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Photo byinagakijunya

【゚ッセむ】氎飲み鳥が揺れる時――父の日に思う事



    氎飲み鳥をご存知だろうか。
    シルクハットを被った、赀たたは青などの液䜓が入ったガラスの鳥。

    長いクチバシはフェルト補で――目の前に氎を入れたコップを眮いおやり、ちょんず頭を抌しお氎に付けおやれば、気化熱を利甚しお氎がある限り動き続ける、少し気の利いたむンテリア。

    今でも東急ハンズやAmazonで売っおいる。
    でも、䜜りが荒くバランスが悪かったりしお、なかなかちゃんず動かないものが倚いので、ご泚意を。

    私の父の曞斎の――埮劙な蚀い方になるが、私の血瞁䞊の父であり、法的には他人の父の――曞斎には、芋事なバランスで実によく動く赀い氎飲み鳥があった。

    幌い私はよく、よちよちずコップに氎を汲んできおは、その頭を抌しお、揺れる鳥の動きを、じっず芋おいた。

    ガラスの䞭を赀い液䜓が動いおいく姿が矎しく、動きそのものもナヌモラスだった。

    䜕より、オシャレな垜子を被り、䞋半身が倪く、優しい顔のその鳥は――たたにやっおくる父によく䌌おいる気がした。

    瀟䌚通念䞊はどうか知らない。

    だが少なくずも父は私にずっおは優しい人だった。

    私が起きおいる時にやっお来た時には、必ず悪圹レスラヌや怪獣の圹をしお、私ず戊い、芋事に負けおくれた。

    私が寝おいる間に来お、起きる前に去っおいく事も少なくなかったが、そんな時は必ず、枕元にお土産が眮いおあった。

    TOMYのプラレヌル䞀匏があった時には、本圓に驚いた。奜きだずも欲しいずも蚀わなかったのに、私のためにこの巚倧な高そうなセットを遞んで買っおきおくれたのは、子䟛心に分かっお、嬉しくお飛び回った。

    オモチャではない時も倚かった。
    私が本が奜きだず知っお、グリム、アンデルセン、む゜ップ――ありずあらゆる本が、枕元に眮いおあった。

    排萜た倖囜のチョコレヌトや、子䟛甚の腕時蚈――決しお安くない、ワクワクするようなものを、遞んで枕元に眮いおくれた。

    私が父ず最埌に䌚ったのは、5歳か6歳の頃だ。
    顔は、実は結構憶えおいる。

    私によく䌌おいるず生前の祖母は蚀ったが、私の方が男前だろ、ず笑ったら――憶えおるのず驚いた。

    私はあたり人の顔を芚えないのだが、䞍思議な事に今でも父の顔は思い浮かべる事ができる。

    結局、蚘憶は感情に巊右されるのだろうず思う。
    そしお蚘憶の䞭の実父は、い぀も笑顔だった。

    私に向けおいた顔が、垞にそうだったのだろう。

    その埌、戞籍䞊の父になった人は、本が嫌いで、無口な冷笑家だった。

    実父は動物が奜きで、飌い猫もよく懐いおいたが、戞籍䞊の父は動物も倧嫌いで、猫は捚お、犬は保健所に匕き枡しおしたった。  

    たあこう曞くず実父が善良で戞籍䞊の父はその逆、のような印象になっおしたうが、これはあくたでも盞性の問題でしかない。

    あちらにしおみれば、劻の前の旊那にそっくりな息子など、忌たわしい存圚なだけなわけで――よく殎る蹎るはされたが、それでも高校たでの孊費は出したわけだし、⚪されなかっただけでも感謝すべきではあるのだろう。

    私が逆の立堎だったら、同じ事が出来た自信はあたり無い。

    しかし実際、食べ物の奜みも、趣味も考え方も私の䟡倀芳ずは正反察の人間だったので、子䟛の頃は幎に数床しか䌚話はしなかったし――最埌に二蚀䞉蚀喋ったのは、もう10幎近く前になる。


    ――ずいう事は、母芪ずもそんなものだろう。
    䞀応、事故で入院した時に、母ずはメヌルのやり取りはした。

    「車に蜢かれお入院した。䞇䞀の時は緊急連絡行くからよろしくね」

    「倧倉だね。䜕もできないけど、お倧事に」

    それだけ。
    たあ気楜でいい。

    私はどうやら、育おおもらった恩も感じず18で家を出お奜き勝手に暮らし、結婚もしない倉わり者の攟蕩息子――ずいう感じで芪類䞀同には䌝わっおいるらしく、2ヶ月の入院期間䞭、芪族からは䞀本のメヌルすら来なかった。

    なにしろ、父方の祖父母などは私の存圚すら知らないわけなので、それはそれで党く構わない。

    だが、退院した埌に、あたり事情を知らない母方の芪類から――芪の面倒はちゃんず芋おいるのか――この前、発熱したのに芋舞いすら行かないのか――などず矢継ぎ早に非難の連絡が入ったのには閉口した。

    ああ、すいたせん、ただ足が動かなくお、ずヘラヘラず返事をしたけれど――こっちが足の骚䞉本折った時に――母から聞いおいた筈なのに知らん顔しおいた芪類に薄情者呌ばわりされるのも、理䞍尜な話。

    自分でも意倖だったが、結構クリティカルなダメヌゞを受けお、数日は萜ち蟌んだ。

    自分はそんなに酷薄な悪人呌ばわりされる人間なのか――ず思う気持ちず、結局それも自分が嫌な事から狡く逃げお生きおきたからずいう自省ずが盞たった感情だった。

    だけれど――だけど䞀぀。

    䞀぀だけ、蚀い蚳をさせおいただければ、陳腐な蚀い方だが子䟛は芪を遞べないし、芪を殎っお埓わせる事もできないので――いや実は18の頃はやろうず思えば䜓力的にはできたけれど――ずなるず距離を取るしか無かったしなあ、ず思うのだ。

    あなた方は、子䟛の貯金通垳から勝手に䞀䞇、二䞇ず、コツコツ貯めたお幎玉貯金を䜿っおしたうような芪だったでは、ありたせんか

    そういう人達だったんだから――いたさら芪戚に愚痎ったりせず、ずっずそういう人達でいおくれおいいんですよ

    孊費も生掻費も、18からは私は党く芪に頌らず生きお来たのに、いたさら私に芋舞っお欲しいみたいな愚痎を――芪戚に話したのなら、少し困る。

    怒りでも意地でもなく、わからないのだ。
    芪なるもの――いや、家族なるものずの接し方が。

    そんな――他愛もない事を考えおいお、ふず氎飲み鳥の事を思い出した。

    母が「奜きで䞀緒になったわけじゃない」ず蚀ったくらいだから、実像は碌でも無い人間だったかもしれない、優しかった父。

    その曞斎に揺れおいた、ナヌモラスでお排萜な鳥。

    小孊二幎――家で殎られる床に、い぀か迎えに来おくれるかもしれないず思っおいた。

    迎えには来おくれなかったが、暎力の䞭で生きお来た自分が荒たなかったのは、あの笑顔があったからだった。

    埌幎、東急ハンズで売っおいるのを芋぀けお、買っお来た氎飲み鳥は出来が悪く、子䟛の頃に遊んだ鳥のようには、うたく動かない。

    だから、指で匟いお、揺らしおやる。
    揺れる鳥を芋ながら、思い出す。

    寂しさず、優しさの蚘憶が――
    ずがけた顔のたた、ゆらゆらず揺れおいる。



    おしたい。





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