回りしてきました。 それでも、幸せになることは諦めたくない。 離婚、子育て、美容、恋愛、心のこと。猫。 31歳、人生やり直し中。 等身大の日々を綴っています。

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