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自分の意思で守るということ


    レジリエンスは、逆境の中で自分を立て直す力。

    ある連絡を受け取ったとき、
    私は久しぶりに昔の自分に引き戻されそうになった。
    誰かの言葉を飲み込み、誰かの不安を受け取り、
    自分の気持ちを後回しにしていた頃の感覚だった。
    けれど今の私は、あの頃とは違う。
    私には、守ると決めたものがある。

    人との関係には、それぞれの定義がある。

    家族。
    大切な人。
    支え合う関係。
    助けるべき関係。

    その形は、人によって違っていいのだと思う。
    違いがあること自体は、悪いことではない。

    ただし、それはお互いが一人の人間として尊重されている場合の話だ。

    片方だけが「こうあるべき」と思い、
    もう片方が苦しんでいることに気づかない。
    気づこうとしない。
    理解できないことを理由に、
    相手の時間や心や生活を使い続ける。

    それは、もう助け合いではない。
    どんな名前がついていたとしても、片方だけが背負い続ける関係は、搾取に近いのだと思う。

    私は、長い間それに気づけなかった。

    小さい頃からそういう環境にいると、
    それが普通になってしまう。
    疑問を持っても、
    「うちはこうなんだ」
    「私がやるしかないんだ」
    「仕方ないんだ」
    そうやって自分を納得させてしまう。

    本当はおかしいことでも、日常の中に溶け込んでしまうと、なかなか気づけない。
    違和感があっても、それを言葉にする前に飲み込んでしまう。

    だからこそ、大人になってから自分の過去を振り返ることは、とても大切なのだと思う。

    この考えにたどり着けたのは、私自身が自分の過去を振り返り、客観的に分析し、向き合ってきたからだ。

    向き合うことは、簡単ではない。
    見たくない自分もいる。
    思い出したくない出来事もある。
    認めたくない感情もある。

    怒り。
    悲しみ。
    悔しさ。
    罪悪感。
    「どうして私ばかり」と思ってしまう気持ち。

    そういう自分を見つけるたびに、
    きれいな言葉で隠したくなることもある。

    でも、向き合うことをせずに逃げてしまえば、
    きっとまた同じことを繰り返してしまう。
    自分が何に傷ついたのか。
    何を背負わされてきたのか。
    どこから先は自分の責任ではないのか。
    それを見ないまま進めば、また誰かとの関係の中で同じ場所に戻ってしまう。

    だから私は、どんな自分でも受け入れることが大切なのだと思う。

    誰かに認めてもらうために、
    自分を美化しなくていい。
    強く見せなくていい。
    正しく見せなくていい。
    優しい人のふりをしなくていい。

    美化してしまったら、
    それは偽りになってしまう。
    本当の自分の痛みも、怒りも、悲しみも、そこから得た学びも、ぼやけてしまう。

    苦しかったことを、
    きれいな物語にしなくていい。
    傷ついた自分を、なかったことにしなくていい。
    怒っている自分を、恥じなくていい。

    どんな感情も、
    そこにあった事実として受け止める。
    その上で、これからどう生きるかを自分で選ぶ。

    それが、私にとっての回復なのだと思う。

    昔の私は、選べなかった。
    距離を取ることも、断ることも、自分の生活を優先することも、どこかで罪悪感があった。

    けれど今は違う。

    私は、
    私の意思で守ることができるようになった。

    自分の家庭。
    大切な人たちの安心。
    自分自身の心と生活。
    これから育てていきたい世界。

    そこを壊してまで、
    誰かの依存先に戻るつもりはない。

    時間はかかった。
    たくさん迷った。
    何度も罪悪感に引き戻されそうになった。

    それでも今は、自分で選べる。

    「ここから先には戻らない」
    「私は私の大切なものを守る」
    「同じものを次の世代には渡さない」

    そう決められるようになったことは、
    とても大きい。

    レジリエンスについて考えていた。
    逆境を乗り越える力とは何なのか。
    回復する力とは何なのか。
    困難の中で、自分を立て直す力とは何なのか。

    私は、
    レジリエンスはただ我慢する力ではないと思う。

    苦しいことに耐え続けることでも、
    傷ついていないふりをすることでもない。
    何も感じないようにして、
    ただその場をやり過ごすことでもない。

    本当のレジリエンスは、逆境の中で自分を壊し切らないための力なのだと思う。

    状況を見つめる力。
    自分の痛みに気づく力。
    必要なときに助けを求める力。
    環境に合わせて形を変える力。
    離れるべき場所から離れる力。
    自分の責任ではないものを手放す力。
    そして、傷ついた自分を回復させ、
    もう一度自分の足で立ち直る力。

    それは、強く耐えることではなく、しなやかに適応しながら生き直していく力なのだと思う。

    私は、自分の過去を見つめた。
    美化せず、なかったことにせず、できるだけそのまま受け止めた。

    その中には、弱い自分もいた。
    怒っている自分もいた。
    誰かを許せない自分もいた。
    もう関わりたくないと思う自分もいた。

    それでもいいのだと思う。

    どんな自分でも、まずは自分が受け止める。
    その上で、今の自分がどう生きるかを選び直す。

    私はもう、
    誰かの都合で生きる場所には戻らない。
    誰かの依存先として、自分の人生を差し出すこともしない。

    私は、私の大切なものを守る。

    時間はかかったけれど、
    自分でそう決められるようになった。

    それはきっと、私にとっての回復であり、
    逆境の中で自分を立て直す力であり、
    これから大切にしていきたい、本当のレジリエンスなのだと思う。

     
     

    香

     
     
    看護師経験を土台に、AI・子育て・健康・防災・働き方を試しながら、自分に合う生き方を作り直しています。 黒猫作品も。 正解を探すより、試して、外れて、また考える。そんな途中を、ここに残しています。

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