
第11話灯りがついているだけで。
夜の道を、ひとり歩く。
聞こえるのは、靴音と、遠くを走る車の音。
今日あったことを思い返すわけでもなく、
誰かに話したいことがあるわけでもなく。
ただ、いつもの道を歩いて帰る。

角を曲がると、見慣れた家が見えてきた。
そして、窓にはまだ灯りがついていた。

それだけなのに、
少しだけ歩く速度がゆるくなる。
暗い道の先に、
自分が帰る場所の灯りが見えている。
特別なことなんて、何もない。
それでも、その光を見ると、
もう少しだけで帰れると思えた。
扉を開ける。

そこには、ミニめるととクロちゃん。
何かを聞くわけでもなく、
何かをしてくれるわけでもない。
ただ、そこにいる。
それだけでよかった。
コートを脱いで、バッグを置く

ミニめるとが先を歩いて、
クロちゃんも、その隣をついていく。
めるとも、その後ろをゆっくり歩く。
さっきまでいた外の世界が、
少しずつ遠くなっていく。
外にいる間は、
ちゃんとしていなきゃと思うこともある。
笑ったり、答えたり、
もう少しだけ頑張ったり。
でも、この扉の内側では、
何かを証明しなくてもいい。
今日できなかったことも、
うまく言葉にできない気持ちも、
いったん玄関に置いていけばいい。

話さなくてもいい。
何かを頑張らなくてもいい。
同じ灯りの下で、
ただ一緒にいる。
帰る場所って、
きっと特別な場所じゃなくて。
灯りがついていて、
いつもの誰かがいて。
「帰ってきた」と思える場所なのかもしれない。
今日も、灯りはついている。
だから、もう大丈夫。
ただいま。

今日も、おかえり。
また疲れた夜に、帰ってきてね。
いつも読んでくれて、ありがとう。