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Photo bysnafu_2020

天の道~真実の行方17話

    誇羅志 瞳

           2章ー➅

    気分が海へと誘われる陽光のせいもあり、趣味を通した久しぶりの海での物色に、瞳は夢中になっていた。
    どこかに……朽ち果てそうな命(貝殻)はないか、視線は砂浜に注がれ
    そんな物を探し求めていた矢先、異様な物体が瞳の目に飛び込んで来た。

    その形から、一瞬何であるかも容易に飲み込めず、よく確かめる為にと距離を縮めても、理解するまでに時間の間が必要な程だった。
    と、言うより、目にした物に対して理解や判断力の思考回路が遅れてついてくる、、以前、悪夢の中で経験した現象に似ていた。

    そんな筈ない、これは何かの間違いだ!
    「大体、こんな所に、そんな物がある筈がないのだ」
    との否定の要素が大きく、最初、人形のものだと思おうとしたが
    紛れもなくそれは、人間の手だった。

    波の層で出来たこんもりと盛り上がった砂浜の中から、肘から上の部分が
    剝き出しに真っ直ぐに伸び、掌を開らいている状態の手だった。
    白くふやけて、開いた汗腺からうっすらとした産毛まであっては、もう疑う余地もない、、これほど精巧に出来た人形はいない。

    人形位の大きさの……小さな赤ちゃんの手だ!爪まで生えている!
    立ちすくむ瞳だったが、辺りを見回しても人影はなかった。
    「どうしたら……いいの?」
    警察?とも考えたが、
    「信用して貰えるの?」
    「産毛まであるけど本当にそう(人間の)なの?」
    「その(警察)前に、もっと確かめなくていいの?」

    頭がぐちゃぐちゃで、とにかく纏まらない。警察に届ける前に、信用して貰う為に、もっと確かめなければいけない、、気がした。
    砂浜に埋もれたこの手の下は、、繋がっているのだろうか?
    再び、しばし立ちすくんだ。

    「どうする……?」
    ……そうは思っても、体が拒否して動けない。
    確かめる行動に移すには、気持ちの整理が必要みたいだ。
    どんどん、暮れ始めてきた……
    肌の感触を触って確かめるか、砂浜を掘り起こすか、証明するには、どちらかだと思うが、頭同様、身体は尚も硬直して動かない。

    薄暗い闇が、少し恐怖心をも与え始めていた。
    誰かと一緒だったら、それが出来るかも知れない……
    「そうよ、、何も、今、確かめなくても良い事だわ」
    鈍くなっている判断力ながら、その場を逃れる口実が閃き、取り合えず正確に場所を覚えといて……明日でも出直せばよい事だわ
    「明日来て、、まだこれがあったら、その時こそ本物って言える事だわ」

    何度も後ろを振り返り、それがあるのを確かめながら、その場を後にした。
    「不思議だわ、こういう事ってあっていいのだろうか?」
    時間が経つと、瞳自身、半信半疑に思えてくる。出来なかったくせに、、
    「やっぱり、ちゃんと確認すべきだった」と後悔してきた。

    もし波打ち際に打ち上げられたのであれば、それまでの間、岩に叩きつけられ、或いは、海の生物の餌食にされた可能性もあり、それらで仮説を立てれば、下が繋がっている保証はない。
    元々其処に埋められ、寄せては返す波のせいで剥き出しになったとしても
    綺麗な片手だけ……伸びたあんな状態が有り得ない。

    今なら、、しかっりと開かれた掌が、何かを掴もうとしていたような、、
    無念の現われのようにも感じられてくる。
    辺りが暗くなって来た事に恐怖は覚えたが、その『手』自体に不思議とそれ程の恐怖が湧かなかった。なのに何故、確かめられなかったのか。

    さすがに、、砂浜の下の最悪の事態は、その場で想像したりしたけれど、、
    『手』の持ち主は、どんな事情で、あの状態になったのだろうか
    そもそも、あんな所に存在する事態が、おかしな話で。
    頭がいっぱいになって来た瞳だが、夜から降り出した激しい雨に
    「こんなに降ると、、あれは流されてしまうのでは」

    と心配になり、確固たるものに至らなかった自分の行動が余計、悔やまれた
    降り出した雨は、結局、それから幾日も幾日も降り続き
    「あー もうあれは、完全に流されちゃったなぁ」
    と思う諦めが、二度と瞳をその場所へと向かわせなかったのである。

    結果的に、確定に至らないまま、『見た』事実だけが出来あがってしまった形の砂浜体験は、後から、ゆっくりと掘り起こしてみても、とても理屈で割り切れるものではなかった。そもそも、その場で確かめなかった事で、帰ってすぐから、半信半疑に陥ったりしたものだが、それを最後まで確かめずに済ませた自分の行動が、今を以って、瞳は腑に落ちなくなって来ていた。

    あの時、緊迫した何かが欠けていた、、いや、それを与えられなかった、と言う方が相応しいような気がしていた。
    自分の『確かめる』という気持ち以上に、『行かせない』とする自然の力の方が強く働いていたような……気がしてならなかった。

    あの砂浜体験は、自分に『見せる』という、その為だけに作られた実在しないもの、、その内、こう考える方が、いとも簡単に成り立ってしまうと思えて来た。理屈で割り切れない何かは、そんな発想を生み出し、当初、予想もしなかった方向へと、じわりじわり向きを変え、瞳を動かし始めていたが
    あくまでも非現実的な仮想の下でしかない、、
    瞳は、僅かに残る常識の壁を乗り越えられずにいた。

    #ミステリー小説部門

     
     
     
    目標だった創作大賞2024 小説応募、無事終えました。これからは本来の【ものづくり】の記事や作品UPなど交えながら続けて行きたいです。自然の欠片を素材にした【ものつくり】に勤しむハンドメイド作家です。

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