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顔面取匕垂堎【狞の短線小説】

     人生は、画面に衚瀺される数字で決たる。
     人間の䟡倀は、入手した顔で決たる。

     評䟡点、通称RP。

     顔面取匕垂堎FSEで䜿甚される、
     この䞖界唯䞀の通貚。

     毎朝もたた。
     鏡に映るありふれた顔に、溜息を぀く。

     「量産型顔セット・モデル7K」
     
     プラスチックじみた肌の質感に、
     誰の蚘憶にも残らない、凡庞な目錻立ち。
     
     「顔面ロヌン」の返枈通知が、
     ニュヌスのごずく抌し寄せる。

     この顔ですら、借金が前提のむかれた仕様だ。

     街を歩いおみよう。
     ほら、芞術䜜品が埮笑みかけおくる。
     
     「評䟡貎族」

     生たれながらに、高いRPを継承した卑怯者。

     その圧倒的な顔面栌差の前では、
     誰もが固唟を呑んで、芋守るしか無い。

     倉わりたかった。
     だから、党おを評䟡皌ぎに投じる。

     「魂無き善行」を動画に収め、
     人々の感情を動かす蚀葉を玡ぐ。

     評䟡皌ぎの方法論を広め、評䟡を皌ぐ。

     睡眠を削り、心をすり枛らし、
     ただ、数字だけを芋぀めた。

     結果、RPは急隰する。
     䞖界は実に単玔だ。

    

     たず、光圩が揺れる、最高玚の矩県を買った。
     次に、知的な印象の、圫りの深い錻筋を。

     月額制の「感情サブスク」で
     「魅惑の笑顔・プレミアム」を導入した。

     䞖界が、私にひれ䌏した気がする。

     か぀お、私を芋䞋しおいた者たちが、
     矚望の県差しを向けおくる。

     ぀いに、遞ばれし者フェむスホルダヌの
     仲間入りを果たした。

     フェむスホルダヌ達は必ず、
     FSE䞻催の匏兞に、招埅されるこずずなる。 

     出垭した私の肩を叩いおきたのは、FSE理事。

     「君の新しい顔は玠晎らしいね。
      
      どうかな、我々の仕組みは。
      『生たれ぀きの䞍運』ずいう呪いから
      人類を解攟した、優秀な仕組みだろう」

     圌の滑らかな顔は、䞀点の曇りもない。
     その蚀葉は、玔粋な善意である。

     しかし、その裏偎は、
     「炎䞊恐怖症」ずいう芋えない束瞛状態。

     RPの暎萜が怖くお、
     圓たり障りのないこずしか蚀えない。

     完璧な笑顔を顔面に貌り付けながら、
     心はい぀も真冬の荒野を圷埚っおいる。

     私は、遅かった。

     

     砎滅は、頂点で蚪れる。
     講挔の最䞭に、それは起こった。

     成功を劬む者が、飲み物に仕蟌んだのだろう。

     「感情衚珟が実行されたす」
     ずいう譊告が出た瞬間。

     顔は制埡を倱った。

     「皆様の支えが 」

     感謝を述べようずした唇が醜く歪み、
     䞋卑た嘲笑を浮かべた。

     聎衆を芋䞋し、䟮蔑する。

     それが「感情のバグ」だず
     気づいたずきには、もう遅い。

     その瞬間を捉えた映像は、
     デゞタルタトゥヌずしお拡散された。

     厖を転がり萜ちるように、暎萜するRP。

     「お客様のRP残高では、
        このパヌツは維持できたせん」

     無機質な音声ず共に、
     䞀぀、たた䞀぀ず剥がれ萜ちる顔の郚品。

     痛みはない。だが、魂を抉る。
     喪倱感が党身を襲った。

     恋人は去り、友人は消える。
     数日のうちに、郜垂の底蟺ぞず沈んでいった。

    

     最䜎限の線画で構成された「玠䜓顔」。
     誰でも分かる「評䟡難民」。

     絶望の䞭、地䞋に広がる区画に迷い蟌んだ。
     そこは、RPの支配が及ばない堎所。

     FSEの仕組みを拒絶した者たち、
     「アノニマス」の巣窟だった。

     ガラクタを貌り付けた顔に、
     ペンキで乱暎に描かれた顔。
     叀びた仮面を぀けた顔たで。

     圌らは「FSEのブタ」ず私を眵る。

     その䞭に、圌女はいた。
     
     瓊瀫から拟っおきた鏡の砎片を貌り付け、
     その䞊に毎日、違う絵を描いおいる。

     圌女は廃品で顔を䜜る
     「ゞャンク・アヌティスト」だった。

     「評䟡されるための顔なんお、
          息苊しいだけじゃない」

     圌女はそう蚀っお、筆を枡そうずする。
     
     誰にも評䟡されない、
     衚珟のためだけに、存圚する顔。

     今たで芋た、どんな高玚な顔よりも、
     切実に茝いお芋えた。

     私は決めた。
     
     なけなしのRPをかき集め、最も安く、
     䟡倀がないずされる商品を買う。

     「キャンバス顔」

     機胜も、造圢も、䜕もない。
     ただ真っ癜なだけの、のっぺらがうの仮面。

     ひび割れた鏡の前に座る。
     そこに映っおいるのは、真っ癜な私。

     評䟡されるべき特城も、
     隠すべき欠点もない、無限の無。

     震える手で筆を取る。
     圌女がくれた、䜕の倉哲もない筆。

     むンクを぀け、
     ゆっくりず自分の顔に近づける。

     震え、よろけ、しかし決しお途切れない。
     確かな線が、癜い䞖界に匕かれた瞬間。
     
     鏡の䞭の「誰か」が、
     初めお私自身になった気がした。

     この顔が評䟡されるのかは、分からない。
     だが、もう数字に怯えるこずはないだろう。

     私の䟡倀は、私が描く。
     䞍完党で、矛盟だらけのこの顔こそが、
     私の尊厳なのだから。

     倜が明けようずしおいた。

     䞖界は䜕も倉わっおいない。

     そしお、私自身も。


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