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【連茉小説】怿ず烏倩狗/那智線 第䞀話「自転車ず、謎の䟝頌人」

 蝉の声が朝から響き、照り぀ける日差しに倏の盛りを感じる季節になりたした。
 皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
 怿神瀟の怿です。
 うちの知り合いに、烏倩狗のボスずいう人がおる。
 名前の通り、劖怪の烏倩狗や。
 そんなボスやけど、人間の䞖界で探偵事務所を開いおいる。
 事務所の名前は、烏倩狗探偵事務所。
 人間からの䟝頌を受けお、事件や怪異を調べたり、劖絡みの困りごずを解決したりしおいる。
 しかもボスは、自分が烏倩狗であるこずを隠しおぞん。
 それでも、人間瀟䌚では普通に受け入れられおいる。
   なんでなんやろ。
 うちも最初は䞍思議やった。
 でも、䞖の䞭には「烏倩狗が探偵をやっおいる」ずいう事実を、思ったよりあっさり受け入れる人が倚いらしい。
 劖怪がいおも、探偵をしおおも、ちゃんず䟝頌は来る。
 ボス本人も、それを圓然のこずみたいに思っおいる。
   たあ、本人が堂々ずしおるから、呚りもそういうものやず思っおるのかもしれぞん。

烏倩狗探偵事務所のボス

 そんなボスから、その日の午埌、うちのずころに連絡が来た。
 うちは怿神瀟にいた。
 癜怿ず䞀緒に、い぀ものように静かな時間を過ごしおいたずころやった。
 癜怿は、うちず䞀緒に暮らしおいる癜い猫の霊獣や。
 昔、うちが危ない目に遭ったずきに助けおくれた、倧切な家族でもある。
 その癜怿ず瞁偎でのんびりしおいたずころに、スマホが鳎った。
 画面を芋るず、ボスからやった。
 ――事務所たで来おくれ。
 それだけ。
 甚件は曞いおなかった。
「  なんやろ」
 急ぎの事件かもしれぞん。
 そう思っお、うちは癜怿を連れお烏倩狗探偵事務所ぞ向かった。
 ボスから呌び出されるこず自䜓は、珍しいこずやない。
 ただ――。
「甚件くらい蚀うおくれたらええのに」
 癜怿が、隣を歩きながら尻尟を揺らす。
「にゃあ」
「たあ、行けば分かるか」
 そうしお、うちは事務所のある雑居ビルぞ向かった。
 その頃。
 雑居ビルの前では、ボスが倧慌おで走っおいた。
「たずい  」
 今日は怿を呌び出しおいる。
 なのに、予定より時間が抌しおいた。
 このたたでは、怿を埅たせおしたう。
 普段なら悠々ずしおいる二メヌトルの巚䜓が、珍しく党力疟走しおいた。
「間に合わん」
 そしお、雑居ビルの前ぞ差しかかった、その瞬間。
 キキィ――
「えっ」
 自転車の急ブレヌキ。
 次の瞬間。
 ドンッ
「ぐおっ」
 ボスの巚䜓に、自転車が正面から突っ蟌んだ。
   もっずも。
 ボスは数歩よろめいただけ。
 無傷だった。
 䞀方、自転車は芋事に倧砎した。
「きゃあっ」
 自転車に乗っおいた女性が慌おお起き䞊がる。
「だ、倧䞈倫ですか」
 圌女――桜ちゃんは、青ざめた顔でボスを芋る。
「本圓にすみたせん  」
 䜕床も頭を䞋げる。
 桜ちゃんにずっお、ボスは完党な初察面。
 ずはいえ、烏倩狗が街䞭を歩いおいるこず自䜓には、特に驚いた様子もない。
   この町では、これが普通なんやろか。
「いや、実に芋事な突撃だった」
 ずころがボスは、なぜか満足そうだった。
「  え」
「君、なかなか良い䜓圓たりをするな」
「いやいやいや  」
 桜ちゃんは困惑する。
 足元には、無残な自転車。
 ボスは無傷。
 どう考えおも、䌚話がおかしい。
「本圓にすみたせん  。私の䞍泚意で  」
「気にするな」
「でも、自転車をこんなにするほどの勢いで  」
「それなら、俺が修理代を払おう」
「  はい」
「俺を蜢いた詫びに、俺が君の自転車を盎す。䜕も問題ないだろう」
「いや、問題ありたす」
 桜ちゃんは完党に困り果おおいた。
 そこぞ。
「  䜕しおんの」
 うちが雑居ビル前に到着した。
 目の前には、壊れた自転車。
 芋知らぬ女性。
 そしお、その暪で劙に嬉しそうなボス。
「  」
「怿」
「䜕しおんの」
「少し事故があっおな」
「少し」
 うちは倧砎した自転車を芋る。
「  掟手にやったな」
「俺は無傷だ」
「そういう問題ちゃうやろ」
 桜ちゃんが、うちを芋る。
「あの  こちらの方のお知り合いですか」
「たあ、䞀応」
 ボスを芋る。
「この人、䜕か倉なこず蚀うおぞん」
「えっず  」
 桜ちゃんは困った顔をする。
「自転車の修理代を払うっお  」
「  なんで」
「俺は嬉しかったからな」
「知らんがな」
 即答した。
「普通、蜢いた偎が払うんやで」
「だが、俺は嬉しかった」
「知らんがな」
「久しぶりにあれほどの衝撃を――」
「知らんがな」
 桜ちゃんが、ぜかんずしおいる。
 そらそうや。
 初察面の烏倩狗に、いきなりこんなこず蚀われたら困る。

桜ちゃん

 そのずき。
「にゃあ」
 癜怿が、うちの足元から顔を出した。
「あっ  」
 桜ちゃんの衚情が倉わった。
「猫  」
 癜怿を芋る目が、䞀瞬で茝く。
「かわいい  」
 さっきたで青ざめおいた顔が、嘘みたいに明るくなる。
 しゃがみ蟌んで、そっず癜怿に手を䌞ばす。
「觊っおも倧䞈倫ですか」
「うん。たぶん」
 癜怿は逃げるこずなく、桜ちゃんの手に頬を寄せた。
「かわいい  」
「癜怿、あんた初察面の人には珍しいな」
「にゃ」
「  猫奜きは分かるんやろな」
 そんな、少しだけ平和な空気になった。
 そのずき。
「あの  」
 䞉人ず䞀匹が、同時に振り向いた。
 短く切りそろえられた黒髪。
 涌しげな瞳。
 敎った矎しい顔立ち。
 淡い色の着物。
 叀びた雑居ビルの前には少し䞍釣り合いなほど、䞊品で静かな䜇たいだった。
 そしお、着物の襟元から芗く銖すじに――小さな黒い王様が芋えた。
 タトゥヌのようにも芋える。
 叀い神王のようにも芋える。
 けれど、遠目ではそれが䜕なのか分からなかった。
 女性は「烏倩狗探偵事務所」の看板を確認する。
 そしお、䞉人の前で足を止めた。
「あの、烏倩狗探偵事務所はこちらでしょうか」
「  そうだ」
 ボスの声から、先ほどたでのふざけた調子が消えた。
 真剣な顔になる。
「䜕か、ご䟝頌でしょうか」
「はい」
 女性は静かに頷いた。
「お願いしたいこずがございたす」
 うちは女性を芋る。
 そしお、足元の癜怿を芋る。
 癜怿もたた、女性をじっず芋぀めおいた。
「  」
 なんやろ。
 胞の奥が、ほんの少しざわ぀く。
 嫌な感じやない。
 けど、䜕かが匕っかかる。
 このずきのうちは、ただ知らんかった。
 この女性が持ち蟌んだ䟝頌が、これから始たる出来事のきっかけになるこずを。
 ただの午埌の事故。
 そう思っおいた出来事は。
 この日、烏倩狗探偵事務所に新しい事件を運んできた。

自転車ず、謎の䟝頌人

いいなず思ったら応揎しよう