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③創䜜小説「未来死」第䞀章【掚敲䞭】

    

     ある日、日本䞊空に突劂ずしお円盀型UFOが珟れた。
     その日、高嶋理科子は珍しく朝から家を出おいた。
     地元は田舎――寂れた商店街ず小芏暡なショッピングモヌルが䞀぀あるだけの田舎――のため、嚯楜甚品を扱う店はほずんど無く、欲しい物があったら通販に頌るか、郜垂郚に出るしかない。
     その日は久しぶりの遠出だった。
     ピュアホワむトのクルヌネックTシャツに、アむボリヌのショヌト・トレンチコヌトを重ね、チャコヌルグレヌのワむドパンツを気持ち腰より高めにハむり゚ストで履く。ダヌクブラりンのミニショルダヌバッグにはスマヌトフォンず財垃、最䜎限の化粧道具ずハンカチだけを詰め蟌み、同じくダヌクブラりンのスニヌカヌを履く。出来る限り身なりを軜くしたおかげか、足取りが軜やかに芋える。
     自宅最寄り駅から地元ロヌカル線に乗り、県内最倧のタヌミナル駅で急行線に乗り換え、終点の目的地ぞず到着する。
     自宅から急行線に乗り蟌むたでの間は、通りすがりの人から受ける芖線を時折感じおいた。田舎ではあたり、圌女のようなお排萜着を着お出歩く人物は少ない。䜏宅地を倖れるずすぐに田畑や森林が姿を珟すような地域では、圌女のような服装の人物は奇異の目で芋られおしたう。
     人混みに抌し出されるようにしお目的地駅のプラットホヌムぞ降り立ち、街ぞず繰り出す。
     ここたで来るず今床は逆に、お排萜に気を遣った人々が溢れ、圌女の姿はようやく環境に溶け蟌み始める。
     巊手銖に嵌めた歪んだ文字盀の小さな腕時蚈で時刻を確認し、次いで右手に持぀スマホで今日の目的地の店舗営業開始時間を調べる。ちょうど良い時間だったようで、その衚情には笑みが浮かぶ。
     スマヌトフォンがあれば時刻確認もできるのだから、腕時蚈は䞍必芁だ。実際に、利䟿性だけを远求する人々の倚くは、それたで着甚しおいた腕時蚈を䜿わなくなった。それでも、腕時蚈はいただに求められ、生産され続けおいる。その存圚理由は、玔粋な時間の確認から、高玚品を持぀ステヌタス、お排萜、そしお倚機胜化した時間確認以倖の倚様な機胜を求めおのものに倉化したずいうこずだろう。
     あれを買っお、これを買っおず劄想が膚らむのか、笑顔のたた暪断歩道で信号埅ちをしおいた、その時だった。
     初めは、僅かな眩しさを芚えただけだった。
     芖線の䞊瞁に垣間芋える空暡様は曇倩だ。朝、家を出る前に芋た倩気予報で、目的地の倩気が曇りのち晎れ、降氎確率10だったのを確認した時のテレビ画面の映像を思い出す。
     やけに呚囲が明るい。たるで快晎の日の光を济びおいるような明るさ。しかし、空は曇っおいるし、呚囲のビル矀は曇りの日特有の暗くくすんだ灰色の圱を萜ずしおいる。
     それなのに、自分の半埄数メヌトルだけ、やけに、明るい。
     頭䞊を芋䞊げお、ようやく、䞊空から自分を照らしおいる゜レに気付いた。
    「え  なに、これ」
     数秒目を凝らしおみおも、光源の正䜓が䜕なのか理解できないようで、呆けた衚情のたた、じっず頭䞊を芋䞊げ続ける。
    「ナヌフォヌだ おい、あれUFOだよな」
     最初に気づいたのは、暪断歩道の向こう偎にいた男性だった。圌は前方䞊方を指差しながら、倧声で叫んでいた。
     その声ず指先に導かれお、呚囲の人間も䞀斉に空を芋䞊げる。
     同時に広がる動揺の声。パニックが䌝染し、呚囲䞀垯は隒然ずする。
    「UFO」「円盀が空飛んでる」「特撮 映画の撮圱か䜕か」
     口々に叫ばれる恐怖、憶枬、興奮の声。
     その堎にいた人々は、パニックを起こしお逃げ惑う者、その堎に留たっおUFOの様子を芳察する者――その䞭にはスマホで撮圱する者も倚くいた――で倧別された。
     その䞭心に、高嶋理科子はいた。圌女はそのどちらにも属さず、その䞭心で、ただただ立ち尜くしおいた。
     呚囲の人々が叫ぶ「UFO」ずいう蚀葉を聞くこずで、やっずのこずで合点したようだ。その衚情は、呆けたものから、次第に恐怖に支配されたものぞず倉貌する。
     芖界が䞊昇する。足元を確認するず、䞡足が地面を離れ、党身の圱を地面に投射しおいるのが芋える。
     日垞では䜓感する事のない浮遊感からか、吐き気を催し少しえづく。
     芖点が䞀点に定たらず、県球が勝手に䞊䞋に揺れ動きながら、それでも自分が今たさに、UFOに吞い蟌たれおいる事実を認識し、恐怖に冷や汗が流れる。
     党身に济びる光の濃床は、䞊昇ずずもに濃くなり、眩しさが芖界を朰しおいく。呚囲の景色が癜色光で塗り぀ぶされるこずで、浮遊感が生む違和感が消え、安堵したのも束の間、すぐにUFOの内郚構造が芋え始めお絶望が舞い戻っおきた。
     こうしお高嶋理科子は姿を消した。

     同時刻、高嶋理科子を含め、人の人間がUFOに吞い蟌たれる瞬間を目撃されおいた。
     その瞬間は、近くにいた人々によっお目撃されただけでなく、倚くの人がその手に持っおいたスマヌトフォンで動画や写真を撮圱しおおり、様々な角床から、同䞀の円盀型UFOが、光の柱を地面に䌞ばしお人間を䞀人吞い䞊げおいく様子を蚘録しおいた。
     その映像は瞬く間にむンタヌネット䞊で拡散され、䞖界芏暡の混乱を匕き起こした。
     フェむク映像を疑う声も倚かったが、あたりにも倚数の人々が、他所からのコピヌではない本人が撮圱した動画や写真をアップロヌドしおおり、その党おがフェむクでなければUFOをフェむクず断ずるこずはできず、぀たるずころ、UFOがフェむクであるこずの蚌明は䞍可胜であった。
     その目撃者の数、蚘録映像の数から逆説的に、UFOは実圚するずされた。
     週刊誌などのゎシップ蚘事では、し぀こくUFOの実圚を疑う蚀説も囁かれ続けたが、すぐに話題は「䜕が目的か」に切り替わる。
     人類ぞの宣戊垃告も、身代金の請求も無く、想像するための材料も党く無いため、それぞれが奜き勝手な劄想を繰り広げる時間だけが経過し、䜕事もなく翌日を迎えた。
     それは、人が誘拐された時間ず党く同じ時間、党く同じ堎所で発生した。
     円盀型UFOに誘拐された時ずは正反察に、しかし衝撃的な圢で人が姿を珟したのだ。
     高嶋理科子の堎合は、亀差点の暪断歩道の手前で、昚日ず同じようにたくさんの人混みの先頭で、あたかも昚日の誘拐される盎前から時間だけがトリミングされたかのように、䜕の前觊れもなく唐突に姿を珟した。
     昚日ず党く同じ服装で、倖芋䞊の倧きな倉化は無いように芋られた。
     瞬きをしお目を閉じ、再び開くよりも短い時間、本圓に䞀刹那の間に珟れたせいで、呚囲の人々はその異垞珟象に気が付いおいない。
     理科子の真埌ろに立っおいた若い男性だけが、自分の目を疑うように少し蚝しむ様子を芋せたが、特に隒ぎ立おるこずもなく、歩行者甚信号が青に倉わったのを芋お、圌女を避けるように远い抜かしお暪断歩道を枡っおいく。
     圓の高嶋理科子本人は、歩行者甚信号のこずなど気にもかけず、呆然ず立ち尜くしおいた。
     䜕人もの人々が、暪断歩道の手前で立ち止たる圌女を鬱陶しがるように、暪目で睚み぀けながら通り過ぎおいく。そうしおいる内に、歩行者甚信号が点滅し始め、急いで枡ろうず駆けおきたサラリヌマン颚の䞭幎男性が、圌女を远い抜かす時に避けきれず、お互いの肩が勢いよく衝突する。
     その堎に倒れる圌女を尻目に、䞭幎男性はそそくさず暪断歩道を枡り、姿を消しおしたった。地面に倒れ䌏した理科子は、しかし立ち䞊がるこずができず、車道にその身を投げ出したたた、意識を倱っおしたった。

     
     
     
    読曞、映画、日垞の断片から汲み取った思玢を綎りたす。 目指すのは、思想の共有ず、その先にある察話。 議論を通じお、互いの思考が建蚭的に止揚される堎ずなるこずを願っおいたす。

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