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誰も呼ばなかった名前 #3つのお題に空想のひらめきを

    でぶにゃん先生

    約700字・ショートショート


    え、私の名前ですか?

    あはは。そうですよね。この首筋を見れば、誰だって理由を尋ねたくなりますよね。

    ​驚かないでくださいね。

    実はこれ、野良だったんです。

    ​ひと月前の夕暮れ時でした。近所の公園でガサガサと枯れ葉を散らして唸っている「名前」を見つけたんです。

    知らないんですか?

    この街では、稀にあるんですよ。

    持ち主が亡くなって行き場を失ったり、あるいは過去を消したくて捨てられた、誰も呼ばなかった名前が、迷い犬みたいに路地裏を徘徊していることが。

    ​覗き込んでみると、なんて読むのかわからない掌サイズの名前が怯えたようにうずくまっていました。

    私は思わず手を差し出しました。

    古い図書館の奥に溜まった埃と、乾ききったインクが混じったような、どこか懐かしい匂いがしました。

    私の指先に、「(`」をそっと寄せてきた名前が超可愛くって。

    ​『おいで』

    ​そう声をかけると、そいつは冷たく湿った感触で私の手首を這い、肩を駆け上がり、首筋にぴったりと吸いつきました。

    まるで、ずっと前から私の血管の一部だったみたいに。

    自分の体温がその名前に流れ込むような不思議な感覚がしました。

    で、思ったんです。

    これこそが、私の新しい名前だって。

    翌日、​役所に名前の変更手続きに行くと、窓口の女性がビックリした顔で鉛筆を落としてました。

    「正気ですか?」

    なんて言うんです。メチャクチャ失礼ですよね。

    でもほら、見てください。この誇らしげな眼差し。

    なんて読むのかは知りませんが、このシャキーンとした凛々しさが、気に入ってるんです。

    ​あ、ごめんなさい。

    私の名前ですよね。

    はい。

    竹田(`・ω・´)です。


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    ショートショートとか童話とか落語とか声劇台本とかジャンルにこだわらずいろいろ書いてる猫。

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