
ジャン=フランソワ・ミレー(伝)〈肥を撒く人〉|Le Cabinet de Chineur名画の裏道を歩く、物好きの蒐集室。|荒川騷香
収蔵品001|肥を撒く人

ジャン=フランソワ・ミレー(伝)
《肥を撒く人》
制作年不詳
油彩・カンヴァス
65.2 × 81.4 cm
Le Cabinet de Chineur 蔵
来歴
本作は、ミレーが渋沢栄一の招きで来日した際、埼玉県深谷付近で描いたと伝えられる一点である。
本作は、埼玉県深谷市近郊の旧家の蔵二階に、長らく掛けられていたと伝えられる。
家の者の間では、
「ひいひい爺さんを、どこかの外国の絵描きさんが描いてくれたもの」
として知られていた。
ただし、その評価は決して高いものではなかったらしい。
というのも、画中の人物は妙に脚が長く、腰の位置も高い。
家族の記憶に残る先祖の姿とは、どうにも釣り合わなかったのである。
そのため長年、親族の間では、
「やっぱり外人さんだから、日本の百姓を描くのは下手だったんだろう」
という、きわめて素朴な結論で片づけられていた。
しかし後年、蔵の整理の折に本作が再発見され、専門家の目に触れたことで、画面構成や人物の重心、土と空気の扱いに、ジャン=フランソワ・ミレーの作風との類似が指摘されるようになった。
もっとも、真贋についてはいまだ確定していない。
作品解説
肥桶を担ぎ、柄杓で肥を撒く農民の姿には、ミレーが生涯を通じて描き続けた労働者へのまなざしが感じられる。
しかし本作において特筆すべきは、視覚のみならず嗅覚にまで訴えかけるような、異様なまでの現場感である。
館長メモ
名画とは、時に蔵の二階で「足の長すぎる爺さんの絵」として眠っている。