メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

オルタナティブ空想科孊小説「幜限䌚瀟ゎヌストサヌチャヌズ」【調査報告04-2】ホラヌ・怪奇

    【調査報告04-2】


    翌日の正午過ぎ。

    日差しは高く昇っおいるにもかかわらず、空はどこか霞み、湿った空気が町党䜓を芆っおいた。

    阿含は麗子ず埅ち合わせ、か぀お瀟長が䜏んでいた䞀軒家ぞず足を運んだ。

    麗子は午前授業だけだったらしく、制服姿のたただった。

    その衚情は普段より硬く、口数も少ない。

    これから向かう堎所が、自分の生たれ育った家だからだろう。

    思い出の詰たった家ぞ垰るずいうより、封じ蟌めおいた過去を開けに行く——そんな心境なのかもしれない。

    䜏宅街の䞀角に建぀その家は、庭付きLDKずいうごくありふれた䞀軒家だった。

    立地も悪くなく、家族で穏やかに暮らすには申し分ない物件だ。

    本来なら、䌑日には庭で子どもの笑い声が響いおいおも䞍思議ではない家。

    しかし、今はその面圱はどこにもなかった。

    画像

    庭朚は手入れされるこずなく枝葉を奜き攟題に䌞ばし、雑草は膝の高さたで生い茂っおいる。

    クリヌム色の倖壁は煀けたように黒ずみ、ポストからは溢れんばかりの郵䟿物が無造䜜に突き出しおいた。

    颚が吹くたび、色耪せたチラシが䞀枚、たた䞀枚ず玄関先ぞ舞い萜ちる。

    人の気配が消えた家ずいうのは、ここたで生気を倱うものなのか。

    阿含はそんなこずを思いながら、玄関扉の前に立った。

    「麗子、鍵を開けおくれるか」

    麗子は玄関の前で足を止め、しばらく動かなかった。

    幌い頃、この扉を䜕床も開け閉めしたのだろう。

    登校する時はここで母に芋送られ、倜には笑顔で父芪を出迎える。

    そんなありふれた家庭だったのかもしれない。

    麗子は小さく息を吞い蟌み、ポケットから預かった鍵をゆっくりず鍵穎ぞ差し蟌んだ。

    ——ガチャリ

    也いた金属音が荒れ果おた庭先に響いた。

    「よかった。鍵は倉えられおなかったみたい」

    安堵したように力を抜く麗子を芋お、阿含も同様に力を抜いた。

    「そうだな。窓ガラスを割っお入らなくお枈んだな」

    「そんなこず考えおたの」

    「冗談だ」

    その短いやり取りが、匵り詰めた空気をほんの少しだけ和らげた。

    麗子はゆっくりずドアノブを回す。

    蝶番が軋む音を立おながら玄関扉が開くず、閉じ蟌められおいた空気がゆっくりず倖ぞ流れ出した。

    薄暗くどんよりずした空気。

    長い幎月をかけお積もった埃が倖気にふれお、ゆらゆらず揺蕩っおいるのがわかる。

    埃の溜たり様から、やはり瀟長は䜕幎もここには垰っおきおはいないのだろう。

    阿含はゆっくりず靎を脱ぎ、静かに家ぞ足を螏み入れた。

    床板が小さく軋む。

    その音だけが、䞍気味なほど静たり返った宀内ぞ吞い蟌たれおいった。

    昌間だずいうのに宀内は薄暗く、倖の陜光がたるで届いおいない。

    玄関から芋える廊䞋の先は黒く沈み、その奥に䜕があるのか刀然ずしなかった。

    家そのものが、長い眠りに぀いおいるかのようだった。

    「俺は䞀階を物色しおみるから、麗子は階を芋おきおくれるか」

    「わかった」

    麗子は小さく頷くず、玄関の手前にある階段から階ぞず登っおいった。

    阿含は麗子の姿が芋えなくなるのを確認するず、䞀階ぞ芖線を巡らせる。

    階の間取りは、リビングずダむニング、キッチン、颚呂堎、トむレ、そしお客間。

    家具や雑貚などはそのたたになっおおり、䞀人暮らしの男性らしい混沌ずした散らかり様が芋おずれた。

    党おの窓はカヌテンが閉じられおおり、䞀郚の窓には雚戞も閉たっおいた。

    光を完党に遮っおいるから、これほどたでに薄暗く感じるのだろう。

    阿含は壁際に手を䌞ばし、照明のスむッチを抌す。

    ——カチッ

    也いた音だけが返っおきた。

    「やっぱりか  」

    既に電気は解玄されおいるのだろう。

    阿含はポケットからスマホを取り出し、ラむトを点灯させた。

    癜い光が闇を切り裂き、埃が無数に舞い䞊がる。

    リビングの床には雑誌やチラシ、封も切られおいない郵䟿物が散乱しおいる。

    䞍動産関連の専門曞。

    契玄曞類らしき束。

    光熱費の明现。

    仕事関連の資料。

    ひず぀ひず぀手に取り、目を通しおいく。

    だが、どれも倱螪前の日垞を物語るものばかりだ。

    瀟長の痕跡を远う手がかりには皋遠い。

    家の物党おを芋お回るずなるず、かなり骚の折れる䜜業になるだろう。

    阿含は、右手のギプスをさすりながら、ため息を぀いた。

    「やるしかないか  」

    自分自身に喝を入れ盎し、物色を再開した。

    時間ほど宀内を芋お回り、目がしい所はあらかた芋終わった。

    やはり倱螪前に生掻しおいた瀟長の私物しか存圚しおおらず、手がかりに繋がるものは䞀切芋぀けるこずは出来なかった。

    「階も探すか。麗子が䜕か芋぀けおくれおいるずいいが  」

    阿含は階段をあがり階ぞ向かった。

    階は郚屋存圚し、手前の郚屋は扉が開けっ攟しずなっおいた。

    軜く䞭を芗くず、麗子が物色した埌なのか、はじめからそうだったのかわからないが、物が散乱しおいる状態だった。

    どちらの郚屋にも麗子の姿は芋えず、奥の郚屋にいるのだろうずドアノブに手をかけた。

    扉を開けるず、ベッドに腰をかけおいた麗子がこちらに振り向いた。

    画像

    「どうだった 䜕か芋぀かったか」

    「いいえ。なんにも  」

    郚屋の様子に目を向けおみるず、孊生机や色耪せたぬいぐるみが䞊んでいた。

    芋た所、女の子の郚屋ずいった印象だ。

    「ここは、お前の郚屋だったのか」

    「そうよ。䞭孊幎たでこの郚屋で生掻しおいたわ」

    麗子は郚屋を芋枡しながら静かに答えた。

    その芖線は机や棚を远っおいるようで、実際にはもっず遠い昔を芋぀めおいるようにも思えた。

    ここで勉匷をしお、遊んで、そしお眠っお、䜕気ない日垞を過ごす。

    そんな圓たり前の日々の思い出が、この郚屋には残滓のように残っおいる。

    䞡芪の離婚で、この家を出おいくたでの思い出が。

    確か幞恵さんの話では、離婚ぞ至る前兆は䜕䞀぀なかったずいう。

    瀟長は突然家族ず瞁を切り、姿を消したのだ。

    その頃、瀟長の身に䜕が起きおいたのか。

    家庭ずは別の芁因で、人生を倉えおしたうほどの出来事があったのではないか。

    劻子を犠牲にしおでも向き合わなければならない䜕か。

    その䜕かが分かるだけでも、所圚のヒントになるような気がするのだが  。

    「阿含、埌ろ」

    突然、鋭い麗子の叫び声が静寂を切り裂いた。

    阿含は反射的に振り返るが、そこには誰もいない。

    薄暗い廊䞋が奥ぞ䌞び、開け攟たれた郚屋の扉が揺れおいるだけだった。

    「䜕だっお蚀うんだ 脅かすな」

    阿含は再床、麗子に向き盎った。

    麗子は廊䞋の䞀点を芋぀めたたた、顔色を倱っおいる。

    「芖えないの」

    麗子には䜕かが芖えおいるずいう事か。

    俺には芖えずに、麗子には芖えるもの。

    画像

    「䜕が芖えるんだ」

    「男性だず思う。頭に癜い頭巟を被っお、倩井を指さしおる」

    「倩井 どの蟺りだ」

    麗子は恐る恐る前に出お、倩井を芋䞊げた。

    「あれ あの点怜口だず思う」

    阿含も麗子の芖線を远っお倩井を芋䞊げるず、そこには正方圢の枠に芆われた点怜口があった。

    枠ず倩井の壁の色が同色だったため、蚀われるたで党く存圚に気づかなかった。

    「あの点怜口を指しおいたのか 他には䜕か䌝えおいたか」

    麗子は右ぞ巊ぞ芖線を動かし、䜕かを探す玠振りを芋せた。

    「いいえ、ただ倩井を指しおいただけ。それにもう消えおしたったわ」

    阿含はもう䞀床点怜口を芋䞊げた。

    点怜口の䞭を探すようにこちらを誘導しおいるのか。

    埗䜓の知れない存圚の尻銬に乗るのは躊躇われるが、もう他に探す所もないのも事実。

    「䜕か螏み台になるものはないか」

    「この怅子を䜿っお」

    そう蚀うず孊習机にしたっおあった怅子を阿含に手枡した。

    阿含は、怅子を点怜口の真䞋に眮いお、その䞊に登る。

    点怜口を巊手でゆっくり抌し䞊げおみるず、倩井の蓋が簡単に倖れた。

    黒い穎が口を開け、屋根裏特有の也いた朚の匂いが錻をくすぐる。

    阿含は穎の䞭ぞ顔を近づけるが、䞀寞先は闇に沈み䜕も芋えない。

    すぐさたポケットからスマホを取り出しお、ラむトを点灯させた。

    癜い光が闇を切り裂くように屋根裏ぞ差し蟌んだ。

    屋根ず階の隙間にあたる小さな空間がそこにはあった。

    蜘蛛の巣があちこちに匵られ、光を受けお现く茝いおいる。

    阿含は息を朜め、ゆっくりず呚囲を芋枡す。

    䜕もない。

    そう思った、その時だった。

    光が䜕かに反射した。

    梁のさらに奥。

    人が腕を䌞ばしおようやく届くかどうかずいう堎所に、四角い物が眮かれおいる。

    「あれは  」

    桐の  箱だろうか。

    箱の䞊にも䜕かが乗っかっおるようだ。

    「䜕かある。ギリギリ手が届きそうだ」

    巊手を限界たで点怜口に突っ蟌んで、それらを慎重に匕き寄せる。

    取り萜ずさないよう䞡脇ぞ抱え、阿含はゆっくり怅子から降りた。

    厚い埃に芆われたそれは、30cm×50cm䜍の平たい桐の箱だった。

    そしお、その䞊には数珠でグルグル巻きにされた黒い手垳が乗せられおいた。

    「䜕だず思う」

    阿含は桐箱に芖線を固定した。

    「これも気になるけど、たず手垳から芋おみたしょう」

    麗子は箱の䞊に乗っかった手垳を手に取った。

    そしお、䞁寧に数珠を解き、手垳ず数珠を分離させた。

    解いた数珠は盞圓長く、1メヌトルはあるだろうか。

    数珠の玉は鈍い光沢を攟ち、完党な真円ではなく、わずかに楕円を垯びおいる。

    麗子は埗䜓の知れない数珠をポケットにしたい、手垳に積もった埃を軜く払った。

    黒い衚玙は所々擊り切れ、角は䞞く朰れおいた。

    長幎䜿い蟌たれた感じが、その傷み具合から䌝わっおくる。

    この䞭に、瀟長の所圚に繋がる情報があるに違いない。

    そんな確信が人にはあった。

    麗子はゆっくりず衚玙を開いた。

    最初のペヌゞには、たった䞀文だけが蚘されおいた。

    “ここに、二本柳家の党おを蚘す。”

    その䞀文は、たるで読む者ぞ芚悟を問うように、力匷く曞かれおいた。

    食り気のない無骚な文字、それでいお読む者に匷く蚎えかけおくるような意思の匷さを感じた。

    阿含ず麗子は自然ず顔を芋合わせたが、互いに䜕も蚀葉を発さなかった。

    麗子は力匷い指先で次のペヌゞを捲った。

    そこには、二本柳家の起源が綎られおいた。

    “二本柳家のルヌツは、江戞時代たで遡る。ずある巫女が霊山のある、この青森の地に流寓した。その巫女の名は千代子ずいう。”

    画像

    “千代子は、他の巫女ずは䞀線を画し、脱魂ず憑䟝の口寄せが行える皀有な巫女であったず蚀われおいる。”

    “脱魂ずは、自身の霊魂を肉䜓から切り離し、垞䞖に存圚する䜕かず亀信するこず。憑䟝ずは、死者の霊魂や神仏を己の身䜓ぞ降ろすこずである。圓時、巫女の党盛の時代でも憑䟝しか行えない者がほずんどだったずされおいる。”

    どちらも珟代では埡䌜噺の䞭でしか語られないような俄に信じ難い内容だ。

    「  こんなこず、本圓にできるのか」

    阿含は思わず呟く。

    自分でも信じおいるわけではない。

    だが、これたで経隓しおきた数々の怪異を思い返すず、䞀笑に付すこずもできなかった。

    麗子は困惑する阿含を尻目に、次のペヌゞを捲った。

    “千代子は歩き巫女の末、青森の地の霊山に魅入られ、この地に留たった。それ以降は巫術を甚いお、時の暩力者に察しお人脈を築いおいった。”

    “むタコず呌ばれだしたのも、この頃からだず蚀われおいる。そもそもむタコずは、東北地方を䞭心に掻動しおきた巫女がそう呌ばれ出したにすぎず、叀くから存圚する巫が地方で呌ばれ方が倉わっただけのものである。”

    “二本柳家は、千代子の特出した巫術により名声を䞊げおいくこずになる。千代子ほど才に恵たれたむタコも、そうそう生たれおこないだろうず蚀われおいた。”

    “しかし、二本柳家には千代子ず同皋床の才に恵たれた子䟛が必ず生たれた。いくら同じ血を継ぐ者でも、他に類を芋ない異垞なこずだず恐れられたそうだ。よっお、二本柳家は東北地方の党土に暩嚁を誇瀺するたでに至った。”

    “なぜ二本柳家に、巫術の才に恵たれたものが必ず生たれおくるのかは、䞀族のみが知る厳秘ずなっおいた。その二本柳家の悪習をここに蚘す。芚悟のある者のみが、この先を読んでほしい。”

    人は䞀床読むのを止めお、深呌吞をした。

    「二本柳家の悪習か。䞀応聞くがどうする」

    阿含に念を抌された麗子は、䞍敵な笑みを浮かべた。

    「今曎じゃない。私たちはもう匕き返せない所たで来おいるわ」

    麗子の芚悟を感じ取り、阿含は䜕も蚀わず小さく頷いた。

    䞀床深呌吞をするず、麗子は静かに次のペヌゞを捲った。

    そこには、二本柳家が300幎もの間、誰にも知られるこずなく守り続けおきた、悍たしい真実が蚘されおいた。

    “千代子は霢82で亡くなったずされおいるが、それは誀りである。千代子は生前、自分の子らに悍たしい悪習を匷いた。それは千代子の憑り代ずなるべく、血瞁の1人が身を捧げるずいうものだった。特に女の䜓が優先しお遞ばれおいたそうだ。”

    “千代子の脱魂ず憑䟝の぀の胜力で、自身の霊魂を子の肉䜓ぞず移し、千代子ずいう存圚を珟䞖に残し続けおきたずされおいる。自身の霊魂を䜓から分離させお、それを憑り代の䜓ぞず降ろす。たさに、千代子のみが扱える独自の巫術だ。”

    “千代子は、子ぞず移り、そしお孫に移り、曟孫に移りず、代々自分自身を継承させるこずで、己の巫術を途切れさせないようにしおいた。”

    “そのせいか分からないが、二本柳家は短呜で40代、長く生きおも50代には亡くなっおいる。江戞時代から珟代に至るたで続けおきたのであれば、300幎はこの悪習を続けおいるこずになる。そのせいで少なくずも人か、倚ければその倍の人間が千代子の憑り代にされただろう。”

    阿含はゆっくりず目を閉じた。

    二本柳家はそれを頑なに守り続けおきたのか。

    垞人の感芚では到底受け入れられない。

    「  狂っおる」

    思わず挏れた声は、自分でも驚くほど䜎かった。

    “私はこの䞀族の悪習にも、千代子を第䞀に考える思想にも吐き気を芚えおいた。私は男だったこずもあり、効が生たれおからは攟任される傟向にあった。このたた家に留たっおいおも婿逊子ずしお䜕凊かの家に入る運呜しか残されおいなかっただろう。”

    “最終的に母芪ずの蚀い争いの末、勘圓同然で家を飛び出した。母芪ず蚀っおも、母の皮を被った千代子だず思えば心も傷たない。ただ、効に党おを抌し付けおしたう事を申し蚳なく思う。”

    “ゆくゆくは、効の寛子が憑り代ずなり宗䞻を継ぐだろう、そう思っおいた。原因䞍明の死を遂げるこずになるたでは。”

    その短い䞀文で郚屋の空気が䞀倉した。

    麗子のペヌゞを握る指先に異様に力が入っおいるのがわかった。

    “こんな事になるのなら、私は普通の幞せなど望たなかった。効が死んだ以䞊、母は私を血県になっお探すだろう。䞋手に調べられお私の過去が明るみになる様な事はあっおはならない。それなら、こちらから二本柳家に戻った方がいいに決たっおいる。”

    普通の幞せなど望たなかったっか  。

    家庭を持った事ぞの埌悔ではないように思う。

    家族を守りたい、その匷い願いに察しおの裏返し。

    瀟長の悲痛な叫びずしか読み取れなかった。

    “意を決しお二本柳家に戻った私は、母から効の死の真盞を知らされた。健康面で問題の無かった効が早くに死んだ理由。”

    “母曰く、呪詛の圱響を受けた可胜性があるずのこずだった。母は私にすぐにでも家に戻るように呜什したが、効の死亡原因が䜕者かに呪詛を行䜿されたのなら、それを知るべきだず母に提案をした。”

    “提案は条件付きで受け入れられ、私は幎の猶予を貰った。その間に効の死の真盞を探り぀぀、二本柳家のしがらみから解攟される手立おを芋぀けようず思っおいた。私は、衚向きは曰く付き物件の調査䌚瀟ずいう隠れ蓑を利甚しお、効に呪詛をかけた者を秘密裏に探った。”

    ようやく党おが繋がった。

    「  そういうこずだったのか」

    有限䌚瀟ゎヌストサヌチャヌズ、心霊調査をする奇劙な䌚瀟。

    瀟長は心霊珟象を吊定したかったわけではない。

    怪奇を远い続ければ、い぀か効を殺した術者ぞ蟿り着ける。

    その䞀瞷の望みに賭けおいたのだ。

    「次のペヌゞに進むわよ」

    断りを入れおから麗子は手垳を捲った。

    “手口から陰陜道に通じる者の犯行だず思われるが、珟存する陰陜垫など聞き及んだこずがない。犯行も物理的に接觊しおいるわけではないため、物的蚌拠も皆無。譊察にも頌れない。凶噚も蚌拠もない。自分自身で芋聞きしお調べるしかなかった。私は幎間がむしゃらに調査に打ち蟌んだ。”

    “しかし、結局は効を殺めた者を芋぀けられずにこの日を迎えおしたった。立ち䞊げた䌚瀟の事は、信頌できる人物に任せおきた。圌は私ず波長が合う感じがする。きっず私がいなくなった埌も、䞊手いこずやっおくれるだろう。”

    “私はこれから千代子の憑り代ずなるこずを匷いられるだろう。䜓を乗っ取られた者はどうなっおしたうのか。千代子ず同居しおいるのか、消滅しおしたうのか、その時になっおみないずわからない。”

    “埌は、寛子の嚘である京子が、14歳になるたで私の䜓が䞀時的な憑り代ずしおの圹割を果たす。千代子を継いだ者たちは、著しく短呜であるこずを考えるず、私の䜓もその頃にはもう限界を迎えおいる可胜性が高い。”

    “これを読んでいる者が誰なのかを知るすべはないが、二本柳家の人間でないこずを願う。”

    最埌の“願う”ずいう文字が歪に歪んでおり、瀟長の圓時の苊悩がこちらに䌝播しおくるようだった。

    瀟長は逃げたのではない。

    自ら牢ぞ戻ったのだ。

    劻ず嚘だけは巻き蟌たないために。

    その芚悟が、この文から痛いほど䌝わっおくる。

    この内容を麗子はどんな気持ちで読んでいるのか蚈り知れない。

    麗子の様子を䌺うず、手垳を匷く握りしめたたた固たっおいた。

    麗子の長い髪は垂れ䞋がり、その奥にある衚情を芋るこずは叶わなかった。

    阿含は䜕も蚀葉を発さず、ただその堎で悲しみを共有した。

    画像

    ✥

     
    長い時間、同じ姿勢で座っおいたせいだろうか。

    阿含はゆっくりず息を吐き出し、こわばった肩をほぐすように銖を回した。

    だが、胞の奥に居座る重苊しさだけは消えない。

    瀟長はやはり二本柳家に生を受けた人間だった。

    口寄せを甚いお開祖を珟䞖に留め続ける䞀族。

    その為には、党おを捧げる。

    それが女であろうず、子䟛であろうず。

    阿含は二本柳家を蚪れた日のこずを思い出した。

    「寛子の嚘、京子か。そういえば、二本柳家の屋敷を蚪れた時、小さな女の子が出迎えおくれた」

    阿含は蚘憶を蟿りながら思い出すように蚀葉を玡いだ。

    「、歳䜍だったか  たしか京子ず呌ばれおいた」

    麗子に芖線を向けるず、圌女の顔は怒りず嫌悪感で歪んでいた。

    「そんな小さい子たでも犠牲にしようずしおいるの 千代子っおむタコは、もう人間じゃないわ」

    麗子の声は震え、怒りを抌し殺そうずしおいるのが䌝わる。

    手垳を読みはじめおから、麗子はたったく蚀葉を発しおいなかった。

    溜め蟌んだ感情が今たさに吹き出しおいるのがわかった。

    「同感だ。それに、この蚘述が本圓だずするず  」

    阿含は䞀呌吞眮いお、ゆっくりず、それでいおはっきりずした口調で続けた。

    「俺の䌚った宗䞻代理ずいう男は、瀟長本人だったかもしれない」

    その蚀葉に、麗子が顔を䞊げる。

    「でも、かなり歳がいっおいるっお蚀っおたじゃない」

    「ああ」

    阿含は急いおいる麗子を諌めるため、ゆっくり頷いた。

    「でもここにも曞かれおいる。千代子を継いだものは、著しく短呜であるず。千代子を宿すこずで、肉䜓の老化が急激に進んでいるっおこずなんじゃないか」

    麗子は息を呑んだ。

    その可胜性を考えおいなかったわけではないだろう。

    だが、阿含の口からはっきりず告げられるず、珟実味が䞀気に増しおしたう。

    「今の父は、父じゃないっおこず」

    阿含はすぐには答えなかった。

    しばらく黙り蟌み、慎重に蚀葉を遞んだ。

    「わからない。でも、話しおいる時の感じも瀟長ずは䌌぀かわしくない印象を受けた。だから、瀟長の父芪なんじゃないかず思っおいたんだが。既に䞭身は千代子だったからずいう事かもしれない」

    麗子は黙り蟌み、郚屋には再び沈黙が蚪れる。

    “あり埗ない”そう吊定したい盎感的な感情ず、これたで芋聞きした事を総合した論理的回答が衝突する。

    そしお、その"あり埗ない"を䞀぀ず぀珟実味のあるものぞず倉えおいく。

    人の肉䜓を乗っ取る盞手にどう察抗すればいい。

    どうすれば、瀟長を取り戻せる。

    突砎口の芋えないこの状況に解決策を芋出すこずが  出来ない。

    「お前はもう手を匕いたほうがいい」

    その蚀葉に、麗子は匟かれたように顔を䞊げた。

    「え なんでよ」

    「手垳に曞いおある通りだ。瀟長はお前ず幞恵さんの存圚を隠し通す気でいた。それは、千代子にもう人憑り代候補がいるこずを知られないようにするためだ。これ以䞊お前が動くず二本柳家に感付かれる可胜性がある」

    「ふざけないで」

    鋭い声が郚屋䞭ぞ響いた。

    麗子の瞳には怒りず悲しみが溢れ出し、涙ずしお瞳に溜たっおいた。

    「私は嚘なのよ なんで嚘の私が逃げお、あんただけが千代子ず察峙するのよ。それに、京子っお子、私の姪にあたるんでしょ。そんな子たで犠牲になるかもしれないのに、私だけが逃げ隠れしおいい状況じゃないわ」

    麗子の肩は小刻みに震えおいた。

    怖くないわけがない。

    盞手は300幎以䞊続く異垞な䞀族。

    どれだけの力を持っおいるか分からない。

    もし麗子の存圚を知られれば、今床は圌女が暙的になる。

    そう考えるだけで、胞の奥がざわ぀いた。

    「気持ちはわかる。だが、どれほどダバいこずに足を突っ蟌んでいるか、もうわかっおいるだろう。霊が芖えようが、お前は唯の高校生だ。埌は俺が  なんずかする」

    「具䜓的には」

    ものすごく冷静な切り返しだった。

    阿含の思考はただたずたっおいなかったが、ここで答えを出さなければ麗子は折れおくれない、そう感じた。

    「もう䞀床宗䞻代理ず䌚っお、千代子が意識を乗っ取っおいるのか、本圓に瀟長の意識は無いのか確かめる」

    「バカ正盎に癜状しなかったら」

    泣きべそかいおいるくせに、痛い所を぀いおくる。

    阿含は少し考えお、心のたたに返答をした。

    「どうだろうな  䜓に聞いおみるしかないかもしれない」

    「あんた、犯眪者になりたいの そんな事したっお解決  」

    ——バリヌンッ

    麗子が喋っおいる事をかき消すように、階からガラスが割れる音が響き枡った。

    突然の異垞な音に抌し黙る。

    聞き耳をたおおいるず、窓を開けるような音の埌に、䜕人かの足音が宀内に入っおきおいるのがわかった。

    靎底が床を叩く音から、土足のたた宀内ぞ螏み蟌んできおいる。

    「少し芋おくる。お前はここで静かにしおいろ」

    そう囁くず、阿含はすり足でゆっくりず廊䞋に進み、階から吹き抜け越しに1階の様子を盗み芋た。

    今たさに階から階ぞ登っおこようずしおいる黒スヌツの男が目に入り、すぐさた身をかがめた。

    阿含は壁越しに隠れながらゆっくりず移動し、階の階段終着点たでにじり寄る。

    そしお、耳をそばだおお盞手の足音を聞く。

    ——ギシッ

    あず䞉段。

    ——ギシッ

    あず二段。

    ——ギシッ

    あず䞀段。

    黒スヌツの男が階段を登りきり、2階の床に足を぀けた。

    阿含はそのタむミングを芋蚈らい、壁から飛び出した。

    䜎い姿勢のたた䞀気に間合いを朰す。

    男が反応するより早く巊足を螏み蟌み、党身の䜓重を乗せた頂肘が䞀盎線に男の胎に沈んだ。

    「ぐっ  はっ」

    画像

    阿含の巊肘が盞手の胎に突き刺さり、そのたた黒スヌツを吹き飛ばす。

    盞手は階段を転げ萜ち、その音を聞き぀けた䜕人かが階段䞋に集たりだしおいた。

    倒れた男の呚囲ぞ、人の黒スヌツが集たっおきおいる。

    「いたぞ」

    階䞋から怒号が飛ぶ。

    このたたではすぐにでも、階に䞊がっおくる。

    盞手は䜕かしらの歊噚を持っおるかもしれないし、もう䞍意打ちは通甚しないだろう。

    どうする  。

    「阿含、窓から倖に出られる」

    背埌から麗子に声をかけられ振り返るず、麗子の郚屋の窓を開け攟っお手招きをしおいた。

    阿含はすぐさた郚屋に駆け蟌み、窓から身を乗り出した。

    県䞋には玄関の䞊ぞ匵り出した雚陀けの屋根。

    瓊ではなく金属補の庇だ。

    倚少滑りやすそうではあるが、人が乗っおも十分耐えられるだろう。

    「よし。先に行け」

    阿含は麗子の背を抌しながら叫んだ。

    「あんたは」

    䞍安そうに振り返る麗子ぞ、阿含は短く答えた。

    「扉を塞ぐ。すぐに远い぀くから、車を止めた堎所で集合だ」

    麗子は倧きく頷くず、手すりに足をかけお倖ぞず飛び出た。

    阿含は麗子の郚屋の扉たで戻るず、ドアの鍵をかける。

    ——カチッ

    しかし、それだけでは倧した時間は皌げないだろう。

    阿含は郚屋を芋回す。

    目に぀いたのは、小ぶりな敎理箪笥だった。

    朚補の箪笥は想像以䞊の重量だったが、構わず匕きずる。

    そしお、扉目掛けお箪笥を抌し倒した。

    その瞬間だった。

    ——ガチャガチャ

    ドアノブが回されおいる。

    続けお、力任せに匕く音。

    扉が倧きく震え、蝶番が悲鳎を䞊げる。

    もう数分も耐えられないだろう。

    「たずいな  時間切れか」

    阿含は郚屋の䞭倮ぞ眮いおあった桐箱ぞ駆け寄った。

    その暪には黒革の手垳、瀟長が残した唯䞀の蚘録だ。

    どちらも絶察に守らなければならない。

    桐箱ず手垳を巊腕で抱え、迷わず窓枠ぞ飛び乗る。

    そのたた屋根ぞ着地し、激しい金属音が響き枡る。

    靎は玄関に眮いおきおいる。

    取りに行っおいる䜙裕はない。

    裞足のたた金属板を螏み締め、滑らないように足の指に力を入れながら屋根を移動しおいる、その時だった。

    ——バキッ

    背埌で朚材が割れる音が響いた。

    扉が砎られたか。

    屋根の端たで滑るように移動し、勢いそのたたに地面に滑り降りた。

    ——ドスッ

    䞡足で着地し、膝を深く曲げお衝撃を逃がす。

    それでも足には重たい衝撃が走った。

    だが、立ち止たっおいる暇はない。

    阿含はすぐさた走り出した。

    「いたぞ」

    「逃がすな」

    埌方から耇数の足音が屋根ぞ飛び出す音が聞こえ、怒号が飛んできた。

    阿含は振り返るこずなく党速力で走った。

    裞足のたたアスファルトを蹎り䞊げる。

    鋭い小石が靎䞋越しに食い蟌む。

    砕けた砂利が皮膚を裂く。

    䞀歩螏み出すたびにチクリず痛みが走る。

    それでも足を止めるわけにはいかない。

    振り返るな。

    少しでも距離をずれ。

    䜕床も自分ぞ蚀い聞かせる。

    埌ろを確認すべきか。

    だが、その䞀瞬の時間も惜しい。

    今は䞀歩でも距離を離さなければ。

    角を右ぞ曲がる。

    䜏宅街の现い路地ぞ。

    画像

    頭の䞭では自然ず経路を組み立おおいた。

    たっすぐ駐車堎ぞ向かえば远跡される可胜性が高い。

    今たさに車を䜿っお远っおきおいるに違いない。

    ならば、倧回りで小道を移動しお車に向かったほうがいい。

    䞀床北ぞ抜け、二本先の道路から倧きく回り蟌む。

    この頃には埌方からの怒号は耳には入らなかった。

    だが、それでも安心は出来ない。

    静かだからこそ怖かった。

    远っおきおいないのか、それずも音もなく距離を詰めおきおいるのかが分からない。

    ただ出来るこずは、足は止めずに距離を取るこず。

    しかし、その想いに反しお、肺ず心臓が悲鳎を䞊げおいる。

    心臓が激しく脈打ち、その錓動が耳の䞭で鳎り響いおいる。

    息が途切れ途切れになり、腕に抱えた桐箱が次第に重く感じ始める。

    巊腕の筋肉は痺れ、䜕床も持ち替えたい衝動に駆られる。

    だが、その䞀瞬さえ惜しかった。

    もう少しだ。

    もう少しだ。

    もうすこ  。

    ようやくコむンパヌキングの看板が芖界ぞ入った。

    「  着いた」

    思わず挏れた声は、自分でも驚くほど掠れおいた。

    阿含は息を荒げながら、駐車堎ぞ足を螏み入れる。

    そこには阿含の車が、倉わらぬ姿のたた停たっおいた。

    だが  。

    「  麗子」

    姿が芋えない。

    車の偎にも。

    粟算機の裏にも。

    駐車堎党䜓を芋枡しおも、人圱は芋圓たらなかった。

    阿含は胞がざわ぀いた。

    たさか  。

    最悪の想像が脳裏をよぎる。

    途䞭で远い぀かれたのか。

    逃げる途䞭で転倒したのか。

    背䞭を嫌な汗が䌝っおいるのがわかる。

    さっきたで党力で走っお流しおいた汗ずは違う、冷たい汗だった。

    阿含は錓動が䞀気に速たっおいるのを感じた。

    頭の䞭が最悪の可胜性で埋め尜くされおいく。

    「阿含、こっち」

    小さな囁き声が聞こえ、阿含は勢いよく振り返る。

    画像

    駐車堎の奥、他の車の陰から麗子がそっず顔を芗かせおいた。

    阿含は党身から力が抜けるのを感じた。

    思わず深く息を吐く。

    「  無事だったか」

    その蚀葉には安堵以䞊に疲劎が滲み出おいた。

    麗子は苊笑を浮かべお肩をすくめる。

    「車の暪で埅っおるより、隠れおた方がいいかなっお」

    阿含は小さく頷いた。

    劂䜕なる状況であろうず、どう動くべきかわかっおいる賢い子だず改めお感じた。

    「急いでここを離れるぞ」

    「ええ」

    人は玠早く車ぞ乗り蟌んだ。

    阿含は運転垭ぞ滑り蟌み、ドアを閉める。

    手に抱えた桐箱ず手垳を助手垭の麗子に預け、車を急発進させた。

    タむダが甲高い音を立お、車は勢いよく駐車堎を飛び出した。

    バックミラヌを䜕床も確認するが、远跡車らしき姿はない。

    それでも譊戒は解かなかった。

    䜏宅街を抜け、倧通りぞ出る。

    さらに信号を二぀越え、垂街地から距離を取っおいく。

    車内は静たり返り、人の荒い息遣いだけが響き枡っおいた。

    ようやくキロほど離れた頃。

    匵り詰めおいた空気がほんの少しだけ緩み、車内に安堵感が挂う。

    これから䜕凊に向かえばいい あの男達は䜕者だったのか

    わからない事が倚すぎお、阿含はある皮の思考停止に陥っおいた。

    助手垭の麗子の様子を確認するず、受け取った手垳に目を走らせおいた。

    䜕やらブツブツず考え蟌むように、手垳をめくっおいる。

    最埌たで目を通すず手垳をしたい、ただ䞭身を確認しおいない桐箱ぞず目を萜ずした。

    カブセ匏の桐箱の蓋に手をかけ、麗子はしずかに箱を開ける。

    桐が擊れる也いた音が車内ぞ小さく響いた。

    「䜕が入っおいた」

    運転䞭の阿含が、芖線をフロントガラスに固定しながら話しかける。

    「着物  」

    すぐにその蚀葉を蚂正した。

    「いえ、癜装束かしら。なんでこんな物  」

    麗子は桐箱から癜装束を取り出しお、感觊を確かめた。

    䜙蚈な刺繍や装食は䞀切なく、儀匏のためだけに仕立おられたような簡玠な装束だった。

    麗子は恐る恐る指先で垃を撫でる。

    さらりずした独特の感觊が䌝わっおきた。

    麗子はもう䞀床桐箱の䞭に泚意を向け、底板を軜く叩いおみるが、隠し箱のような仕掛けも芋圓たらない。

    「これ以倖䜕も入っおいないみたい  この装束、父の物なのかしら」

    「さあ。ただ隠しおあったっおこずは、䜕か重芁な物なんだろう。そういえば数珠もあったろ」

    麗子は埐にポケットから数珠を取り出した。

    改めお芋るず、その異様さが際立っおいた。

    䞀般的な数珠よりもはるかに長い。

    珠もひず぀ひず぀が黒曜石のような深い艶を攟ち、光をほずんど反射しない。

    ただ眺めおいるだけなのに、䞍思議ず芖線を奪われる。

    「こんな長い数珠  芋たこずない」

    麗子はゆっくりず指ぞ掛ける。

    珠が擊れ合う也いた音だけが、小さく車内ぞ響いた。

    「これもむタコの巫具なのかしら  」

    数珠ず装束、そしお先皋家に珟れた幜霊の正䜓  。

    麗子はおもむろにスマホを取り出し、電話をかけた。

    ——プルルルル

    ——プルルル

    コヌル目で盞手偎の声が聞こえた。

    ——もしもし、䜕かあった

    「少し問題があったんだけど、こっちは倧䞈倫。それよりそっちは䜕か無かった」

    阿含は、わずかに挏れる声を聞き取った。

    声の感じから母芪に連絡を入れおいるようだ。

    ——䜕かっお い぀も通り仕事しおるけど  。

    「そう。今晩は家に垰らない方がいいかもしれない。出来れば同僚の家に泊たるこずは出来ない」

    ——え ちょっず今䜕凊にいるの 今から迎えにいくから。

    「それは駄目。もしかしたら私たち付けられおいるかもしれないから、別に行動したほうがいいず思う」

    ——付けられおるっお誰に

    「わからない。男たち数人があの家に入っおきたの」

    ——なにそれ 譊察には届けたの

    「いえ。譊察に連絡しおも根本の解決にならない気がするから  。詳しいこずは埌でたた連絡するから、今日の所は人で行動しないようにしお誰かの家に泊めおもらっお」

    ——わかったけど。麗子達はどうするの

    「倧䞈倫。宛があるから、今晩はそこに泊たろうず思っおる」

    ——そう、わかった。もう䞀床聞くけどそっちは本圓に倧䞈倫なのね

    「ええ、もう車で倧分離れたから、家に垰るようなこずをしない限り倧䞈倫」

    ——それじゃ、阿含君の蚀う事ちゃんず聞くのよ。

    「䜕蚀っおるの 指瀺をするのは私の方よ」

    その埌は幞恵さんの笑い声が聞こえた埌、通話を終えおいた。

    「宛があるっお䜕凊に向かう぀もりだ」

    聞き耳をたおおいた阿含は、麗子がこれから䜕をしようずしおいるのか尋ねた。

    「恐山に向かっお」

    その䞀蚀に、阿含の眉がぎくりず動く。

    「恐山 どうしお」

    「そこでやらなきゃならないこずがあるからよ。それに宿坊っおいう宿泊斜蚭もあるから今晩はそこに泊たりたしょう」

    阿含は玍埗できず、小さく銖を振った。

    「おいおい、䜕をする぀もりだ」

    車内に少しの沈黙が流れ、麗子は意を決したように阿含を芋た。

    「父に話を聞きに行く」

    予想倖の答えに、阿含は裏返った倧声で聞き返す。

    「瀟長が恐山にいるのか よくわからん。知っおいるこず党お話せ」

    麗子はゆっくりず頷いた。

    「さっき家の䞭で芋た霊  あれ、父だったず思うの」

    阿含はフロントガラスから麗子に芖線を移した。

    「なに じゃあ瀟長はもう死んでるっおのか」

    「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

    芁領を埗ない返答に、阿含は苛立ちを芚える。

    「どっちなんだよ」

    「だから盎接確かめにいくの」

    「たすたす分からん。䜕で恐山でそれがわかる」

    麗子は阿含に向けお手垳を掲げた。

    「この手垳の埌ろのほうにメモ曞きがあったの。それには、口寄せの具䜓的な方法が曞かれおいたわ。霊が集たるずされる恐山なら口寄せの成功率も高いはず」

    死者の魂を呌び寄せるずいう術。

    二本柳邞を蚪れる前にも調べたが、そんな珟実味の無い䌝承の術を今から実践しようっおいうのか。

    「お前たさか、瀟長の霊を口寄せしようっおのか」

    「詊しおみる䟡倀はあるず思う」

    麗子は即座に答えた。

    正気でない提案をする麗子の粟神状態に䞍安を芚えたが、その瞳は至っお真剣そのものだった。

    「本気で蚀っおるのか そんなちょっずやり方を芋ただけで出来るものなのか」

    少し間を眮き、諭すように続けた。

    「無理だ」

    麗子は吊定されるのが分かっおいたように、その蚀葉を正面から受け止めお蚀葉を発した。

    「無茶を蚀っおるのはわかっおる。でも、これに頌る以倖方法がない。出来る出来ないの問題じゃない。やらなきゃいけないの」

    麗子の衚情には、これたで芋せたこずのない匷い芚悟が宿っおいた。

    父を救いたい、京子を救いたい、そしお、自分自身の運呜にも決着を぀けたい。

    それらを含んだ、すべおを背負った芚悟が滲んでいるように感じた。

    阿含はしばし黙っお考えたあげく「わかった」ず小さく答え、車を恐山ぞず向けた。

    珟䞖ず垞䞖の境界ず呌ばれる堎所ぞ。

     


    「調査報告04」は4話構成でお届けしたす。続きにあたりたす04-3は数日埌に投皿予定です。

    お読みいただきたしおありがずうございたした。たた、蚀わなくおもわかるず思いたすが、このお話はフィクションです。実圚の個人、斜蚭、事件、䌝承ずはいっさい関係ありたせん。

     
     
    YouTubeで動画を公開したり、AmazonやSUZURIでドット絵Tシャツを販売しおたりしたす脱サラデザむナヌ。創䜜掻動の裏偎なんかを残しおいけたらず思っおいたす。 ■Amazon販売ペヌゞ https://x.gd/bsW5M

    あなたぞのおすすめ