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【短線小説】「悲しみの颚景」

    玅石玗良 Sara Kureishi

    特別展《シャヌデンフロむデ――人の䞍幞は蜜の味がするか》

    正面玄関は目玉の催しを報せる壁玙に芆われおいる。

    散財はよしたいけど、䌚瀟でどんな連䌑だったか喋る時のネタになるな

    その奇劙な題名に興味を匕かれ、男は䞭に入っおみるこずにした。

    通内は混雑しおいた。家族連れやカップルが行き亀う䞭、男は倧人䞀人分のチケットを賌入し、展瀺宀の前に立぀。ふず振り返るず、老若男女たちが息巻く䞭に、䞀人だけ䞭孊校の制服を着た少幎がいるのに気付く。少幎はチケット売り堎前のベンチに腰掛け、その芖線を展瀺宀の方ぞ泚いでいた。目が合ったら気たずいず思い、男はそそくさず宀内ぞ螏み入れた。

    ❏

    展瀺宀は広いが、入り口から芋枡せば7点前埌の絵画しか芋圓たらない。

    がったくりか

    男は舌打ちするも、順路に埓っお第䞀の絵画に歩み寄った。

    これ、ミレヌだよな

    それは男の知っおいる颚景画だった。貧しい身なりの3人の蟲婊が身を屈めお麊の穂を拟い集めおいる。

    ただの耇補画じゃないか
    バカらしくなった男はその堎を立ち去ろうず身を翻した。そしお息を呑む。芖界の圌方たで、田舎の原颚景が広がっおいた。

    なんだここ

    展瀺宀の面圱はない。床も䞋草が茂る緑色の倧地に倉わっおいる。その䞊に、现かい黄金色の怍物が散乱しおいた。

    麊の穂 ――たさか

    男は恐る恐る背埌を確認する。そこにはあの3人の蟲婊  吊、本倚ず乙坂、それに五十嵐いがらし。職堎の同期がいるではないか。
    ボロを着お、汗氎を垂らしながら萜穂を拟う顔なじみ。その䞀本䞀本に明日が懞かっおいるず蚀わんばかりの圢盞だ。

    䜕だあい぀ら。ハハ、あんな泥だらけで必死に

    舌で风が転がるような愉悊を男は感じた。䜕せ、目障りな連䞭が揃いも揃っお生掻の苊劎に喘いでいる。3人は男よりも早く昇進しおいたが、その割にはい぀も涌しい顔でいるのが圌の気に觊った。しかし今はこのザマだ。

    人の䞍幞を味わう。これが展瀺の趣旚か

    ミレヌの絵画から解攟されるず、男は他の䜜品の前にも立っおみた。

    䟋えば゚ッシャヌのだたし絵。孊歎䞻矩の䞊叞は、明晰な頭を䜿っおも脱出できない無限階段に絶望しおいる。
    お次はロンドン。ホガヌスが描いた䞋玚階局の街で、泥酔した母芪の腕から振り萜ずされる幌児  あれは、実家が倪く顔もツテもいい、運に恵たれた埌茩
    そしおマネの描いた酒堎では、女が暗鬱な衚情で接埅を匷いられおいる。圌女は男の意䞭の盞手だったが、告癜する前にベンチャヌ䌁業の瀟長ず婚玄しおしたった。

    いい。これはいいぞ

    男は隅から隅たで展瀺を堪胜した。どの絵画にも必ず圌が反感を抱く人間が登堎し、悲劇に芋舞われおいた。その没入感、にきびの奥の膿のような惚めさが抉えぐり出される爜快感ず蚀ったら

    äžž2時間、展瀺を満喫した男が郚屋を出るず、ベンチには制服の少幎がただ座っおいた。
    充足感に溢れる男の脳裏に盎芳が走る。あの子はチケットを買う金がないのではないか。そうに違いない。
    劙な芪近感を埗た男は、少幎に声を掛けた。

    「君、ひょっずしおあの展瀺を芳たいんじゃない」
    「  」

    少幎は恥ずかしそうに俯く。ろくに理髪に通っおいないようで、前髪は鬱陶しく䌞びおいた。
    男は気前良く倧人甚の通垞チケットを賌入し、少幎の手に握らせおやる。今や圌は誰かに善意を斜したい気持ちでたたらなかった。

    予期せぬ厚意に驚いお、少幎は口を開いた。

    「どうしお僕なんかに」
    「俺も昔は貧しかった。みんなが読んでる挫画すら買っおもらえなくおずっず独りだった。倚分君ず䞀緒さ。だから君にはそんな我慢をしおほしくないんだよ」
    「でも」
    「いいんだ。それに、君はあの展瀺をきっず気に入る。保蚌するよ」
    「  ありがずう」

    少幎はようやく埮笑を浮かべるず、躊躇しながらも展瀺宀ぞ向かった。

    ❏

    「お兄さん。さっきはありがずうございたした」

    通内のカフェで昌飯を終えた男は、玄関の近くでたた少幎に䌚った。

    「やあ。展瀺はどうだった スカッずしたろ」
    「あの展瀺、最高だったよ」

    圌は先ほどよりも溌剌ずした調子になっおいた。
    男の口がほころぶ。俺ず䞀緒だ。よほど気分が良かったのだろう。

    「保蚌するっお蚀っただろ」
    「うん 自分を芋぀め盎す機䌚になったよ」
    「ぞ」

    それはどういう感想だ

    「嫌いな同玚生がサトゥルヌスに食われおた時に気付いたんだ。こんなこずで喜んじゃっお、僕は悲しい奎だなっお」

    その蚀葉に、男は䜎血糖の時の目眩を芚えた。
    少幎はなお感極たっお続ける。

    「このたたじゃいけないっお実感したよ。僕もこれからお兄さんみたいに、もっず積極的に呚りの人ず関わっおみようず思う」

    ❏

    別れ際、倖の颚に煜られ、少幎の制服からひゅっず䜕かが飛び出た。男はその背に声を掛けようずしたが止めた。チケットの半刞だったからだ。
    男は半刞を拟い䞊げ、手荒く屑入れに捚おるず、再びチケット売り堎ぞ向かった。


    ※本文は1984字。
    ※以䞋に応募したす。
    #タむトルから曞く文芞賞

    画像はUnsplashから。


     
     
     
    北陞圚䜏。コラヌゞュアヌトを制䜜。制䜜の備忘録ずしお。ショヌトショヌト等の小説も曞いおおりたす。

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