
気づいていないふりをしていた・第6話
第6話「完璧な夫の、小さな綻び」
誠司は、嘘が上手い。
それに気づいたのは、結婚して三年目のことだった。
義母の誕生日プレゼントを、私が選んで用意したのに、誠司は「俺が選んだ」と言った。悪意があったわけじゃない。義母を喜ばせたかっただけだと思う。でも私は、その時初めて知った。この人は、必要だと判断したとき、迷わず嘘をつける。しかも、顔色一つ変えずに。
怒りはなかった。ただ、覚えておこう、と思った。
それ以来、誠司の嘘を数えたわけじゃない。でも頭の片隅に「この人は嘘をつける」という事実が、小さくしまわれていた。七年間、ずっと。
その記憶が、最近、少しずつ前に出てきている。