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​In my eyes #風まかせ文芸部

    約1100字・ショートショート


    瞳の中の星は多ければ多いほどいい。

    だって、アイドルや雑誌のモデルさんはたくさんの星を瞳の中に浮かべているから。

    瞳の星は感情に連動して浮かび上がる。興奮したり感動したりすれば、瞳の中の星の数がどんどん増えて、最高で九個になる。

    だから私たちは皆、日常の中にエモを求め、常に瞳の中に星を絶やさないよう必死なのだ。

    星を増やすには感受性が豊かでなければならないらしい。

    だから私は毎日、感情を揺さぶる努力をした。泣ける映画を見て、猫の癒し動画を見て、恋愛漫画を読んで、必死に星を増やそうとした。

    でも、どう頑張っても最高で七個止まり。

    同級生のミカは常に九個の星をきらきらと輝かせていた。彼女はその豊かな感受性で、いつも皆の中心にいた。

    卒業後、同じ会社に入ったミカは顧客の心に深く入り込む感情移入の激しさを買われて営業職に就いた。私は星が少なかったからなのか、データ整理の地味な部署に配属された。

    しかし、ミカの営業成績は伸びなかった。

    彼女は顧客のクレームを聞くたびに、瞳から九個の星をキラキラと溢れさせる。過剰に共感しすぎてしまい商談をまとめられない。顧客はミカの感情の波についていけず、ドン引きして離れていった。

    ある日、取引先から大きなクレームが舞い込んだ。対応に疲弊したミカは、泣きながら私のデスクにやってきた。

    「もうダメ。こんなの耐えられない!」

    彼女の瞳の中で九個の星がキラキラ、いやギラギラと輝いていた。それは星が寿命を迎える寸前の最後の輝きに見えた。

    「まずは落ち着いて。最初から整理して話してみて」

    私は冷静に淡々と対応策を提示した。

    私の瞳には星は三個しかなかったから、ミカの気持ちなんて理解できなかったけど、ミカも大変なんだなと、少しだけ同情した。

    翌日、社長に呼ばれて、こう告げられた。

    「君をミカの後任にする」

    「私がですか!?」

    「彼女は感受性が高すぎる。あれではいつか超新星爆発を起こしてしまう。ああいう人間は営業に向かない」

    驚いて社長の目をマジマジと見つめると、社長の瞳は星が一つも浮かんでいなかった。

    「気づかなかったか?」

    社長は静かに言った。

    「瞳の星は感受性の豊かさではない。感情の燃費の悪さを示しているんだ」

    ミカのことを頭に浮かべ、その言葉に深く納得した。

    「九個の星を持つ者は、一つの刺激で九倍の感情を浪費する。星がゼロの私は、感情を完全にコントロールできる。だから私は社長なんだ。そして、三個の君は、ちょうどいい『鈍感力』を持っている。我が社には君のような人材が必要だ」

    私が必死に求めていた九個の星は社会人にとっては欠陥だった。

    ただ、社長の言葉を素直に嬉しいと思えない私は、あの九個の星の輝きが、世界で一番美しいと信じているのかもしれない。



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    目からビームにゃん


     
     
     
    ショートショートとか童話とか落語とか声劇台本とかジャンルにこだわらずいろいろ書いてる猫。

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