
サービスの磨き方 [第6回] そもそも「サービスサイエンス」って何だろう?
「サービスサイエンス」の定義
さて、いよいよ今回から「サービスサイエンス」の話を書いていこうと思います。
「サービスサイエンス(Service Science)」を一言で言うと
「勘や経験に頼りがちだった『サービス』を、科学的・工学的に分析して、より価値の高いものにしていこう」
という学問分野のことです。
正式には、SSME(Service Science, Management, and Engineering)と呼ばれ、2000年代半ばにIBMが提唱したことで世界的に広まりました。
もう少し具体的に説明します。
これまでのサービス業(接客、飲食、ITサポートなど)は、「個人のスキル」や「おもてなしの心」といった抽象的な要素に依存してきました。
しかし、それでは以下のような問題が起こります。
人によってサービスの質がバラバラになる(「[第4回]『情報転写モデル』でサービスを考えてみる」でも触れています)
効率化が難しく、生産性が上がらない
「何が成功の鍵だったのか」が客観的に説明できない などなど
これらを数学、心理学、工学、経営学などの視点からデータ化・可視化することで、「再現性のある勝ちパターン」を作ることがサービスサイエンスの目的です。
具体的な実践手順
では、「再現性のある勝ちパターン」を作るには具体的にどうしたらよいのでしょうか?
筆者が考える具体的な実践手順は以下の通りです。
※「期待価値」と「提供価値」については次回説明します
提供しているサービスのプロセスを、サービス利用者側とサービス提供者側それぞれの視点から可視化し、サービス提供者側の「提供価値」(AsIs)を整理する
各プロセスにおけるサービス利用者側の満足度や「期待価値」を調査する
2)をもとに、各プロセスにおけるサービス利用者側の「期待価値」を整理する
3)をもとに各プロセスにおけるサービス利用者側の「提供価値」(ToBe)を整理する
「提供価値」(AsIs)と「提供価値」(ToBe)のGAPを整理し、そのGAPを埋める施策を立案して実行する
各プロセスにおけるサービス利用者側の満足度や「期待価値」を調査する
満足度が向上していないプロセスについて、改めてサービス利用者側の「期待価値」を整理する
改めて整理したサービス利用者側の「期待価値」とサービス提供者側の「提供価値」のGAPを整理し、そのGAPを埋める施策を立案して実行する
各プロセスにおけるサービス利用者側の満足度や「期待価値」を調査する
7)~9)を繰り返す
各手順の詳細は、あるサービスを具体例として、改めてこの連載の後半で説明させていただく予定です。
次回以降、まずはサービスサイエンスを実践するにあたって必要な基礎知識について整理していきたいと思います。
[CSよもやま話]「陰膳(かげぜん)」のエピソード
ある日、一人の女性がホテルのレストランを訪れました。
その女性は二人掛けのテーブル席に座りましたが、二人分のお水を持ってくるようスタッフにお願いし、テーブルの向かい側に写真立てを置きました。
写真には、女性と同じ年齢くらいの男性が写っています。
不思議に思ったスタッフがさりげなくお話を伺うと、
最近ご主人が亡くなったが、今日は結婚記念日なので、たとえ写真でもいいから二人で食事をしたかった
という思いから来店されたことが分かりました。
そんな女性の思いを知ったスタッフは、自分に何かできることはないか必至で考えました。
そうして実行したのが
写真ではなく、実際にご主人が向かい側の席にいるかのように、テーブルの上にその女性と同じ料理を並べる
という行動だったのです。
その女性客は大変感動し、「天国の主人と一緒に食事ができた気がします」と、涙ながらに感謝を伝えたといいます。
[エピソードはここまで]
この「陰膳」のエピソード、最初に聞いた時はめちゃめちゃ感動して鳥肌が立ったことを覚えているのですが、冷静に考えてみると、「再現性」という意味ではかなり難しいですよね?
この女性客の表情や所持品(写真)から、その背景を察知し、さりげなく事情を聴き出すスキルがないといけない
この女性客にとっての「価値」は何かを瞬時に判断する力がないといけない
「影膳」に関する知識を持ち、それを実行する「自己裁量権」がないといけない
とかなりの条件が整っている必要があるからです。
このエピソードのように、
「マニュアル化できないはずの感動」をいかに再現可能にするか。
これも「サービスサイエンス」が取り組むテーマのひとつです。
ちなみにこの「影膳」のエピソード、実はいろいろなパターン(場所が旅館とか、料理は2名分注文したとか…)があるので、ご存知のパターンと違った場合はご容赦くださいw