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振袖新造はよく眠る

    大和愛

    江戸時代の絵入り草紙・黄表紙を読んでいると、当時の一般的なイメージというものがあることが分かります。

    遊郭での野暮な客とは、おしゃれをしたつもりで出来ていないとか、遊女の言葉を真に受けてちょっとしたことで怒り出すとか。女郎屋の遣り手(女郎たちを監督する係)というと、ケチで口やかましい婆アとか。

    こういう共通イメージがあるからこそ、逆を言えば皮肉になったり笑いになったりするのです。

    例えば「野暮がモテる」とか、「遣り手婆が仏心(優しい心)をもつ」とかいうと、「そんなわけねえだろ笑」という笑い話になるわけですね。

    そのうちの一つに、「振袖新造はよく眠る(居眠りをする)」というのがあります。

    振袖新造というのは、禿(かむろ)から少し成長した遊女見習い。姉女郎に付き従う振袖を来た新米遊女のことです。年齢でいえば十三歳か、十四歳ごろ。

    ちょうど成長期ですから、眠たくって仕方がなくて、よく居眠りをする。そういうことがちょいちょい黄表紙の中にもからかいまじりに出てきます。

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    [恋川春町] [画作]『楠無益委記 : 3巻』,[天明4(1784)]. 国立国会図書館デジタルコレクション

    この画像は恋川春町の黄表紙『楠無益委記』という作品の一場面。作者・春町が、「未来ではこうなってるかもね」と、当時ではありえないことを描いた楽しい未来予想図です。

    このシーンで、
    「遣り手、後生ごころ(仏ごころ)出て、しんぞう夜ねむることなし」
    と出てきます。

    未来には「厳しいはずの遣り手が優しくなって、居眠りばかりしている振袖新造が夜通し寝もしなくなる」という意味で、読者が「そんなバカな」と笑うところ。

    しかし、思えば、私もその年齢のころは、本当に眠くて眠くて仕方がありませんでした。成長期の眠さは馬鹿にできません。寝ててもいいなら10時間でも一日中でも寝れる。生理の辛さからどうしようもなく眠さや貧血が来ることだってある。それなのに、怠けているとかさぼっているとか言われるのが辛かったなー。

    だから黄表紙の中で、こうして居眠りをからかわれている振袖新造ちゃんを見ると、思わず「いやいや、あなたは本当によくがんばってるよ!」と言ってあげたくなるのでした。




    ✅今回紹介した『楠無益委記』という作品ほか黄表紙の名作が読める!当時のレイアウトそのままに現代語訳した「黄表紙のぞき」はこちら👇

    それではまた次回の記事でお会いしましょう~!


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    毎週大河『べらぼう』感想・考察&黄表紙など江戸文化の楽しさを発信。元編集者・現ライター。note11ヶ月で20万ビュー、49週連続特スキの記録あり。 ※アイコンは九鬼匡規作 https://lit.link/daiwadou07

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