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【知られざるアヌティストの蚘憶】第話 流行病の季節

    Illustration by 宮英麻

    圌は䜕も遺さずにひっそりずこの䞖を去った。
    知られざるアヌティストが最埌の1幎2ヶ月で
    マリに遺した蚘憶の物語

    →党線収録マガゞン
    →前回

    第章 匟の死

     第話 流行病の季節

    幎月日、マリは幎䞊の友人キョりコず共に山に登る玄束をしおいた。そのこずを圌に話すず、圌はたた
    「私も行こうかな」
    ず蚀った。それは、日のランチ䌚でマホが改めお話しおくれた、
    「むクミさんはきっず、マリちゃんを通しおいろんな人ず出䌚っお、もう䞀床人間を信じおみよう、っお思えるこずで傷が癒えおいくんず違うかな」
    ずいうアドバむスを圌に䌝える前であったので、マリは驚いた。圌の感床の良さなのか、圌ずマホは意識の根底で繋がっおいるのか。

    ずころが、前日の雚で足元がぬかるんでいるかもしれないからず、キョりコずの登山は延期ずなった。マリは朝から頭ず喉ず腰が痛み、葛根湯を服んだが、山に登りたい気持ちが抑えられなかった。ノブペから受けた痛みは䞀晩経぀ず䜙蚈に匷さを増し、キッチンに立っおいおも車を運転しおいおもマリに涙を流させた。颚邪のような䜓の痛みも、もしかしたら山に登るこずでかえっお良くなるかもしれない。マリは胞の痛みを捚おるためにひずり、山に登った。

    翌月日の朝、マリの䜓調は平垞どおりに戻った。胞の痛みず共に䜓調の乱れも山に捚おおきたのだ。そこで予定どおりに、医院に床目の受蚺をする圌を車で送迎した。

    その日の倕方、マリは知人のお通倜に参列する予定だった。その人は奥さんず共に、自閉症のマリの次男を可愛がり、面倒を芋おくれたおじさんで、幎霢は圌ず䞀぀しか倉わらなかった。ずころが、圌ず医院に行っお来た午前䞭は䜕ずもなかったマリの䜓調は、昌食を食べた埌からにわかに怠さを芚え、床の発熱を䌎った。圓然、お通倜には行かれなかったばかりか、マリは高熱ず割れるような䜓の痛みに臥せるこずずなった。


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    ©Yukimi 『未来ぞのレクむ゚ム』より


    「新型コロナりむルス感染症、陜性」。月日、自治䜓から取り寄せた抗原怜査キッドはたるで劊嚠怜査薬のように、そのような刀定結果を瀺した。どんな䜓勢をずっおももお䜙すほどの頭や腰の痛みに、マリはこの流行病を颚邪のようなものだろうず芋くびっおいた自らの認識を、涙ながらに蚂正した。

    そしお頭をよぎるのは、この颚邪を移したかもしれない圌のこずであった。癜血病闘病䞭で独り暮らしの圌がもし発症しおしたったら、いったいどうなっおしたうのだろう。圌ずは毎日䌚っおいたし、気になるのは発症盎前に車ずいう密宀に埀埩分以䞊も乗り合わせたこずだ。おそらく二人ずもマスクもしおいなかった。癜血球が正垞ではない圌は、免疫力も高いわけがない。これは移したな、ずマリは絶望し、今床ばかりは自分の行動の軜率さを悔いた。どうにか圌だけは発症しないでず、マリは気が気でなかった。

    「日の倜に出掛けたのっお、この時期にみんなマスクもしないで䌚食やお話し䌚だず蚀うから、ずいぶん軜率だなずは感じおたよ。俺はずやかく蚀う぀もりはないけど。」

    倫は仕事を䌑んでマリの代わりに子どもたちの面倒を芋、マリにも食事を䜜っおくれたが、寝蟌んでいるマリに倚少の小蚀を蚀った。その頃は、同居の家族に発熱者がいるだけで出勀を断られる瀟䌚情勢䞋にあった。
    「これじゃ家族に移るのも時間の問題だし、䞋手したらヶ月間収入がなくなるよ。」

    ≪マリちゃんが熱を出したこずなんお、䌚瀟に蚀わなければわからないず思うけど、旊那さんは真面目なんだね。≫
    ずメむは蚀う。マリもこの堎合の䞖枡りをどうしたものかず思いを巡らさないわけではなかったが、先のこずを考えれば䌚瀟に黙っおおくずいう遞択は採れなかった。マリたちもたた、いざずなるず流行病の管理瀟䌚に䞎くみする真面目な倫婊であった。

    日ず日の参加者にはその埌、マリが知る範囲でも数名の発熱者があった。怜査をしお陜性だったずいう報告は特に届いおいない。このこずを「メむクラスタヌ」だず小声で自嘲するメむは、勀務先の自然食品店からの芁請で垂販の怜査キッドを買っお怜査をしたずころ、陰性であった。


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    ©Yukimi 『未来ぞのレクむ゚ム』・


    マリは家族の目を盗み、寝宀から圌の黒電話を呌び出した。毎日必ず顔を出しおいたマリが突然来なくなれば圌は心配するだろう。マリは流行病を発症しおしたったこず、あなたを車で医院に送った盎埌に発熱したので、移した可胜性が倚分にあるこず、だから、なるべく発症しないように、無理をせず気を぀けお過ごしおほしいこず、そしお、あなたも瀟䌚的には「濃厚接觊者」であるこずなどを䌝えた。

    思えば、甚があればすぐに行かれる距離であったから、マリが圌の黒電話を呌び出す必芁に迫られる機䌚はこれたで蚪れなかった。受話噚から聞こえる圌の声はなんだか聞き慣れず、遠いのにかえっお近くに聞こえるような䞍思議な距離感を持っおいた。電話越しに圌が発した蚀葉を䞀぀も思い出せないが、圌はやはりい぀もの通りに萜ち着いお淡々ず受け答えをした。ずにかくよく䌑んで、そしお䜕かあればたたい぀でも電話をしお、ずだけ䌝えおくれたように思う。

    ぀づく

    ★この物語は著者の䜓隓したノンフィクションですが、登堎人物の名前はすべお仮名です。

     
     
     
    2022幎7月2日に死別したパヌトナヌずの思い出を綎りたす。二人の過ごした時間はたったの1幎ず2ヶ月間でした。 圌のたぐいたれな生き方ず、圌が遺しおくれたあたたかくたっすぐな愛のかたちを曞き残したいず思いたす。 続きものですが、どうぞどこからでもお手に取り、觊れおいっおください。

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