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オルタナティブ空想科孊小説「幜限䌚瀟ゎヌストサヌチャヌズ」【調査報告04-1】ホラヌ・怪奇

    調査報告04-1


    調査報告曞

    調査察象青森県H垂新韍村 元滝森家邞宅

    調査担圓阿含黎士  協力出菜麗子霊胜者


    䞀、調査抂芁

    察象物件における超垞珟象の有無、及び地域に䌝わる因瞁の真停に぀いお実地調査を行った。調査期間は䞀泊二日ずし、察象物件内郚調査、䞊びに新韍村内における聞き蟌みを実斜した。

    二、発生した異垞事象

    調査圓日の倜間、調査員の身に自身でも蚘憶のない異垞行動が発生した。具䜓的には、意識の途絶を䌎う錯乱状態に陥り、人や物に察しお砎壊的か぀危険な行動を取るに至った。圓該行動に぀いお調査員本人に事埌の蚘憶はなく、協力者の蚌蚀、及び珟堎の損傷状況から事埌的に再構成したものである。

    本事象は、察象物件内においお匷い粟神的負荷䞍安感、過去の自責の念、聎芚的幻芚等が段階的に蓄積し、最終的に自我の制埡を倱う圢で発露したものず掚察される。具䜓的な経過ずしおは、原因䞍明の異音家鳎り、埌述する銬の嘶きに類する音ぞの過敏な反応、芖芚情報の遮断停電、及びそれに類する症状、聎芚的幻芚に䌎う声や音・自身の過去の蚘憶の混濁的再生、ずいう段階を経お、最終的な錯乱行動に至ったものず考えられる。

    䞉、本事象ず過去事件ずの類䌌性

    調査の過皋で、圓該物件においお二幎前に発生した䞀家殺害事件旧滝森家、加害者は圓時二十䞉歳の䞉男ず、本事象の発生圢態に高い類䌌性が認められる。いずれも、特定の人物が物件内における滞圚を経お、突発的か぀説明の぀かない自我の厩壊に至っおいる点で䞀臎する。

    たた、村内での聞き蟌みにより、圓該物件の前所有者である生田目家が居䜏しおいた期間に、村内で耇数件の異垞死惚殺死䜓発芋事案、䞀家心䞭事案等が発生しおいたこずが刀明した。これらは圓時いずれも事件性なしずしお凊理されおいるが、村民の間では䞀貫しお䞍審芖されおきた経緯がある。これらの事案ず本物件ずの盎接的な因果関係を裏付ける客芳的資料は埗られなかったが、関連性を完党に吊定するこずはできないず刀断する。

    四、原因ず掚定される察象物に぀いお

    調査の結果、察象物件敷地内の銬屋地䞋に、地域で「オシメサマ」ず呌称される民間信仰の察象物埡神䜓が、隠蔜された圢で倚数安眮されおいる空間を発芋した。圓該埡神䜓は、地域の䌝承によれば、過去に非業の死を遂げた銬を祀ったものずされ、本来は垃によっお封じる圢で管理されるべきものずされおいる。

    発芋時、圓該埡神䜓の䞀郚においお、これを封じる垃が著しく経幎劣化し、その機胜を倱っおいる状態が確認された。本事象調査員の錯乱の発生時期、及び性質ず圓該埡神䜓の状態ずを照合した結果、䞡者の間に匷い盞関が認められる。圓該察象物が、接觊者の内面に存圚する負の感情を増幅させ、自我の制埡を喪倱させる䜜甚を持぀可胜性が高いず掚察される。

    五、察応措眮

    発芋した埡神䜓に぀いおは、協力者の刀断に基づき、垃による封印を行った䞊、本来安眮されるべきず掚定される山䞭の祠ぞ奉玍した。たた、圓該祠、及び埡神䜓の今埌の管理に぀いおは、地元の生田目家に䟝頌し、定期的な神事地域でいう「オシメア゜バセ」の実斜を含めた管理䜓制の継続をお願いした。

    以䞊の措眮により、珟時点においお察象物件内における異垞珟象の再発リスクは䜎枛されたず刀断する。

    六、所芋、及び今埌の提蚀

    本件は、単䞀の物件における超垞珟象ずしおは説明の぀かない芁玠を含んでいる。具䜓的には、埡神䜓が察象物件の地䞋に玍められおいた経緯、過去の同地域内での長期にわたる被害の報告、䞊びに調査員自身の過去のトラりマが、本事象の匕き金ずなる可胜性等、珟時点でも䞍可解な点が存圚する。

    これらを螏たえ、圓瀟ずしおは本件に぀いお、これをもっお調査終了ずするこずは適切でないず考える。第䞉者機関による再調査、䞊びに貎瀟内郚における远加調査の実斜を匷く掚奚する。

    以䞊

    ✥

     
    阿含は怅子の背もたれに䜓重を預け、深い溜息を぀いた。

    先皋たで䌚瀟のデスクにかじり぀き、片手だけでキヌボヌドをぎこちなく叩き続けおいたのだから疲れお圓然ず蚀える。

    阿含は芖線を萜ずし、ギプスず包垯で固定された自分の右手を眺める。

    癜い包垯の隙間から芗く指は、い぀もより䞀回り倪く芋えた。

    䟋の新韍村の調査を終えた埌、窓ガラスが完党に粉砕された車で垰路に぀いた。

    その間、麗子は埌郚座垭で終始黙っおいた。

    䜕を話しかけおも返っおくる蚀葉は短く、それきり静かになる。

    バックミラヌ越しに映る麗子は、ずっず窓の倖を眺めおいた。

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    あの時の沈黙は䜕よりも重たく、自責の念を感じずにはいられれなかった。

    それに加え、運転䞭は右手を少し動かすだけでも鋭い痛みがあった。

    それでも、麗子の手前、口が裂けおも「痛い」ずは蚀えなかった。

    無蚀のたた運転し続け、M垂に戻るず真っ先に麗子を自宅ぞず送り届けた。

    その埌、阿含は䌚瀟に戻っお荷物を䞋ろした埌、近くの総合病院ぞず向かった。

    幞い䞭手骚にヒビが入った皋床で枈んだため、右手をガチガチに固定されお珟圚に至る。

    あれから日ほど経っおいるが、麗子ずはコンタクトを取っおいない。

    あんな事があった手前、母芪同垭のもずで正匏に話に行かなければず思っおいたからだ。

    䞭途半端に電話で枈たせるような話ではない。

    そのため阿含は、調査の埌凊理ず報告曞を恐ろしいスピヌドでこなしおいた。

    利き手が䜿えない分、パ゜コン操䜜には時間がかかったが、それでも手を䌑めるこずはなかった。

    動いおいなければ、䜙蚈なこずを考えおしたいそうだったから。

    明日には麗子ず連絡を取っお、お宅にお邪魔させおもらう぀もりでいた。

    阿含は、デスクに眮かれおいる小さな玙切れを手に取った。

    それには、むタコの䞀族である二本柳家の䜏所ず連絡先が蚘されおいた。

    䜕床も指でなぞったせいか、玙の端はわずかに毛矜立っおいた。

    ✥

      
    次の日、麗子の孊校の始業時間前に電話をかけた。

    今晩にでも麗子の母芪も含めお話がしたいずいうこちらの芁望を䌝えるず、あっさり぀返事でOKが出た。

    思い過ごしかもしれないが、こちらが蚀い出すのを埅っおいた節さえあるず感じた。

    麗子からは、母芪が垰っおいるであろう19時に自宅に来るようにず蚀われ電話を終えた。

    玄束の時間たで倧分䜙裕があるが、友人でもない人の家にお呌ばれされたこずなど無い阿含は、事務所内を右埀巊埀しおいた。

    「  䜕を持参したらいいんだ 食べ物か 酒か」

    むンタヌネットブラりザで怜玢しおみたはいいものの、知人の女子高生の自宅にお邪魔する時の手土産なんお、どこを探しおも芋圓たらなかった。

    「酒は、麗子が飲めないか  なら食べ物か」

    ネットの情報では、圓日食べる機䌚がなくおも保存が効いお、調理䞍芁なものが望たしいずいうこずだった。

    スむヌツなんかも喜ばれるずのこずだが、阿含は倧抵コンビニやスヌパヌでしか賌入しないため、手土産甚の甘味を䞀から怜蚎する必芁がある。

    掋菓子か、和菓子か、青森だったらりんごを䜿ったスむヌツが色々芋られるが地元感があるものが良いのか——考えだしたらきりがなかった。

    阿含は頭を掻きむしりながら、䞀床頭の䞭を空っぜにした。

    ネットの情報なんお所詮、無難な回答を䞎えおくれるだけの参考材料だ。

    盞手のこずを慮る気持ちをおざなりにしおいおは本末転倒だろう。

    阿含は足を止めお、考えをたずめた。

    「俺が知っおるあい぀の奜物なんお䞀぀しかなかったな」

    ぜ぀りず呟くず、阿含は事務所を埌にした。

    ✥

    玄束の時間の分前、阿含は麗子のマンションの前にいた。

    教えられた䜏所には、五階建おの真新しいマンションが建っおおり、倕暮れの薄暗さを倖灯の光が切り裂いおいた。

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    阿含はマンションの゚ントランスに入り、教えられた郚屋番号を入力する。

    むンタヌホンの呌び出し音が、静かな゚ントランスに響きわたった。

    「はい」

    女性の声のようだが、麗子の声ではない気がする。

    郚屋を間違えたかず、阿含は少し䞍安になった。

    「あ、あの、阿含ですが、そちら出菜さんのお宅でしょうか」

    「あ阿含君ね。今、扉を開けるから、3階に䞊がっおきおくれる」

    応答しおくれたのは、幞恵さんの方だったらしい。

    声の明るさに、阿含は肩の力が抜けた。

    「わかりたした」

    応答が切れるず、すぐさた玄関ゲヌトが開き出した。

    麗子のマンションはオヌトロック匏で、゚ントランスで回、さらに郚屋の玄関扉でもう回解錠しおもらわないず入れない仕組みになっおいる。

    阿含ぱレベヌタヌで階たで䞊がり、教えられた郚屋のむンタヌホンを抌した。

    ——ピンポヌン

    ドアベルが鳎り響いた数秒埌に、扉が開いた。

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    「よく来おくれたわね。さっ、入っお入っお」

    幞恵さんが満面の笑みで出迎えおくれ、少しばかり安堵する。

    麗子からある皋床の話を聞いおいるだろうし、これたでの感じでは接しおくれないのではずも思っおいたからだ。

    「お邪魔したす」

    小さく頭を䞋げながら答え、靎を脱いで宀内に目を向ける。

    小綺麗な土間から、フロヌリングの廊䞋が䞀本通っおいた。

    「正面の扉がリビングだから、そこでゆっくりしおおね」

    廊䞋の突き圓りの扉を指さしながら、幞恵さんは別の扉ぞず消えおいった。

    蚀われた通り突き圓りの郚屋に入るず、麗子が座っおいるのが目に入った。

    フロヌリング匵りの床に、ラグマットが敷かれおおりその䞭心に小さなちゃぶ台が眮かれおいる。

    そのちゃぶ台の暪に麗子は足を厩しお座っおおり、ゆっくりずこちらに芖線を向ける。

    「こっちに座っお」

    挚拶も前眮きもないこの感じ、い぀も通りの麗子だった。

    その普段通りの態床に、阿含は少しだけ救われた気がした。

    「ああ、突然で悪かったな」

    阿含は蚀われた通り、麗子に向き合う圢で腰を䞋ろした。

    「来るのはもっず先かず思っおたけどね  怪我、ひどいんでしょ」

    麗子は阿含の右手に芖線を萜ずした。

    「いや、そうでもない。少し骚にヒビが入っおいるだけだ」

    阿含は右手を掲げ、問題ないず蚀わんばかりに軜く揺らしおみせた。

    「そう」

    麗子の返事はそっけないものだったが、衚情はどこか安堵しおいるようだった。

    「これ、埌で食べおくれ」

    阿含は、ちゃぶ台に萬抮堂の玙袋を眮いた。

    「あら、手土産なんお気が効くのね」

    玙袋の䞭を芗きこみ䞍敵な笑みを浮かべるず、それをキッチンの方に持っおいった。

    リビングずダむニングが地続きになっおおり、4人掛けのテヌブルが奥に芋えた。

    ここからは芋えないがダむニングの隣にキッチンがあるようだ。

    䜕やら奥で話し声が聞こえ、麗子がお茶を2個持っお戻っおきた。

    「もう少しで倕食ができるから、それたでこれでも飲んでお」

    そう蚀いながら、枩かいお茶の入った湯呑をちゃぶ台に眮いおくれた。

    「いや、悪いだろ。倕食を食べにきたわけじゃない」

    「䜕蚀っおんの、もう䜜っおるんだから食べないほうが倱瀌よ」

    麗子は腕を組み、圓然のような口調で蚀い切った。

    「  そうか」

    有無を蚀わせぬ蚀い方に、断るずいう遞択肢が消えおしたう。

    仕方なく阿含はお茶をすすりながら、暫し埅機するこず10分皋。

    「2人ずも出来たわよ」

    幞恵さんがキッチンから顔を出した。

    いそいそずテヌブルに料理を運んでいるようだ。

    「阿含はここに座っお」

    そう麗子に蚀われお、右奥の䞀人掛けの怅子に腰を掛ける。

    麗子はその向かい偎のキッチン寄りの怅子ぞず座った。

    テヌブルには、麻婆豆腐ず八宝菜が倧皿で䞊べられおいた。

    麻婆豆腐はいかにもな赀みを垯びおおり、芋おいるだけで口の䞭に唟が溢れおくる。

    察しお八宝菜は色ずりどりの野菜が入っおおり、食べる前からやさしい味が想像できるものだった。

    キッチンから幞恵さんがお盆を持っお珟れ、䞊にはお茶碗ずスヌプが人数分眮かれおいた。

    「阿含君は倧盛りでよかったわよね」

    そう蚀っお、お茶碗に山のように盛られたご飯を県の前に眮かれた。

    湯気がふわりず顔にかかる。

    正盎、病院やら仕事やらで碌に食べおいなかったせいで胃が瞮んでしたっおいる気がしたが、断るこずもできずにそのたた受け取った。

    「ありがずうございたす、本圓にお構いなく」

    「あず、逃子を焌いおるから、先に食べおおくれる」

    そう蚀うず幞恵さんはたたキッチンに匕っ蟌んでいった。

    「冷めないうちに食べたしょう」

    そう麗子に勧められお、阿含は箞に手を䌞ばした。

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    無事な巊手でぎこちなく箞を掎もうず詊みたが、䞊手くいかない。

    それを芋かねた麗子が、蓮華を無蚀で差し出した。

    「悪いな」

    眰が悪そうに蓮華を受け取り、たずスヌプに手を぀けた。

    䞭華スヌプかず思ったが、薄味のたたごスヌプだ。

    䞭華の味付けずいうよりは、和颚の味付けに近い気がする。

    その間にも麗子が小皿に料理をよそっお、麻婆豆腐ず八宝菜を差し出しおくれた。

    「蟛いのが駄目だったら、八宝菜だけ食べお」

    「いや、蟛いものは埗意な方だ」

    阿含は頻繁にではないが、蟛いものを奜んで食べおいた。

    特に激蟛ラヌメンを汗だくで食べるのが、甘いものの次に奜きだった。

    「それはよかった。りチの麻婆は倧蟛しか出おこないから」

    「蟛いもの奜きだったのか、意倖だな」

    たた぀、麗子の新たな䞀面を知れた気がした。

    そうなのだ。俺が知らないずいうだけで奜きな物なんお幟らでもあるに決たっおいる。

    「そういえば、なんで倧蟛になったんだっけ」

    麗子はキッチンにいる母芪に察しお倧声で質問をした。

    「お父さんが蟛いもの奜きだったからでしょ」

    「ああ、あい぀が奜きだったの  」

    母芪には聞こえるか聞こえないか埮劙な音量で麗子は呟いた。

    瀟長の話題が出お少し疑問に思った阿含は、麗子に小声で質問した。

    「二本柳家の事を母芪に話したのか」

    小声の意図を察しお、麗子も小声で返す。

    「いいえ、話すずきっず䌚いに行くっお蚀うだろうから  」

    「え じゃあ、その事は幞恵さんには黙っおいたほうがいいのか」

    「あんたが居るこのタむミングなら、話しお良いんじゃない」

    俺が居るタむミングなら話しお問題ないずはどういう意味だ

    䜕故俺が居れば話しおいいこずになる

    麗子の意図が掎めず、阿含は眉をひそめる。

    「さぁ、逃子が焌けたしたよ」

    キッチンから幞恵さんが顔を出した。

    これたた倧皿に倧量の逃子が䞊んでいる。

    テヌブルに倧皿を眮いお、幞恵さんも垭ぞず぀いた。

    「あら、箞が進んでないわね。食欲が無かった」

    阿含の前の料理が枛っおいないのを芋お、幞恵さんが心配そうに声を掛ける。

    「いいえ、スヌプから頂いおいたんですよ」

    「ならいいんだけど  逃子も奜きな調味料぀けお食べおね」

    食べろ食べろず蚀わんばかりの圧をかけられ、ずりあえず話をするにも、たず食べおからの方がいいだろうず阿含は刀断した。

    「いただきたす」

    麻婆豆腐を蓮華で掬い、口に運ぶ。

    舌の䞊で蟛さがじわりず広がった。

    「これは  本栌的ですね。蟛さず旚さが突き抜けおる感じがしたす」

    食レポなんおしたこずがないが、阿含は出来る限り蚀語化するこずに努めた。

    「そう、よかった。蟛いの駄目だったらどうしようかず思っおたのよ。でも、我が家は皆、これが奜きでね」

    幞恵さんはしんみりした声のたた口を噀んだ。

    「奜きずいうか、これしか出ないから慣れちゃっただけよ」

    それを䞍満そうにボダきながら、麗子も麻婆豆腐を口にする。

    なかなかの蟛さだが、麗子は顔色䞀぀倉えずに口に運んでいる。

    さすがに麻婆のみだず口がひり぀くので、阿含は癜米を頬匵った。

    「この前テレビで倪った人が蚀っおたんだけど、お酢ずコショりだけで逃子を食べるずさっぱりしおお矎味しいらしいのよ」

    幞恵さんはそう蚀いながら、豆皿にお酢を垂らしおその䞊にコショりを振りかけおいた。

    「あんなの䞀個でも倚くの逃子を食べたいだけのデブが考えそうなこずよ」

    それに察しお、麗子は醀油ずラヌ油ずお酢を豆皿に垂らしながら答えた。

    そのたた麗子は無蚀で醀油差しを差し出しおくるので、阿含は麗子プランを遞択するこずにした。

    逃子を䞀぀掬い、口に運ぶ。

    倧きめにざく切りにされた生姜ず癜菜がアクセントになっお、お店で食べるものずはたた違った味わいがした。

    利き手が䜿えおいたらご飯を駆け蟌んでいただろう。

    八宝菜もいい圩りを食卓に加えおおり、蟛さの小䌑止ずしおの圹割もあっお良い組み合わせになっおいた。

    終始和やかな食卓を囲んで、䜓も心もリフレッシュさせおくれる楜しい時間だった。

    これから話すこずを考えるず、その気分もすぐに吹き飛んでしたうこずになるだろうが。

    皆の箞が止たりだした頃、阿含は蓮華を眮いお姿勢を正した。

    「今日お邪魔させおもらったのは、先日麗子ず䞀緒に調査にいった件のこずを話しおおきたいず思ったからなんです」

    「H垂の事故物件に行ったっおいうものでしょ」

    幞恵さんは湯呑を䞡手で包むように持ったたた、こちらを芋た。

    「はい、麗子からある皋床聞いおいるかず思いたすが、その調査した物件ずいうのが本圓に呪われおいる物件だったんです」

    人が阿含の蚀葉を固唟を飲んで聞き入っおいる。

    「俺が泊たり蟌みで屋敷内を調査しおいたんですが、途䞭から意識が消倱しおしたっお  その間に麗子に襲いかかっおいたらしいんです」

    幞恵さんの衚情が、わずかに固たった。

    「䜕にも芚えおいないっおこず」

    「はい、埌で麗子に聞くたで党く。ただ手がこんな状態でしたので、䜕かあったんだろうずは思っおいたしたが  」

    「手の怪我は平気」

    「はい、䞭手骚にヒビが入っただけなので」

    幞恵さんは手を䌞ばし、阿含の右手にそっず重ねた。

    手のひらからわずかな枩もりが䌝わっおくる。

    その枩もりは、掌から腕ぞ、そしお心臓に䌝わっおいき、冷え冷えずしおいた心を枩めおくれるようだった。

    「あなたも麗子も無事でよかったわ」

    阿含はその蚀葉を聞いた途端、心の奥にしたっおいた想いを吐露せずにはいられなかった。

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    「こんな事に巻き蟌んでしたっお  すいたせんでした」

    阿含は深々ず頭を䞋げた。

    それは玔粋な謝眪の圢だったのか、今の衚情を面ず向かっお芋られたくなかったのか、それはわからない。

    単玔な蚀葉では衚珟できない耇雑な感情に襲われ、只々この堎から消え去りたかった。

    「それは違うわ」

    麗子が阿含の蚀葉に重ねるように声を匵り䞊げた。

    荒々しい声であったが、怒っおいる感じずも違う初めお聞いた声色だった。

    「そうね。そもそも私が斡旋したようなものだし、こちらが埡免なさいね」

    幞恵さんも麗子に同意する圢で、阿含に謝眪した。

    阿含は、怒鳎られる芚悟でこの堎に臚んでいた。

    それなのに  。

    それなのに、この人達は蚱しおくれおいる。

    阿含は目頭が熱くなり、俯いたたた無蚀になった。

    しんず静たり返った食卓。

    その沈黙の䞭で麗子は意を決したように口を開いた。

    「この際だから蚀うけど、父が離婚を切り出したその日から、私たちは䜕か埗䜓の知れないものに巻き蟌たれおいる気がする」

    䞀拍の沈黙の埌、幞恵さんは困惑気味に麗子に問いかける。

    「䜕を蚀っおるの」

    「この前の調査の時に、あるお婆さんず出䌚ったんだけど、そのお婆さんが二本柳家っおいうむタコの䞀族ず懇意にしおいるっお話があったの」

    「二本柳っおお父さんず同じ姓ね。それにむタコっお  」

    「阿含も感づいおいるず思うけど、父はその二本柳家の人間なんだず思う」

    麗子は阿含に芖線を向けお確認するように話した。

    「確かに、お父さんのご家族ずは䌚ったこずがないけど、それは絶瞁されたからっお本人は蚀っおたけど」

    「どうゆう経緯で家を出たのかは知らないけど、私の力は父から受け継いでいるんだず思うの」

    私の力  そう、霊が芖えるずいう力。

    母にはその様な類の胜力は䞀切無く、父には面ず向かっお質問したこずがない。

    自分だけに備わっおいる胜力なのだず、これたでは思っおいた。

    しかし、この半幎間の出来事で、その力は父からの遺䌝であるずいう確信があった。

    「確かにお父さんは勘の鋭い所があったけど、そんな話  」

    蚀葉を途䞭で切った幞恵さんは、困惑の衚情を浮かべお黙り蟌んだ。

    麗子はテヌブルから芖線を䞊げ、阿含に向けた。

    「それを確かめる手段があるの。そうでしょ 阿含」

    「ああ、そのお婆さんから二本柳家の連絡先を聞いおいたす。俺は䞀床尋ねおみようず思っおいるんです。それをお䌝えする為に、今日䌺わせおもらったんです」

    幞恵さんの芖線が湯呑に萜ち、しばらく動かなかった。

    ほどなくしお、顔を䞊げたず思うず阿含の目を正面から芋据えた。

    「私も行きたす。少しでも䜕かわかるなら行っおみたいわ」

    「止めお」

    突然、麗子が倧声を䞊げた。

    阿含も幞恵さんも、目を䞞くしお麗子を芋぀めた。

    「それは止めお」

    次は萜ち着いた口調で蚀い盎した。

    「どうしおよ」

    玍埗のいかない幞恵さんが、困惑気味に麗子に問いかけた。

    「䞊手く説明できないけど、悪いこずが起こる気がする。私たちを取り巻いおいる問題の䞭心に二本柳家が倧きく関わっおいる気がするの」

    それを聞いた人は蚀葉が詰たった。

    “悪いこずが起こる”ずいう予蚀めいた蚀葉を、どう解釈すればよいか困りあぐねおいたからだ。

    麗子自身も䞊手く説明できない焊れったさが顔に滲みでおいた。

    頭の䞭を敎理する様に麗子は心に匕っかかっおいるこずを話し出した。

    「私、䞡芪が離婚した埌、父の真意を確かめるために家を匵り蟌んでいた時期があるの」

    「ちょっず そんなこずしおたの」

    麗子は黙っお頷き、話の続きを淡々ず語りだした。

    「離婚盎埌こそ、あの家に出入りしおたけど、ある時を境に家にも垰っおきおいないようだったわ」

    「ある時」

    幞恵さんが䞍思議そうな顔で麗子に尋ねた。

    「ゎヌストサヌチャヌズを立ち䞊げた時期よ」

    「幎前か  」

    阿含は過去を思い出す様に呟いた。

    「ええ、私には単玔に䌚瀟経営ずは異なる別の思惑があったように思うの」

    「別の思惑 䞀䜓なんだっお蚀うんだ」

    「それはわからない  」

    麗子は䞀床蚀葉を切り、そしお阿含を盎芖した。

    「だから、阿含人で二本柳家に行っおみおほしいの」

    「俺だけでか 別に構わんが  」

    「どうしおそうゆう流れになるの」

    幞恵さんが眉を寄せお抗議した。

    「念のため。なんでもなかったら改めお行っおみたっおいいんだし」

    麗子の提案に、幞恵さんは黙っおいた。

    芖線が嚘の顔ず阿含の顔の間を、䜕床か埀埩した。

    「ずりあえず俺人で行っおみたす。必ず埌で報告したすから」

    幞恵さんは、阿含ず麗子の衚情を確認するように目を合わせた。

    「人に止められちゃ、埅぀しかないわね」

    幞恵さんは小さく息を吐いお、肩の力を抜いた。

    話が぀いたず感じた阿含は、これからの事を話し始めた。

    「それじゃあ、近日䞭に二本柳家に人を探しおいるずいう䜓で蚪れおみたす」

    「それがいいず思う。あたり玠性をバラさないようにね」

    「ああ、わかった」

    麗子の衚情は至っお真剣だった。

    麗子の䞍安がどこからきおいるものなのか掚し量るこずは叶わない。

    しかし、圌女の勘が最終的に正しいこずは、付き合いの浅い阿含にもわかりきっおいるこずだった。

    かならず瀟長ぞの手がかりを芋぀けおみせる。

    そんな芚悟を阿含は固めおいた。

    ✥

     
    10月に入り、冬の気配が挂い出した頃、阿含は恐山から北東に数キロのずころにある屋敷の前にいた。

    歊家屋敷ず芋玛うほどの倧きな日本屋敷を前に圧倒されおいた。

    広い敷地を囲う塀、悠然ず構える屋敷門。

    庶民の身分ずしおは、近寄りがたい物々しさがあった。

    麗子のお宅を蚪れた次の日、阿含は二本柳家に電話をしおいた。

    電話口で生田目家の玹介で連絡した事、そしお人を探しおいるので力を貞しおほしい旚を䌝えた。

    今は䟝頌を受け付けおいないず断られそうになったが、䌚っお話をするだけでもいいず食い䞋がり、䜕ずか玄束を取り぀けた。

    阿含は今日を迎えるにあたり、事前にむタコに぀いお調べおいた。

    むタコずは、口寄せ、加持祈祷、予蚀、豊䜜祈願などを行うシャヌマンの䞀皮であるらしい。

    特に有名なのが“口寄せ”ず呌ばれおいる降霊術で、死者や神・粟霊ずいった珟䞖に存圚しないものを自分の䜓に宿し、予蚀を䌝えたり死者の想いを代匁したりする胜力だずいう。

    オカルトに疎い阿含には、霊が芖える事ず、むタコが甚いる術に䜕かしらの関係があるのかよくわからなかった。

    しかし、霊胜者ずいう枠組みで芋れば、根は同じなのかもしれないず無理やり玍埗した。

    阿含は塀に沿っお歩きながら、屋敷門の前たで進んだ。

    門は固く閉ざされおおり、芋たずころ呌び鈎の様なものも芋圓たらない。

    どうしたもんかず考えあぐねおいるず、脇戞が静かに開いた。

    そこには幌い少女が立っおいた。

    画像

    その少女は阿含に向かっおゆっくりず䞀瀌をしお芋せた。

    「お電話いただいた阿含様ですね」

    芋たずころ、歳ほどに芋えるが、䜕ずもしっかりずした口調をしおいる。

    おかっぱ頭に、赀い着物姿の少女。

    その立ち姿には、子䟛らしい無邪気さはどこにも芋圓たらない。

    その雰囲気に呑たれた阿含は、盞応の察応を心がける。

    「そうです。この床は無理なお願いを聞いおいただきありがずうございたふ」

    いきなり慣れない敬語を䜿ったせいか、思いがけず噛んでしたった。

    きたり悪い顔をする阿含を尻目に、少女は衚情を倉えるこずなく淡々ず話を続けた。

    「こちらからお入りください」

    阿含は蚀われるがたた脇戞をくぐり抜け、屋敷の玄関ぞず歩みを進めた。

    前を歩く少女は、異様に姿勢が敎っおおり、䞀歩䞀歩を機械の様な正確さで足を動かしおいた。

    その歩く様は、たるでお茶を運ぶからくり人圢のようだず思った。

    少女は土間で優雅に草履を脱ぎ、それを端ぞず移動させた。

    阿含も靎を脱いだ埌、芋よう芋たねで靎を端ぞず寄せた。

    屋内に目を向けるず、長い廊䞋が続き、その巊右に無数の襖が䞊んでいる。

    少女を先頭に、その廊䞋をゆっくりず進む。

    䜕故だか自分の足音だけがやけに耳に぀く。

    察照的に少女の足音は、ほずんど音をたおおはいなかった。

    長い廊䞋を歩いおいるず、このたた別の䞖界に誘われおしたいそうな錯芚に陥る。

    少女が足を止めたのを確認し、阿含もその堎で足を止めた。

    少女は右手の襖に手をかけ、ゆっくりず開ける。

    宀内は二十畳ほどの和宀で、広い空間に座垃団が二枚だけ眮かれおいた。

    「すぐに宗䞻代理が参りたすので、座垃団お䜿いになっおお埅ちください」

    少女はそう蚀うず、郚屋から出おいった。

    宗䞻代理 代わりの者が察応するずいうこずだろうか。

    突然電話しおきた人間に宗䞻が盎接䌚っおくれるなんおいうのは、虫の良い話なのかもしれない。

    阿含はゆっくりず座垃団の近くたで進み、腰を䞋ろした。

    正面に芋える床の間には、掛け軞ず萩が掻けられた花瓶が食られおいる。

    掛け軞には、浮䞖絵のようなタッチで巫女姿の女性が描かれおいた。

    画像

    二本柳家に瞁のある人物なのだろうか。

    じっず眺めおいるず、その女性の目がこちらを芋おいるような気持ちの悪さを芚えた。

    阿含は床の間から目をそらし、宀内を芋枡しおみた。

    襖に描かれた艶やかな玅葉や怿、欄間に圫られた芋事な笹の葉など、随所に雅を感じさせる空間だず玠人ながらに感じた。

    郚屋の装食矎に息を飲んでいるず、襖の開く音が聞こえた。

    芖線を向けるず、先皋の少女に手を匕かれお老人が郚屋に入っおきた。

    䞡の目が垃で芆われおおり、少女に手を匕かれお歩いおいるこずから、目が芋えおいないのだず察せられた。

    もう䞀方の座垃団の前たで来るず、ゆっくりず老人は腰を䞋ろした。

    少女も偎に控える圢で腰を䞋ろし、こちらを芋据えおくる。

    その芖線に、阿含は劙な居心地の悪さを芚えた。

    画像

    阿含は、二人に向かっおたず頭を䞋げた。

    「この床はお時間を頂きたしおありがずうございたす」

    顔を䞊げお、老人の顔を芋据える。

    その瞬間、阿含は違和感を芚えた。

    髪は癜髪、頬は窪み、深い皺が刻たれおいるが、どこずなく瀟長に䌌おいる気がしたのだ。

    目を隠しおいるため確信は持おないが、もしかしたら瀟長の父芪なのではないかず阿含は思った。

    「ぬんが生田目さんの玹介で来た阿含さんがい」

    容姿に䌌合わず、声には生気がみなぎっおいた。

    「はい。以前仕事の関係でお䌚いした際にご玹介いただきたした」

    それを聞いた老人は、深くため息を぀いた。

    「普段は仕事ば受けねんだが、生田目さんの玹介ずあっちゃ、無碍にもでぎねくおな」

    「ありがずうございたす。是非ずも探しおほしい人がいたしお  そういった事も匕き受けおいらっしゃいたすでしょうか」

    むタコに人探しの胜力があるのかなど、阿含には知るよしもない。

    ただ、話を䌺うきっかけになれば、䜕でも良かったずいうだけだ。

    「そいは、故人だが それずも生人だが」

    阿含は少しばかりぎょっずした。

    瀟長が死んでいるずいう可胜性。

    その可胜性を䞍意に気付かされた。

    「わかりたせん。行方䞍明になっおいたす」

    老人の唯でさえ無愛想な衚情が、険しいものぞず倉わった。

    「故人だば力さなれるず思うけんど、生人だばこっちの範疇でねぇな」

    阿含は䜕ずしおもここで情報を掎たなければず思っおいた。

    そうでなければ、たた䜕も情報がなかった頃に逆戻りなのだから。

    「生きおいるのか死んでいるのかが分かるだけでもいいです。どうにかお願いできたせんか」

    阿含の必死な懇願に、老人はしばらく黙っおいた。

    「んだごっお、そん人の名ばなんお蚀うんだ」

    䞀呌吞眮いお、阿含は口を開いた。

    「二本柳勉ずいいたす」

    その名前を聞いた途端、老人の雰囲気が倉わった気がした。

    垃で芆われた老人の衚情からは䜕も読み取れなかったが、こちらに察する譊戒心のようなものが䜓党䜓から発せられおいるようだった。

    「おめ、そんひずずどうゆう関係だんだ」

    「仕事の関係でお䞖話になった人です」

    老人はたた黙り蟌み、䜕やら口をもごもごず動かしおいるようだった。

    「  悪いけんど、今、宗䞻様は床に䌏せっおらんだ。おめの力にはなれねぇよ」

    突然の掌返しに、阿含は焊りを芚える。

    「ちょっず埅っおください さっきは力になれるかもしれないっお蚀っおくれたじゃないですか」

    こちらの必死さずは察照的に、老人の冷ややかな応察が浮き圫りになっおいく。

    「遠いどごろ来おもらっお悪いけんど、こっちに出来るこずはなんもねぇ」

    そう蚀うず老人はおもむろに立ち䞊がり、隣の少女に話しかけた。

    「京子、お芋送りしおやんな」

    少女は小さく頷いた。

    この流れは非垞にたずい。

    瀟長の情報をたったく聞き出せないたた、远い返されおしたいそうだ。

    次たた䌚っおくれる保蚌なんおどこにもないずいうのに。

    阿含は座垃団の䞊で身を乗り出した。

    「ご家族の䞭に、二本柳勉ずいう四十前埌の男性がいらっしゃいたせんか」

    回りくどい蚀い方を止めお、ストレヌトに問い詰めた。

    「知らねな」

    即答だった。

    たったく取り付く島もない。

    老人はゆっくりずした足取りで、䞀人で郚屋を出おいった。

    老人の出おいった襖から芖線を暪に向けるず、少女が襖を開けたたたこちらに芖線を向けおいた。

    たるで感情ずいうものが感じられない、本圓に人圢の様な䜇たいだ。

    さすがに屋敷の奥ぞず無断でズカズカ入っおいくわけにもいかず、少女の案内のもず玄関ぞず向かうこずにした。

    土間たでたどり着いた阿含は、䞭倮に眮かれた自分の靎に足を通しながら少女に問いかけた。

    「お嬢ちゃんは二本柳勉っお人に心圓たりないかな」

    砕けた感じで接しお、譊戒心を解こうずいう腹づもりだった。

    少女ず芋぀め合っお、しばしの沈黙が流れた。

    「お気を぀けおお垰りください」

    少女の衚情は倉わらず、質問に察する返答も返っおこなかった。

    無蚀の圧に耐えかねた阿含は、しぶしぶ屋敷を埌にした。

    倖に出るず塀の向こうに広がる空は、い぀の間にか倕焌け色に染たっおいた。

    ✥

     
    二本柳邞を出た埌、阿含は呚囲を歩き回り、話を聞けそうな人を探した。

    だが、この家の呚囲には民家ず呌べるものが䞀軒もない。

    人の生掻を感じさせる気配すらなく、舗装された道路だけが山の奥ぞず続いおいた。

    結局、収穫らしい収穫は䜕䞀぀埗られなかった。

    山䞭を圓おもなく歩き回っただけ  そんな埒劎感だけが重くのしかかっおいた。

    途方に暮れた阿含は車ぞ戻るず、小さく息を吐いおからスマホを取り出した。

    発信履歎を開き、迷うこずなく麗子の名前をタップした。

    数回の呌び出し音の埌、電話が繋がる。

    「はい。どうだった」

    受話噚越しの麗子の声は萜ち着いおいた。

    しかし、その奥には結果を案じる緊匵が滲んでいる。

    「どうもこうも、取り付く島もないずいった感じだ」

    阿含は運転垭にもたれかかり、額を抌さえた。

    疲劎だけではない。

    思うように事が進たない焊りが、少しず぀胞の奥に積もり始めおいた。

    麗子は阿含の声色で結果を察した。

    「䜕も情報を埗られなかったっおこず」

    「瀟長の名前を出した途端、露骚に非協力的になった感じはした。それたでは故人なら䜕ずかできるかもっお蚀っおいたんだがな」

    二本柳勉の名を聞いお態床が䞀倉したずいうこずは、他人ぞ知られおは困る䜕かがある。

    そう考えるのが自然だった。

    だが、真正面から問い質したずころで、盞手が玠盎に口を割るずは思えない。

    やはり手詰たりか  。

    「他に䜕か気づいたこずは」

    「ああ、宗䞻の代理っお人が話を聞いおくれたんだが、䜕凊ずなく瀟長に䌌おいたんだ。かなり老けおいるこずを陀けばだが」

    「父芪  私の祖父っおこず」

    「わからん。そう考えるのが自然ではあるがな」

    そう蚀っお、阿含は考え蟌んだ。

    もし瀟長が二本柳の血を匕く人間なら、それほど䞍思議ではない。

    だが、胞の奥で䜕かがざわ぀いおいた。

    確信には少しず぀だが近づいおはいるように思う。

    が、この先に觊れおはいけない事実が埅ち受けおいるような  。

    車内に流れる沈黙は重く、゚アコンの送颚音だけが静かに響いおいた。

    やがお䜕かを思い぀いたように阿含は顔を䞊げた。

    「なあ、瀟長の自宅だった所を調べおみないか」

    「あの家を」

    麗子は思わず聞き返した。

    「ああ。瀟長の痕跡を远えるものが残されおいるかもしれんし、ここで足螏みしおいるよりいいんじゃないかず思っおな」

    麗子はしばらく黙り蟌み、電話口から僅かなノむズだけが響いた。

    「もしかしたら、母が鍵を持っおるかもしれないけど  」

    蚀葉の最埌が自信なさげに小さく消えおいく。

    阿含は、その迷いを芋逃さなかった。

    「頌んでみおくれないか」

    「聞いおはみるけど  期埅はしないで」

    「ああ、埌で報告がおら俺からもお願いしおおく」

    「わかったわ」

    電話が切れるず、車内には静寂だけが残った。

    阿含はスマホを助手垭ぞ攟り投げ、シヌトに深く背䞭を預けた。

    フロントガラスの向こうでは、朚々が䜕事もなかったかのように颚で揺れおいた。

    その静けさずは裏腹に、内心は蚀いようのない䞍安感がみるみる膚らんでいるのを阿含は感じおいた。



    調査報告04は4話構成でお届けしたす。続きは数日埌アップ予定です。ちなみに調査報告04でお話は完結ずなりたす。をご芧になっおいない方は以䞋の目次から順に読んでもらえればず思いたす。

    お読みいただきたしおありがずうございたした。たた、蚀わなくおもわかるず思いたすが、このお話はフィクションです。実圚の個人、斜蚭、事件、䌝承ずはいっさい関係ありたせん。

     
     
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