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『挫画家の私、平安宮䞭の匱小サロンの女房に転生しちゃったのでBL挫画ずかを描いお無双したす  倚分。』第話 【創䜜倧賞2024・挫画原䜜郚門応募䜜】

    参
     ある日、甘子さたサロンの私のもずを蚪ねおくる人がいた。
    「はい」
    「よろしいでしょうか」
    「どうぞ」
    「倱瀌  」
     切れ長の鋭い目で、錻先が䞋を向いおいる長い鷲錻で、小さいおちょが口、顎先が少し尖った女性が長く綺麗な黒髪を翻しながら入っおくる。
    「あっ  」
    「ごきげんよう、鬌神兵庫さん」
    「は、はい  えっず」
    「申し遅れたした、玫匏郚ず申したす」
    「ああ、どうも  っお、ええっ」
     私は驚きのあたり、埌方に転がりそうになる。
    「  倧䞈倫ですか」
    「え、ええ  」
     私はなんずか䜓勢を立お盎す。
    「わたくしのこずをご存知のようですね、こうしおお目にかかるのは初めおかず思うのですが」
    「そ、それはもちろんご存知ですよ、『源氏物語』の䜜者の方は」
    「お読みいただいおいるのですか」
    「ええ 『いづれの埡時にか、女埡、曎衣あたた候ひ絊ひける䞭に、いずやむごずなき際にはあらぬが、すぐれお時めき絊ふありけり。』  」
    「ほう  『桐壺』の冒頭ですね」
     玫匏郚さんが嬉しそうに頷く。そう、䞖界最叀の長線小説、源氏物語の最初の巻、『桐壺』の冒頭郚分である。これは  いずれの倩皇のご治䞖であっただろうか、女埡、曎衣が数倚お仕えしおおられた䞭に、それほど高貎な身分ではない方で、ずりわけ垝からのご寵愛を受けおおられる方があったずいう意味である。
    「この冒頭の䞀文だけをずっおみおも、優れたお話であるずいうこずがよく分かりたす  」
    「それはいくらなんでも  蚀い過ぎでは」
     私の蚀葉に察し、玫匏郚さんがやや戞惑われる。
    「いいえ、いくら蚀い過ぎおも、蚀い過ぎるずいうこずはありたせん」
    「そうですか」
    「そうですずも」
    「では  どういうずころが優れおいるずお思いなのか、埡芋解を賜りたく
    存じたす」
     玫匏郚さんが尋ねおくる。
    「え、えっず  たず『いづれの埡時におか』、この語り出しは極めおナニヌクです」
    「ゆ、ゆにいく」
    「はい、物語ずいうのは、『今は昔  』ずか、『昔  』ずいう語り出しがポピュラヌなのに  」
    「ぜ、ぜぎゅらあ」
    「垝のご治䞖であるずいうこずを匂わせおいたす。これによっお、読む者は『この物語ず珟実は地続きなのか』ずいう䞍思議な感芚を持ちたす」
    「ふむ  」
    「蚀い換えれば、物語ぞの没入感を加速させる、物語ぞぐぐっず匕き蟌たれるのです  」
    「ふむふむ  」
    「さらに蚀い換えれば、シヌムレスなのです  」
    「し、しヌむれす」
    「リアルからフィクションぞのスムヌズな移行が可胜ずなっおいたす」
    「り、りある ふぃ、ふぃくしょん す、すむうず」
     玫匏郚さんがさきほどから䜕床か銖を傟げおおられるが、私は構わず、話を続ける。
    「続いお、『女埡、曎衣あたた候ひ絊ひける䞭に』  これによっお、宮䞭がどういうシチュ゚ヌションなのかが分かりたす」
    「し、しちゅええしょん」
    「もちろん、圓時の  いいえ、珟圚の宮䞭事情ずいうか、そのバックグラりンドをある皋床は把握しおいるずいうのが前提条件なのですが  」
    「ば、ばっくぐらうんど」
    「それはベリヌディフィカルトなこずではありたすが  」
    「べ、べりいでぃふぃかるず」
    「把握すれば、するするずアンダヌスタンド出来たす」
    「あ、あんだあすたんど」
     玫匏郚さんがなおも䜕床か銖を捻っおおられるのだが、私は構わず、話を続ける。
    「最埌の、『いずやむごずなき際にはあらぬが、すぐれお時めき絊ふありけり』  これによっお、ヒロむンである桐壺の曎衣の宮䞭内におけるピラルキヌのハむアンドロヌが分かりたす  」
    「ひ、ひろいん ひ、ひえらるきい は、はいあんどろう」
    「  これが私が源氏物語のオヌプニングがブリリアントだず感じるオピニオンです  」
    「お、おうぷにんぐ ぶ、ぶりりあんず お、おぎにおん」
    「いかがでしょうか」
    「  えっず  熱意はよくよく䌝わっお参りたした  」
     玫匏郚さんが䜕故なのか戞惑い気味に頷かれる。
    「䌝わりたしたか 私のパッション」
    「ぱ、ぱっしょん」
    「もう、この䞀文だけでなくですね  ああ、さすがに暗誊は無理なので、読み䞊げさせおもらいたすね」
    「は、はい  」
     私は机に眮いおあった、源氏物語の『桐壺』の写本を手に取る。
    「『はじめより我はず思ひ䞊がり絊ぞる埡方方、めざたしきものに、おずしめそねみ絊ふ。
    同じほど、それより䞋臈の曎衣たちは、たしお安からず。
    朝倕の宮仕ぞに぀けおも、人の心をのみ動かし、恚みを負ふ積もりにやありけむ、いずあ぀しくなりゆき、もの心现げに 里がちなるを、いよいよ飜かずあはれなるものに思ほしお、人のそしりをもえ憚らせ絊はず、䞖の䟋にもなりぬべき埡もおなしなり。
    䞊達郚、䞊人などもあいなく目をそばめ぀぀、
    いずたばゆき人の埡芚えなり。唐土にも、かかるこずの起こりにこそ、䞖も乱れ悪しかりけれず、
    やうやう、倩の䞋にもあぢきなう、人のもお悩みぐさになりお、楊貎劃の䟋も匕き出で぀べくなりゆくに、いずはしたなきこず倚かれど、かたじけなき埡心ばぞのたぐひなきを頌みにお、亀じらひ絊ふ。
    父の倧玍蚀は亡くなりお、母北の方なむ叀の人の由あるにお、芪うち具し、さしあたりお䞖の芚え華やかなる埡方々にもいたう劣らず、䜕ごずの儀匏をももおなし絊ひけれど、取り立おおはかばかしき埌ろ芋しなければ、事ある時は、なほ拠り所なく心现げなり。
    前の䞖にも埡契りや深かりけむ、䞖になく枅らなる玉の男埡子さぞ生たれ絊ひぬ。
    い぀しかず心もずながらせ絊ひお、急ぎ参らせお埡芧ずるに、めづらかなる児の埡容貌なり。
    䞀の皇子は、右倧臣の女埡の埡腹にお、寄せ重く、疑ひなきたうけの君ず、䞖にもおかしづき聞こゆれど、この埡にほひには䞊び絊ふべくもあらざりければ、おほかたのやむごずなき埡思ひにお、この君をば、私物に思ほしかしづき絊ふこず限りなし。
    はじめよりおしなべおの䞊宮仕ぞし絊ふべき際にはあらざりき。
    芚えいずやむごずなく、䞊衆めかしけれど、わりなくた぀はさせ絊ふあたりに、さるべき埡遊びの折々、䜕事にもゆゑある事のふしぶしには、たづ参䞊らせ絊ふ、ある時には倧殿籠り過ぐしおやがお候はせ絊ひなど、あながちに埡前去らずもおなさせ絊ひしほどに、おのづから軜き方にも芋えしを、この皇子生たれ絊ひおのちは、いず心異に思ほしおきおたれば、坊にも、ようせずは、この埡子の居絊ふべきなめりず、䞀の皇子の女埡は思し疑ぞり。
    人よりさきに参り絊ひお、やむごずなき埡思ひなべおならず、皇女たちなどもおはしたせば、この埡方の埡諌めをのみぞなほわづらはしう、心苊しう思ひ聞こえさせ絊ひける。
    かしこき埡蔭をば頌み聞こえながら、おずしめ疵を求め絊ふ人は倚く、わが身はか匱くものはかなきありさたにお、なかなかなるもの思ひをぞし絊ふ。埡局は桐壺なり。』」
    「  」
     源氏物語を玫匏郚さんの前で朗々ず読み䞊げおしたった  なんず畏れ倚いこずを  ずいうか、叀文特有のくずし字もスラスラず読める  。いやあらためお転生っお䟿利だな。ちなみに蚳は割愛する。かい぀たんで蚀うず、ヒロむン桐壺の曎衣が垝から倧倉なご寵愛を受けお、呚囲から嫉劬される。容姿の優れた皇子䞻人公の光源氏を生み、垝からはたすたす倧切にされるが、呚囲からの目は䞀局厳しいものずなっお、気苊劎が増える  ずいうようなこずだ。すごいかい぀たんだけど。私は写本を眮いお、玫匏郚さんの方に向き盎る。
    「  ず、ずにかくですね」
    「は、はい  」
    「この文章を壮倧なミュヌゞックに乗せお、黒地の画面に黄色い文字でオヌプニングクロヌルずしお流したいくらいなんですよ」
    「みゅ、みゅうじっく おうぷにんぐ、く、くろうる」
    「それくらい芋事な文章です」
    「ど、どうもありがずうございたす  」
     玫匏郚さんが頭を䞋げられる。
    「ああ 頭をお䞊げください」
    「  わたくしからも簡朔にではございたすが感想を  」
     玫匏郚さんが頭を䞊げられる。
    「」
    「぀い最近発衚なされたあの挫画、たいぞん面癜うございたした」
    「あ、ああ  」
    「犬ず猫の目線から人の䞖のさたざたなこずを捉えお、あれこれず䌚話させる  犬や猫にずっおみれば、人のこずなどすべおが䞍思議に映るのでしょうね。ひず぀ひず぀のお話が短くたずたっおいるのも良かったです」
    「あ、ありがずうございたす  」
    「ですが  」
    「ですが」
    「長いお話も芋おみたいず思いたした」
    「ああ、そうですか  」
     私は自らの埌頭郚を抑える。玫匏郚さんが付け加える。
    「読んだ者の勝手な意芋です」
    「  実は」
    「実は」
    「うさぎずき぀ねずたぬきも登堎させようず思っおおりたす」
    「 たあ、それはそれは  」
    「そういう考えなのですが、なかなか難しいですね」
    「  出来たすよ」
    「え  」
    「短期間でこれだけの挫画を描ける方ならば、きっず描けたす。劎力に芋合った成果は必ずやもたらされるはずです  」
    「そ、そうでしょうか」
    「ええ、うさぎずき぀ねずたぬき、楜しみにしおおりたす  」
    「」
     玫匏郚さんが私に向かっお、にっこりず埮笑んだ。
    「それでは、今日はこの蟺で  」
    「はい  」
    「たたお話をしたしょう、倱瀌  」
     玫匏郚さんがその堎を去る。
    「  よし」
     私は筆を執っお、真っ癜な玙に向かうのだった。


     
     
     
    挫画・サッカヌ・歎史・ミスチル・高橋留矎子先生が奜き。web小説で掻動。 䞻な掻動実瞟 『週刊少幎マガゞン原䜜倧賞』奚励賞受賞。 『くらげバンチスポヌツ挫画賞』期埅賞䜜品受賞。 amidanotonmaji@gmail.com

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