誠実
「誠実な人と付き合いたい」
友人の大倉愛花は地元で2軒しかない居酒屋の
よく人が集まらない方の 居酒屋 ふたり
1番奥の席で頬を赤らめた愛花はそう言った。
愛花は、誠実な人と付き合いたいのに
近寄ってくる人も近づいて蓋を開けた人も
どちらも誠実なんて人とは程遠くて
私は一生このまま誠実とは程遠い
関係を築いてだらしない
あの時に卑下していた大人に
成り下がっていくのかな、嫌だな
そう またひとつ言葉を溢した。
僕は説教くさくなる自分の性格が
嫌いで言いたくなる言葉たちを
手元のぬるくなったビールを喉に詰めて
言葉を殺そうとしたが酔いが早々に
回り、止めていた言葉たちが口を飛び出す
それって好きになる人 タイプの人 が
たまたまクズと世間で言われてる人間
というだけで それはもうあなたが変わる事
しかないんだと思うんだよ
音楽とか映画とかご飯とかって
好きな味とか雰囲気はさ
大人になるにつれて良くも悪くも変わるじゃない?
愛花は昔から悪い男に引っかかっている
引っかかっているというより撒き餌をぶら下げて
その男を引っ掛けていることのようにも見えるの
だからこれから変わるかもだし大丈夫だよ
と長々とお酒で呂律が回らないはずなのに
たくさんの言葉を伝えた後、自分でも
少し驚いた。愛花の表情を枝豆をつまんだ際に
横目に見ると言葉通りの大粒の涙を流していた。
僕たち以外のお客さんがいないことで
僕らの話を聞いていた店主が口を出したそうに
僕らを見ていて ??? とした顔をすると
頼んでもない 特製フレンチトースト という
田舎の居酒屋にしては美味しすぎると
甘党が集まるほどに
人気のデザートメニューを持ってきて
目の前に座り これをお食べ という
愛花と僕はありがとうございます と言って
それぞれフレンチトーストを食べる
店主はひとりごとのように
「まぁ〜、誠実性な〜、難しいよな笑」
「君は、誠実な人がどんな人間と関わるか分かる?」
「分からないです」
「誠実な人はね 誠実な人と関わるんだよ
関わるというより繋がって行くの方が
表現が正しいのかな」
「私だって誠実なんです!真面目に生きてるの」
「昔僕もメンヘラでね 色々見てたんだけどさ
君って恋愛テクとか沼らせるコツ 追わせる恋を
させるには なんていうsnsの情報を参考に
恋愛してたりしない?」
「してます。それで落としたこともあります」
「でも、それで落として付き合った人には
落とした時のあなたで居続けなければ
いけなくて素直になれた経験ないでしょう?」
「そうなんです。いつもそうなんです。
で、素直でいると誰も私に興味なんて
ないんです メイクして少し嘘ついて
にこにこしてる方がモテるんです」
「愛花ちゃん?だっけ、あのね
恋愛テクなんてもので付き合えてもね
所詮それまでの男なんだよ
誠実な人と付き合って生きていくのか
表面上だけの頭が悪い男と付き合うのか
どっちを選ぶかで方法って変わるよ」
「誠実な人と付き合いたい」
そう愛花は言って泣きながら
フレンチトーストを一口ずつ
口に運んでいった。
店主は 偉い!良い子!大丈夫だよ!
そう居酒屋 の 店主は腕を組みながら
愛花を鼓舞したのちに時計を見て
20:00からの予約をしていた
お客さんのコースを支度しに厨房へ
また戻っていった。