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高校野球怪談ーー毎週ショートショートnote

    桐野心春🌸

    またや。
    あいつのキャッチャーミットが、
    ど真ん中のストレートを要求してる。

    あの日の甲子園。
    9回裏、2アウト満塁。
    3対0で、俺たちは勝っていた。

    キャッチャーは、
    ど真ん中にミットを構えた。
    「打たせろ。後ろがおる」

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    本当か?
    打たれるだろ。
    エラーするんじゃないか?

    怖かった。
    俺は、フォークに逃げた。

    バットにすくわれたボールは、
    綺麗な放物線を描いて、
    スタンドに消えた。

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    逆転サヨナラ満塁ホームラン。
    真っすぐでよかった。
    周りを信じて、
    投げればよかった。

    俺は甲子園の魔物に取り憑かれた。

    あれ以降
    人生の大事な選択で
    あいつのキャッチャーミットが現れる。

    妻の誕生日デート。
    俺は聞く。
    何食べたい?
    妻は言う。
    なんでもいいよ。

    あいつのキャッチャーミットが現れる。

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    本当になんでもいいのか?
    イタリアン?
    いや、フォークは怖い。
    中華?
    いや!ここは自信を持って!

    「牛丼にしよう。」

    ……打たれた。

    家に帰った。
    今日は妻がご機嫌だ。

    おかえり〜
    ご飯にする?
    お風呂にする?
    それとも、ワタシ?

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    あいつのキャッチャーミットが現れる。
    飛びついていいのか?
    いや、罠か?

    「……寝る。」

    ……打たれた。

    今日は結婚記念日。

    妻は待っていた。
    俺は残業で深夜に帰宅した。

    妻は言う。
    仕事と私
    どっちが大事なの!?

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    あいつのキャッチャーミットが現れる。

    今夜は間違えない。
    妻を信じるんだ。
    魔物は俺の弱い心だったんだ!

    「君が大事だ!!」

    ……打たれた。
    なぜ打たれた?

    妻は言う。
    「普段から周りを信じて
    仕事を任さないから
    大事な日に帰れないんでしょ。」
    ……盛大に打たれた。

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    それ以来、
    あいつのキャッチャーミットは現れなくなった。

    だけど、
    何を投げればいいか分からなくなった。

    おわり


    今回参加させていただいたのは
    田原さんのこちらの企画です。

     
     
     
    文芸部の部室から始まった物語。 言葉の接続回路が少し変な私が、 笑い話に少しの揺らぎを入れて、 言葉を届けます。 たまにつむちゃんに叱られます。 お笑いコンビ「透明ティラミス」も活動中。

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