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小説『◯◯しないと出られない異世界』第8話「表彰式」【07】異世界脱出――?

     ふ、増えてる……。スキルが!
     しかもただのスキルじゃなくて、固有スキルだ!

    「ほお、『征服特権』とな」

     センチアも、俺の新たに増えた固有スキルに、目を丸くしている。
     俺はセンチアの方に、ワンチャン何かスキルが増えていればと思ったが、まさか俺の方に増えているとは――。

     だが驚いてばかりはいられない――。まだ勝負は終わっていない!

    「ダーリン、おそらくこれが、この異世界を出る鍵ですわ」

    「ああ、きっとそうだ!」

     ミッション進行を促すククルに、俺も力強く頷く。

     ククルは、いつも俺に道を示してくれる――。
     今もククルが、俺のスキルを発見してくれなけば、きっと手詰まりになっていただろう。
     その思いは無駄にはしない――。このスキルで、俺もククルも一切合切、救ってみせる!

     とはいえ――、

    「だけど……『征服特権』って、いったいなんの特権があるんだ?」

     ひとまず俺は、当然の疑問を口にする。

     だって『電撃』とか『火炎』だったら、字面でなんとなく分かるでしょ?
     だけど、今回の『征服特権』って、まるで『無料サービス』とだけ書いてて、その対象が明示されていないインチキ広告みたいじゃないか……。

    「フム。そりゃ特権といえば……、あんな事やこんな事じゃろ」

     頭を悩ませる俺に、センチアがニヤけた顔で言ってくる。

    「あ、あんな事や……こんな事……?」

     魅惑のキーワードに、思わず俺も乗っかってしまう。

    「そうじゃ。あんな事といえば――、そりゃもちろん、チョメチョメじゃろ」

    「ちょ、チョメチョメっすか!」

     センチアのゲス発想に乗っかり、俺も思わずゲスい想像をしてしまう。
     だが、あながち間違ってはいない――。征服者とは、征服地のすべて掠奪する権利があるのだから――。

    「――――!」

     思わぬヒントを得た俺の頭脳が、フル回転を始める。

     すべてを掠奪――。生殺与奪――。人の命も思うまま自分の所有物とできるのが、すなわち征服者……。

    「――――⁉︎ そうか!」

     ゲス発想のおかげで、スキルの意味が分かった俺は大声を上げる。

    「なんじゃ、やかましい奴じゃの」

    「ダーリン、何か分かりましたの?」

     センチアとククルが、俺の顔を覗き込んでくる。
     それに何も答えず、俺は大きく息を吸いながら、不敵に笑う――。

     ヘヘッ、おあつらえむきの舞台になったぜ。
     そんじゃあ、いっちょブチかますとするか。
     俺の――一世一代の晴れ舞台だ!

    「いいかー! 俺はこの異世界の勝者――。すなわち征服者だ!」

     突然の宣言に、二人とも目を丸くしているが、構わず俺は叫び続ける。

    「征服者とはすなわち『王』だ! 今、俺はこの『異世界の王』となったんだ!」

     ヤバイ、厨二病丸出しだが、なんか楽しくなっきたぞ。

    「王には臣民が――、いや『配下』が必要だ」

    「――――⁉︎」

     ククルが目を見開いている。頭のいいお前の事だから、もう気付いた様だな。

    「征服特権として、ククル! 俺はお前を『配下』とする! これでククルは俺の『契約下』に入った!」

    「なんと⁉︎」

     今度はセンチア声を上げる。だがその顔がニヤついているという事は、こいつも俺の狙いが分かった様だな。

    「さあセンチア、俺と契約しろ! これでお前と契約すれば、俺と契約したククルも『込み』で契約だからな!」

    「クククッ、そうきおったか」

     俺の申し出に、センチアが楽しそうに笑っている。これで俺は『勝ち』を確信する。

     じゃあ――、さっさと『手続き』を済まさねえとなんねえな。

    「ククル――」

     そう言いながら、俺はククルの両肩に手を置き、その身を引き寄せる。

    「は、はい……」

     いつもは不敵な面構えのククルも緊張している様子だ。

     あらためて見る超絶美少女っぷりに息を呑みそうになるが、ここは一気にいく。

    「お前はこれから俺の配下だ。その契約をする――」

    「ンッ⁉︎」

     何も言わせないままククルの唇を奪う。
     これが征服者の力なのか、自分でも信じられないほどの強引さだ。

     それに、こんな事が契約になるのかも分からない。
     だがそれでもなぜか俺には、これが男の『ケジメ』だと思えたんだ。

     ククルも抵抗はしてこない。
     生暖かい舌の感触を感じた瞬間、俺たちの体が光の鎖に縛られ、一心同体になったかの様な感覚に襲われる。

    「ホホッ、やりおるの。ほんとに契約しよったわ」

     他人の情事を覗き見る、近所のオバチャンの様なセンチアの声で、俺たちは陶酔から覚め我に返る――。

     どうやらこれで、俺とククルの『主従契約』は成立したらしい。
     安心したせいか、離した唇に繋がった糸が、まるで俺たちを結ぶ鎖の様だ――。なーんて、久しぶりに作家みたいな事を思っていると――、突然ククルに頭を掴まれる。

    「えっ? ――ブベッ!」

     次の瞬間、俺の唇はククルの硬いハイヒールに、キスさせられていた。

    「く、ククル?」

    「私のミッションは、ダーリンとの『奴隷契約』ですからね。まあ、もうすでにダーリンは身も心も私の奴隷ですが、万全を期するために一応、『ケジメ』をつけておきませんとね。ウフフッ」

     そう言って顔の見えないまま、ククルはいつもの様に妖しく笑う。

     ――えっ、俺は『王』なのに、配下のククルの『奴隷』なんですか⁉︎
     いやいやいや、配下の奴隷とか、どんな王なのよ⁉︎

    「ふむ、間もなくワシの固有領域も消えるぞ――。さあ来い、レオよ」

     続けてセンチアが俺の首を掴んで、宙に放り上げる。
     いや俺、征服者なのに扱いひどくねえっすか⁉︎

    「汝、レオよ――。汝を我、『強欲神センチア』の眷属として迎え入れん。これより汝は、我に使役されし『僕《しもべ》』となる――」

     手をかざすセンチアが、高らかに契約を宣言する。

     えっ、ちょっと待って⁉︎ 今、『しもべ』って言いましたよね?
     それは聞いてないんですけど。契約書とか事前に確認させてもらっていいですかー⁉︎

     焦る俺を無視して、センチアは俺を光で包み込んでいく――。

     そして、さらに宣言する。

    「さあ受肉せよ! そして行くぞ、新たなる『出られない異世界』へ!」

     ………………………………。え?


         ◇


     序章『予選:異世界脱出⁉︎』、完結です。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
     続編、第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』は、「小説家になろう」にて掲載中です。

    https://ncode.syosetu.com/n3164in/


     もし作品を気に入っていただけましたら、引き続きお読みいただければ嬉しいです。

     ワナリ

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