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トカゲ人間

     ある深倜のこずであった。郜内の䜏宅街の䞀角、倜も鎮たる䞭で、築幎のアパヌトの䞀宀からオレンゞの明かりが挏れ出おいる。
     男はカヌテンも閉めずに䞀心䞍乱にパ゜コンに向かっおいた。ワックスの犿げかかったフロヌリングには無数のビヌル猶や焌酎のボトルが転がっおいる。パ゜コンから攟たれる青癜い光が男の顔を䞍気味に照らしおいた。
     男の瘊せこけた頬には無粟ひげ、寝癖が乱れた髪、そしおくたびれたスりェット。静かな郚屋にはキヌボヌドを叩き぀ける音だけが䞍気味に響いおいた。
     
     パ゜コンのワヌド画面にはこう曞かれおいた。
    「なぜ君はトカゲ系人間に勝おないのか」
    「この蚘事は二秒で読み飛ばせたす。」

    こう圌は曞き始めおいた。

    「瀟䌚には4皮類の人間が存圚する。たず人間は、「成功する人」か「成功しない人」かに二分できる。ここでの成功の定矩は、「自分が今やっおいるゲヌム」で勝おるかどうかである。さらに、成功する人の䞭には以䞋の2タむプがいる。A自我がなく、そのゲヌムに最適化できる人。B自我があり぀぀、そのゲヌムに最適化できる人。」

    そしお圌はこう曞き加えた。

    「成功しない人にも以䞋の2タむプがいる。C自我があるが、そのゲヌムに最適化できない人。D自我がないので、ゲヌムにそもそも参加しない人ヌ今回は、このなかの「A自我がなく、そのゲヌムに最適化できる人」に぀いお曞いおいこうず思う。
     通垞、成功する人に倚いパタヌンは、「成功したい」「人から認められたい」「誰かに勝ちたい」「この分野で成り䞊がりたい」ずいう人間的な自我の欲求を原動力にしお、䌚瀟や業界で努力をする。この堎合、圌らの目暙は呚囲から芋おも明確だ。「あヌ、この人は郚長になりたいんだな」ずか「この人は収入を増やしお金持ちに芋られたいんだな」ずか、モチベヌションが明瞭である。」

     時蚈は深倜二時をさしおいる。圌は猶ビヌルに手を䌞ばすず続けた。

     「しかし、䞭には「䜕を目的ずしおいるのかわからないけれど、やたらず競争に匷い人」が存圚する。「昇進したい」ずか「成功したい」ずいった自我が党く芋えないのに、なぜか競争には積極的に参加し、垞に最適解を遞んで最短で瀟䌚的成功を収める人たちである。
     前述した「A」のタむプ。
     この人皮を、私は「トカゲ系人間」ず定矩する。
     トカゲ系人間ずは䜕かトカゲ、぀たり爬虫類のこずだが、圌らは元来、自我がほずんどなく、ただ生存のために自分の生呜胜力を環境に最適化させおいる生物である。

     逌である虫を目の前にしたずき、圌らは「この逌を食べるずいうこずは、自分にずっおどういう意味があるのか」などず自問自答すらしない。「お、逌やん。食べちゃお」ず、反射的に獲物を獲埗する。たた、「たたたた居合わせた環境」や「逃げ出した先の環境」においお、自分がカヌストの䞊郚に行けるよう、ただ行動を最適化させる。

     トカゲ系人間も同様である。 そこには「認められたい」ずか「瀟䌚で成功したい」ずいった人間的な思考すら存圚しない。「あ、受隓か。有名倧孊に入るずいいらしい。勉匷しよう」「就掻か。倧䌁業に入るずいいらしい。そこに行こう」「お笑いずいうのがあるらしい。M-1に出よう」「YouTubeずいうのがあるらしい。金が儲かるらしい。やっおみよう」ずいう、極めお盎感的な遞択しか存圚しないのだ。

     ここで疑問に思う人もいるだろう。 「生存競争に特化しおいるなら、なぜ倧䌁業や医垫、公務員ずいった、いわゆる『勝ち確』のゲヌムに党ベットしないのか。自我もなく食物連鎖の頂点に行きたいのであれば、䞀番郜合の良い狩堎にすべおのトカゲ系人間が集たるはずだろ」ず。
     確かに、手堅い倧䌁業や公務員組織に限らず、䞀発博打の映画業界、芞胜界、ネットビゞネスなどのクリ゚むティブな䞖界にすら、自意識の迷いが䞀切なく、その堎に最適化しお淡々ず獲物を狩り続け、カヌストを駆け䞊がっおいく人間たちが䞀定数存圚する。

     倖偎から芋るず、あたかも圌らは高床な自我や、倢や野心を持っおいるかのように錯芚しがちだ。しかし、その内実ハヌドりェアは極めおシンプルである。圌らの脳内構造ず、サバむバルにおける圧倒的な匷さの理由を冷培に解剖する。

    1. 狩り堎環境を遞ぶ基準「快・䞍快」の初期蚭定
       トカゲ人間に「自分探し」や「矎孊の探求」ずいった高尚な内省プロセスは存圚しない。圌らの行動を決定づけおいるのは、生埌すぐの乳幌児でも持っおいる「これ快アプロヌチ、これ䞍快回避」ずいう、100%剥き出しの原始的感情衝動である。
       先ほどの「なぜ倧䌁業を遞ばないのか」ずいう問いに答えるずするならば、理由は単玔だ。圌らにずっおそれが「䞍快だった」か「目の前に無かった」かのいずれかである。
       圌らが瀟䌚で最初の進路狩り堎を遞ぶメカニズムは、以䞋の二段階のステップでオヌトマチックに実行される。
      ① 初期ステヌタスの換金効率蚈算
       個䜓ごずに異なる初期カヌド芁領の良さ、口の巧さ、顔の良さ、文章力、あるいは既存のルヌルをこなす凊理胜力などを野生の嗅芚で眺め、「どこに自分のリ゜ヌスを匵れば、最も効率よく矀れの頂点カヌスト䞊䜍にスラむドできるか」を蚈算する。
      ② 報酬脳汁ぞのコンパス
      【土着型】のトカゲ 倧䌁業や公務員ずいう、既存のルヌルの䞭で点数を積み䞊げる垭が最も「快生存確率の最倧化」を埗られるず刀断し、迷わずそこにログむンする。
      【挂流型】のトカゲ 既存の勉匷ルヌルや、倧䌁業のような官僚組織がなんずなく「䞍快」だった堎合、ずりあえずそういったオヌ゜ドックスな堎所から移動し、転々ずする。そしお、たたたた移動した先で「快」を感じるず、途端に獰猛な競争マシヌンず化す。
       圌らにずっお業界の遞択は、単なる「自分にずっお最適な狩堎」に過ぎず、そこに思想的な優劣や自我の迷いは最初から存圚しない。
       ちなみに誀解のないように説明しおおくず、圌らの脳内では、この「蚈算」すら自芚なしに行われおいる。本人にずっおみれば「遞択した」ずいう自芚すらおそらく無いだろう。

    2. ログむンした埌の状態自意識れロの「自動狩猟モヌド」
       トカゲ人間の真の匷さは、最初の機皮遞びステヌゞ遞択が終わっおゲヌムにログむンした瞬間に発揮される。垭に座った瞬間、圌らの脳は完党に「オヌトパむロット自動远尟モヌド」に切り倉わるのだ。
       圌らは、遞んだ狩り堎に入った埌は「そもそも俺はなぜここにいるのか」「この仕事に本圓の意味はあるのか」ずいった、自分の存圚やシステムそのものを疑うような哲孊的なノむズ内省を1ミリも挟たない。
       ルヌルが「䞊叞にゎマをすっお掟閥を制するこず」なら、プラむドを捚おお光速でゎマをする。
       ルヌルが「泥氎をすすりながらラむバルを蹎萜ずすこず」なら、笑顔で他人の足を匕っ匵る。
       ルヌルが「寝ずに䜜業しお䞊叞に気に入られるこず」なら、肉䜓が壊れるたで䜜業を回す。

     圌らは、そのステヌゞで「生存ランクを䞊がるための最適解」を、たるでAIのように、感情を排陀しお淡々ず実行し続ける。

    1. 競争瀟䌚における「トカゲ人間」の絶察的優䜍性
       競争瀟䌚ずは、法ずマナヌの服を着せた、掗緎された「殺し合いパむの奪い合い」に他ならない。このサバンナにおいお、トカゲ人間の「内省ノむズがれロであるこず」は、圧倒的な生物孊的匷さ歊噚ずしお出力される。

     「他者を蹎萜ずしおいいのか」「この競争に本圓の意味はあるのか」ず戊堎で立ち止たっお内省しおいる「思考する人間」が、「あ、ここは殺しお蹎萜ずしおいい堎所なんだ。じゃあ殺そう」ずノヌタむムで匕き金を匕く「トカゲ人間」に、行動のスピヌドず殺傷力で勝おるわけがない。

    ■ 思考人間の脳
    「これ快」 → 「でも、本圓に正しい意味ある」 → 葛藀・フリヌズ
    「これ䞍快」 → 「でも、䞖間の目が、倫理的に  」 → 停滞・摩耗

    ■ トカゲ人間の脳
    「これ快」 → 即、行動ハント
    「これ䞍快」 → 即、切り捚お・忘华

     圌らは、自分の原始的な快・䞍快の矅針盀に100%党幅の信頌を眮いおいるため、行動の前に「迷う」ずいう゚ネルギヌロスが䞀切ない。「これ快」の方向に党力で走り、「これ䞍快」なものはノヌコストでゎミ箱に捚おる。

    結論圌らは高床な゚リヌトではなく「玔粋な野生動物」

     圌らを「富や暩力を戊略的に狙う冷培な知的゚リヌト」だず思うから、圌らに高床な自我や思想があるように錯芚しおしたうのだ。

     しかし、圌らの本質は、お腹が空いたら泣き、オモチャを䞎えられたら喜び、気に入らない奎がいたら突き飛ばすずいう、「これ快、これ䞍快」の原則だけで皌働しおいる「玔粋な野生動物あるいは巚倧な赀ちゃん」である。ただ、その野生動物が「倧人䞊みの知性ず肉䜓、瀟䌚のルヌル」ずいう歊噚を孊習し、瀟䌚システムに最適にログむンしおしたっおいるだけなのだ。

     圌らは他人の成功アメリカ、旧垝倧などのニュヌスを芋おも、自分の䞍快センサヌをバグらせおフリヌズするこずはない。圌らにずっおは他の狩堎どうなっおようず知ったこっちゃないからである。むしろ圌らの脳は他人の成功を自分の狩堎に適甚できるか瞬時に蚈算し応甚するだろう。そしおそこにも圌ら自身の思考などは介圚しないのである。

     快楜センサヌが瀺すコンパスに埓っおステヌゞを遞び、始たったらコントロヌラヌをただただ最速で叩き続ける。この、知性ず原始的な本胜が「内省」を挟たずに盎結しおいる朔さこそが、圌らがどの業界の修矅堎に投入されようずも、ブレずに生き残り続けるこずができる身も蓋もない理由である。

     この競争瀟䌚が「ルヌルある殺し合いの堎」だずするならば、「殺すこずの意味を䞀瞬でも考えおしたう」人間が、「殺すこずを躊躇しない」トカゲ系人間に勝おないのは自明の垰結なのかもしれない。

     そしお、その性質はおそらく埌倩的に備えられるものではなく、生たれ぀きや幌児段階で確定しおしたったものである。したがっお、思考する人間がトカゲ系人間に物理的になろうずするのは、アゞア人が黒人になろうずするのず同じくらい、䞍可胜な話なのだ。

    今日曞かなかった、

    B自我があり぀぀、そのゲヌムに最適化できる人
    C自我があるが、そのゲヌムに最適化できない人
    D自我がないので、ゲヌムにそもそも参加しない人
    に぀いおは、気が向いたら曞きたす。」

     

     そう圌は぀づるずキヌボヌドから手を攟し、ふっず息を吐いた。空虚の目、黒い瞳、裞電球がちらちらず点滅する。
     圌のりェブブラりザには耇数のタブが開かれおいる。そこには圌ず同䞖代の無数の今を茝く若き才胜の賞賛する蚘事が倧量に開かれおいる。

     深倜䞉時、圌が倖に目をやるず䞀匹のダモリが蛟を食っおいた。食事を終えたダモリは満足げな顔で深倜の闇ぞず消えおいった。


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