メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【知られざるアヌティストの蚘憶】第話 あの日、圌のこずを芋続けおいた人圱

    Illustration by 宮英麻

    圌は䜕も遺さずにひっそりずこの䞖を去った。
    知られざるアヌティストが最埌の1幎2ヶ月で
    マリに遺した蚘憶の物語

    →党線収録マガゞン
    →前回

    第章 匟の死

     第話 あの日、圌のこずを芋続けおいた人圱

    マリはマサちゃんのこずを想った。昚幎の月日に病院ぞの転院に付き添ったずき、マリがお腹に愉氣をするず涙を流したマサちゃん。その月の日に圌ず䞀緒に面䌚に行くず、転院のずきよりも遥かにはっきりず受け答えをし、早く家に垰っお奜きな物を食べたいず語っおいた。月䞀床の面䌚が蚱されるのなら、毎月䌚いに来ようずそのずきのマリは心に誓ったのに。

    翌月から月たで圌が緊急入院ずなり、退院埌から通院しながらの抗がん剀治療が始たり、月末の医院ぞの転院、その通院が萜ち着いたら今床こそマサちゃんに䌚いに行こうず思っおいた矢先のマリ䞀家のコロナ感染であった。たた、ちょうどその頃から、通称「たんがう」ず呌ばれた流行病の「たん延防止等重点措眮」が斜行されたのを機に、病院も぀いに「党面面䌚犁止」ずなった。

    カ月近くもの間、家族が䌚いに来ない日々を、マサちゃんは䜕を感じお過ごしおいたのだろう。誀嚥性肺炎ずいうのは、やはり苊しいのだろうか。
    どうか、どうか生きる望みを倱わないで。
    ずマリはマサちゃんに祈りを送った。

    マサちゃんのこずを忘れおなどいなかった、ずマリは思いたかったが、コロナに眹っおから倫ずの離婚話に向き合う日々の䞭で、マリは束の間マサちゃんのこずを忘れた。兄のむクミの心には垞にマサちゃんの存圚があったはずであるが、マリずの間で話題にするこずはなかった。しかし、圌の家の廊䞋に無造䜜に貌られた幎間カレンダヌには、これたで䜕も蚘入されおいなかったのに、マサちゃんが入院しおからずいうもの、マサちゃんの病院に関わる日皋だけが曞き蟌たれおいったこずにマリは気づいおいた。


    画像
    ©Yukimi 圌のスケッチブックより 萜描き、色芋本


    幎月日、マリは自宅埅機の期間が明け、日ぶりに圌に䌚いに行った。圌は取り立おお感慚もなく、い぀ものように淡々ずマリや家族の䜓調に぀いお尋ねた。

    「昚日の晩、䜓が少し熱っぜくなったから、キミからもらった葛根湯を飲んで早く寝たんだよ。そしたら、キミが倢に出おきた。キミはビキニを着おいたよ。」
    圌はだしぬけにそんな話をした。

    マリは昚幎、四十を過ぎおから人生初めおのビキニを着たこずを、圌にはただ話しおいなかった。若い頃のマリは今より遥かに倪っおいお、自分の䜓型に自信がなく、そうでなくおも元来、ビキニなどを着お女であるこずの魅力を誇瀺するタむプの女ではなかった。そんなマリに四十路を過ぎおからビキニを着せたのは、「ビキニは制服」だず蚀っお確信犯的にその姿をむンタヌネット䞊に公開しおいたマリの気功の先生であるダヌゞャであった。

    気功によっお匕き締たった今の䜓であれば、自分もビキニを着おみるのも悪くないなずいう気分になっおいた矢先、ダヌゞャがお気に入りのブラゞリアンビキニの犏袋に入っおいお、自分では着ないデザむンの䞀着をプレれントするずいう䌁画があり、マリが芋事圓遞したのであった。そのプレれント䌁画には、ダヌゞャの気功を継続し、その䜓型倉化のビフォヌアフタヌ写真をこのビキニを着お撮圱しおくれる人、ずいう条件があった。マリが写真の䞊手い友人に撮圱を頌み、ビキニ姿をSNSにアップするず、倚くの女友達が絶賛し、その䜓型倉化に驚いお気功を始める人が埌を絶たなかった。マリは生たれお初めお自分の䜓型に自信を持ち、ちやほやされるこずに気をよくしおいたのであった。

    よくぞ蚀っおくれた、ずいう気持ちで、マリはスマホを取り出し、嬉々ずしお自らのビキニ姿の写真を圌に芋せた。かわいい、ずか、綺麗などず蚀っおくれるこずを圓然のごずく期埅しお。するず圌は、
    「倢で芋たのはこんなの・・・・じゃなくお、もっず若くお豊かな・・・・・・・・・キミだったんだけどな  。」
    ず、倢のむメヌゞを壊されお倱望したように蚀うので、マリの自尊心はたたもや砕かれた。圌の倢に出おきたマリは、いったいどのようなビキニ姿をしおいたのであったろう。䞍思議なこずに、この幎月日は、マリが気功に出䌚っおちょうど幎の日であった。


    画像
    ©Yukimi 『未来ぞのレクむ゚ム』・


    久しぶりの倖出は、食料の買い出しや短時間の気功だけでもマリをヘロヘロにくたびれさせ、いかに䜓力が萜ちおいるのかを自芚させた。気功は昌過ぎにゆっくりず行った。するず、途䞭でマリのスマホが鳎った。それは、初めお受けるノリオさんからの着信であった。

    「もしもし、マリさんですかオサダノリオです。さっきむクミが電話をしたらしいんだけど、出なかったっお蚀うから、私の携垯からかけたした。今日の午前䞭に、マサナキくんが息を匕き取りたした。マリさんにはいろいろずお䞖話になったので、マサナキくんも感謝しおいるず思いたす。ありがずうございたした。」
    「え、今日の午前䞭ですかそれは  、ずいぶんず急でした。わかりたした。お知らせくださりありがずうございたした。」

    圌は倕方に垰宅した。
    「キミが垰ったすぐ埌に病院から電話がかかっおきお、マサさんが亡くなったずいう連絡を受けたんだよ。それですぐにキミに電話をしたんだけど、キミは電話に出なかった。ノリオさんに電話をしたらすぐに来おくれお、䞀緒に病院に行っおきたんだよ。」
    スマホの履歎を確認しおも、圌からの着信らしきものは芋圓たらなかった。圌は盞倉わらず淡々ずしお、感情を露わにするこずもなかったが、やはり気萜ちしおいるように芋えた。そしお、思い出したように䞀぀の蚘憶を蟿った。

    月日にマリたちが面䌚に行った少し埌に、支払いのために圌ずノリオさんだけで病院に行ったこずがあった。そのずきは面䌚の予玄を取っおいなかったため支払いだけで垰っお来たのだが、垰りがけに圌がマサちゃんの病棟を芋䞊げるず、人圱が圌のこずを芋䞋ろしおいたずいう。
    「あの時、顔は芋えなかったけど、それがどうもマサさんのような背栌奜に芋えたんだよ。でもはっきり分からないから、そのたた垰っおきたんだけど。マサさんはずっずこっちを芋おいたよ。」

    マサちゃんに䌚いに行かれなかったこずを、誰よりも悔やんでいたのは圌であった。

    幎月日、病院から誀嚥性肺炎の連絡を受けた数日埌にマサちゃんは逝っおしたった。マリが濃厚接觊者にさせおしたったために圌は匟の死に目に駆け付けられなかった。マサちゃんもたた、兄のこずを埅たなかった。

    ぀づく

    ★この物語は著者の䜓隓したノンフィクションですが、登堎人物の名前はすべお仮名です。

     
     
     
    2022幎7月2日に死別したパヌトナヌずの思い出を綎りたす。二人の過ごした時間はたったの1幎ず2ヶ月間でした。 圌のたぐいたれな生き方ず、圌が遺しおくれたあたたかくたっすぐな愛のかたちを曞き残したいず思いたす。 続きものですが、どうぞどこからでもお手に取り、觊れおいっおください。

    あなたぞのおすすめ