
ダンジョン第11階層【実録】『精神支配の禁呪!絶望の大魔女に挑む異次元おじさんの下剋上がいま始まる!!』
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01:メンタル・コミットメント〈腹を括る覚悟〉
中小ギルド(中小企業)が慢性的に抱える「人手不足」。
それは単に労働力としての駒が足りないだけではない。
「自ら泥を被り、メンタル・コミットメント〈腹を括る覚悟〉を取る者」
圧倒的に欠如しているという本質的な闇が存在するのだ。
俺が入団したこの魔導指導学校(資格学校)も例外ではなかった。
若きエリート魔導師たちは、魔導板(PC)を駆使して効率よく仕事をこなそうとする。
反面、少しでもリスクのある業務からは全力で逃げ回っている。
とくに、近年生還率が低迷している。
「突破攻略策(試験対策)」は、誰もが恐れる。
呪われたクエストだ。
大魔女の怒りを買うことを恐れ、皆が責任の押し付け合いをしている。

だが、銅貨1,100枚の俺。
この入団直後のモブ・モラトリアム期間(仮初の安息期)にポジティブな印象を残さなければならない。
そうしなければ、未来はない。
虚勢でもいいから手を挙げる。
そこから1%の生存確率が生まれるのだ。
「誰も責任を取らない体質……」
「そこにこそ、俺の勝機がある」
魔導女師たちが嫌がる突破攻略策。
全責任を俺が取ると宣言する。
大魔女も喜んで任せるのではないか。
俺は一か八かの大博打に出る覚悟を決めた。
02:ステータス・アノマリー・スキャン〈魔法状態検知〉
大魔女はすでに俺のことを見切っている。
この最悪の状況を反転させる。
「YES」と言わせるための絶対的な切り札が必要だった。
俺は執務の間。
半径5m以内には誰も近づけない大魔女の絶対領域を遠巻きに観察していた。
どんな些細な情報でもいい。
見つけなければ俺の明日はない。
そんな時だった。
魔導指導団長であり、万年窓際の山本が、大魔女に向かってふらふらと歩み寄ったのだ。
「梅木さぁ、突破攻略策の担当、どうする?」
……………………あれ?
あれ……あれ…………あれ?
少し声が上ずっていた。
そのフランクな話し方は、即死レベルの物理攻撃に等しい暴挙だ。
ざわ……………………ざわ……………………!!
周囲の空気が一瞬で凍りついた。
しかし、大魔女は特に怒ることもなく普通に応答している。
俺は自分の認識が根本的に間違っていたことに気づいた。
俺はすっかり染み付いてしまった加齢臭を気にする。
時折、自分のワキに鼻を近づけてクンクンと嗅ぐ。
底辺特有のルーティンを挟む。
全神経を集中させた。
「フゥ……匂わないな」
「ヨシ。発動しろ……」
ステータス・アノマリー・スキャン〈魔法状態検知(異常な状況把握)〉ッ!
目を血走らせた。
一言一句の会話と周囲の空気をスキャンする。
そこから導き出された答えは一つ。
山本と梅木は「先輩後輩」。
もしくは「同期以上」の強固な関係性だということだ。
窓際ポジションの維持も。
タメ口も。

すべて合点がいった。
先日、鶏めしを奢っておいて本当に良かった。
心の中でガッツポーズを取る。
団長に推薦させれば、勝算はある!
03:エモーショナル・ハック・プロファイリング〈深層心理解析魔法〉
光が見えてきた。
まだ不確定要素が多い。
俺は学校内の雑用を自ら買って出た。
度々執務の間に足を運び、団長に矢継ぎ早に話しかけた。
結婚指輪。
定時帰宅。
若い女性への無関心。
これは愛妻家………………?
いや、恐妻家か……………………?
俺は唯一会話が可能な指導係の水谷先輩に聞いた。
定時後の団長への仕事の依頼について探りを入れた。
「定時以降は絶対ダメ」
「そう決まっているの」
間違いない。
団長に夜の飲みに誘ってカマをかけると渋った顔でこう答えた。
「それは無理かな」
「怖くてそんな事できないよ」
やはり、恐妻家だ。
俺は翌日。
再び「太田屋」での連日の供物献上(ランチ接待)を敢行した。
同じ個室で同じ鶏めし御膳を頬張る団長に対し、俺は次なる泥臭い魔法の詠唱を開始する。
「喰らえ……………」
『エモーショナル・ハック・プロファイリング〈深層心理解析魔法(ただの世間話と貢ぎ物)〉』ッ!
「実は、父が母に初めてプレゼントを贈りたいらしいんですが……」
「団長は奥様に何をあげたら喜ばれますか?」
突然のクエスト(仕事)以外の相談に拍子抜けした団長。
ポロリとこぼした。
「丸越の地下のセブレって店のモンブランだな」
ヨッシャ!!
翌日の昼休み。
俺は猛ダッシュでそのモンブランをゲットした。
そして夕方、山本の目の前で大げさなオーバーリアクションを取りながらつぶやいた。
「せっかく買ったのに、母親がモンブラン嫌いだったとは……」
「トホホ!」

「そうだ、奥様が好きでしたよね」
「もらっていただけませんか?」

『おい、おい』
『見え透いた三文芝居だ ワン!』
『ただのキモいおっさんのワイロだ ワン!』
『バレバレで痛々しい ワン!』
精神世界でツンが容赦なく、噛みついてきた。
団長は渋りつつも口元を綻ばせる。
「行き場所がないなら、しょうがないよね」
ニヤニヤしながら、受け取った。
泥臭いアナログの『物理刃』が、ついにターゲットの懐を完全に抉り開けた瞬間だった。
貢ぎ物(ワイロ)という名の波状攻撃でな。
04:サクリファイス・ディール〈背水の直訴〉
翌日、団長の機嫌は目に見えて上々だった。
恐妻の機嫌が取れたのだろう。
夕方、俺は満を持して切り込んだ。
「今年の突破攻略策(試験対策)」
「去年と同じやり方で誰もやりたがらない」
「責任を持って私にやらせてもらえませんか?」
「いつもお世話になっている団長のお役に立ちたくて」
団長は少し考えた後、と頷いた。
「どうせなり手がいない」
「やる気のある人でいいか」
能天気な団長で本当に助かった。
電子録(デジタルデータ)や瞬刻の遠話(チャットツール)で済まそうとする。
若手魔法師団たちには決して真似できない。
自分の足で稼ぎ、泥臭い人間関係の機微を突く。
相手の懐に入り込む。
これぞ圧倒的なアナログの勝利である。
程なくして、団長が大魔女に話しかけた。
「梅木さ、対策する人が見つからない」
「異次元おじさんが名乗り上げてくれた」
「やってもらおうかと」
執務の間の空気が、急激に5度近く下がった。
大魔女は想定外の名前に戸惑いを隠さない。
冷酷な視線を俺に向ける。
ダメか………………。
心が折れかけたその時。
「……分かった」
「異次元おじさん呼んで……………」
俺は初めて、大魔女の絶対領域へと足を踏み入れた。
緊張と極度の寒さで心臓が凍りつきそうだ。

「あなた、どうやったら今よりも生存率が20%上がるか提案しなさい」
「それで決めるわ」
ドサッ……………………………!
まさかの首の皮一枚残った。
だが、その直後に死刑宣告が下される。
「ただし、明日の夕方までに提案しなさい」
与えられたタイムリミットは、わずか24時間。
何の権限も情報も持たない銅貨1,100枚の異次元おじさん。
生存率20%アップの具体策を明日までに叩き出せというのだ。
俺の顔が一層険しく歪んでいく。
ズキズキと痛むこめかみの拍動が教えてくれた。
泥水をすする下剋上の戦いは、さらに絶望的なフェーズへと突入していく。
次回予告:【ダンジョン第12階層】
大魔女から突きつけられた「明日までに生存率20%アップ」という絶望的な無茶振り!
退路を完全に断たれた異次元おじさん。
極限状態の中で狂気のアナログ魔法にすがりつく!
誰も寄り付かない地下書庫の闇に眠る「過去の遺物」……。
スマートな若手魔導女師たちが嘲笑う中。
一発逆転を狙う泥臭き物理刃が火を吹く!
「おっさん、ついに脳みそがショートした ワン!」
絶体絶命の魔境サバイバル、絶対に見逃すな!
最後までお付き合いありがとうございます。
【迷宮の深淵へようこそ】
この「クソゲー(社会)」から強制ログアウトさせられた、銅貨110枚(時給1,100円)スタートの男の生存戦略。

《後述余談》
私の最近の理不尽は、割と行く友人とのランチでトンテキ定食を頼むも肉の大きさが1.5倍(※個人劇見解)近く違うという絶望!
味噌汁の卵が具沢山のプレートが私ではなく、友人だったこと。
皆さんの最近一番の理不尽をこっそり教えてくださいね。
覚悟がある奴だけ、次のページをめくれ。
まさにこのダンジョンへの現在の最下層までの探索が一気にしたい冒険者はこちら👇️👇️
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