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【3぀のお題に 第66回】『テルトル広堎の花嫁』【珟代ドラマ】


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    ようこそ、皆さたセむりチです。

    波打ち際を歩いおいるず、今日もひず぀、ガラスのボトルが流れ着きたした。
    ​䞭に䞞めお入っおいたのは、遠い囜の石畳の匂いず、セヌヌ川の湿り気を含んだ䞀通の手玙——。

    ​今回アナタにお届けするのは、パリの絵描きず、ある婊人が玡いだ切ない挂流蚘です。

    どうぞ、枩かい飲み物を片手にお楜しみくださいね。

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    「モンマルトルの䌌顔絵描き」


    「私の絵を描いおくださらない」

    ​パリ、モンマルトルのテルトル広堎。
    老画家の前に䜇んだ婊人は、気品ある矎しさの奥に、どこか圱を萜ずした瞳をしおいた。

    ​「このたた動かないから  少しだけ、私の昔話を聞いおくださるかしら」

    ​老画家は䜕も蚀わず黙っお頷くず、小さく震える手でむヌれルにキャンバスを立おた。
    炭を握り、デッサンを始める。


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    「午前零時のパリ、最埌のカフェ」

    ​
    「昚日の午前時、近くのカフェでずっず埅っおいた人がいたの。私にずっお、䞖界でたった䞀人の倧切な人。明日、私が遠くぞ旅立぀前に  どうしおも䌝えおおきたいこずがあっお、ずっずずっず楜しみにしお埅っおいたのよ」

    ​圌女は小さく自嘲するような笑みを浮かべ、胞元に手を圓おた。

    ​「でも、どれだけ時蚈の針が進んでも、あの人は来なかった。お店の灯りが消えおも、倜颚の䞭で立ち尜くしおいたけれど  結局、最埌たで姿を芋せおはくれなかったわ。  ふふ、可笑しいでしょう 幌い頃から私を眮き去りにしおばかりの人だったのに、最埌くらいは来おくれるんじゃないかっお、どこかで淡い期埅を捚おきれずにいたのね」

    ​婊人の瞳に薄っすらず涙が浮かび、蚀葉が熱を垯びおいく。
    老画家は唇をかみ締め、必死に顔を䌏せながら、猛烈な勢いで筆を走らせ続けた。
    キャンバスを叩く也いた音が、たるで圌の胞を打぀脈動のように静かな広堎に響く。

    ​「来られない理由があったのかもしれない。私に䌚う顔がないず思ったのかもしれない。でもね  ただ䞀蚀、『おめでずう』ず蚀っお抱きしめおほしかっただけなの。あの方に枡したかった手玙にはね、これたでの恚み蚀なんかじゃなく、ただ『今たでありがずう』っお感謝の気持ちだけを曞いたのよ」

    ​圌女は深く息を吐き、静かに銖を振った。


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    「セヌヌ川に流した手玙」

    ​
    「来なかったあの人を埅ちながら、私は悟ったわ。あの方にずっおの私は、もう過去の幻に過ぎないのだず。だから  昚日枡せなかった手玙は、その足でセヌヌ川ぞ流しおしたったの。暗い川面ぞ消えおいく手玙を芋぀めながら、私はあの人ずの思い出すべおに鍵をかけたわ。だっお  もう二床ず、あの方ずお䌚いするこずもないず思ったから」


    画像
    「モンマルトルの䌌顔絵描き」


    ​やがお、老画家の手がぎたりず止たった。
    圌は䞀床も圌女の顔を芋䞊げぬたた、静かにキャンバスを盞手ぞず向けた。

    ​そこに描かれおいたのは、単なる䌌顔絵ではなかった。
    色鮮やかな祝犏の花束ず、䞖界で䞀番幞せそうに埮笑む——満面の笑みを浮かべた花嫁姿の圌女だった。

    ​「たあ  玠敵な絵ですこず」

    ​婊人は悲しそうに、けれど深く愛おしそうに笑みを浮かべた。
    圌女は提瀺された額よりもずっず倚めの玙幣を画箱の䞊にそっず眮くず、ゆっくりず立ち䞊がった。

    ​「その絵は、そのたたあなたに差し䞊げたすわ。  もう、お䌚いするこずもないでしょうから」

    ​振り返るこずもなく、圌女は背を向けたたた小さく䌚釈をする。

    ​「それでは、どうぞお元気で  お父様」

    ​颚に溶けるような现い声だけを残し、圌女の足音は石畳の奥ぞず遠ざかっおいった。

    ​残された老画家は、握りしめた筆の軞が折れんばかりに力を蟌め、俯いたたた、声を抌し殺しお静かに涙を流した。



    了
    ※この物語はフィクションです。
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    最埌たで読んでいただきありがずうございたす❗😭✚

    幌い頃に自分を眮いお去った父芪。
    文句や恚み蚀を蚀うためではなく、ただ人生の節目に感謝ず報告を䌝えたかった嚘ず、顔を合わせる資栌がないず圱から芋守るこずしかできなかった父芪のすれ違いを描きたした。

    ​盎接蚀葉で「父芪」ず名乗るこずも、「嚘」ず呌びかけるこずもない二人ですが、キャンバスに描かれた「祝犏の花嫁姿」ずいう答え合わせの䞭に、蚀えなかった思いを蟌めおいたす。

    ​石畳に消えおいく足音ず、蚀葉を呑み蟌んで流す涙の䜙韻が、読者のみなさたの心に静かに残れば幞いです。


    【片桐 みかん】さん、玠敵な䌁画をありがずうございたす



    毎週火曜日に自分の䜜品を投皿、䌁画に参加させおいただく時は䞍確定的に投皿したす


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    寄せおは返す波打ち際で、流れ着いたボトルメッセヌゞを拟い集めるセむりチです。 ​ここに䞊ぶショヌトショヌトや日蚘は、すべお海が運んできた「誰かの挂流物」。 い぀かあなたの心に届く蚀葉が芋぀かりたすように。 ゆっくりしおいっおください。

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