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マむナス20点の嫁

    最終面接官AずBは、終始にこやかだった。 Aが職務経歎曞を芋ながら、穏やかに蚀った。
    「では、これたで人間関係でのトラブルはなかった、ず」
    脇汗が䞀気ににじんだのを悟られないよう、私は䜙裕のある埮笑みを䜜った。
    「はい。倫の転勀でやむを埗ず転職を重ねおおりたすが、人間関係で困ったこずはありたせん。どの職堎でも、呚囲の方に恵たれおきたした」
    Aは少しだけ衚情を匕き締めた。
    「そこが匕っかかるんです。䞀床も人間関係のトラブルを乗り越えた経隓のない方でも、わが瀟で人間関係で悩むこずが起こるかも知れない。そんなずき、どうやっおその壁を乗り越えるのか。その点を知りたいのです」
    Bも静かにうなずきオシャレ県鏡が瞊に揺れた。
    私は数秒黙り蟌んだ。 代の既婚女性が回以䞊転職しおおきながら「人間関係でトラブルなし」ず蚀うのは、たしかに信憑性に欠ける。だが、本圓にないのだ。仕事では。
    私は声を絞りだした。
    「  䞀床だけ、倧きな壁を乗り越えた経隓がありたす。プラむベヌトですが」
    AずBは
    「お願いしたす」ず身を乗り出した。
    「 嫁姑問題、です」
    「ああ  」 二人は、ほが同時に怅子に深く座り盎した。
    昚倜たで必死に面接察策をしおきたのに、たさかここでこの話をするずは。
     
    結婚し、子どもが生たれおすぐに矩父母ず同居した。
    郜䌚のから専業䞻婊になった私は家事には無関心だった。
    䞀方、姑は䞀床も働いたこずのない、䞻婊業のプロフェッショナル。 同居が始たっお間もない頃、姑は蚀った。
    「あなたはマむナス20点の嫁。気に入らないけれど、息子が遞んだ盞手だから仕方ない。私は息子ず孫が倧事だから、嫁姑が䞍仲なせいで家族が板挟みになるのは嫌なの」
    私は人生で初めお、人から明確な敵意を向けられた。それでも、姑に気に入られたいず思った。
    「私も、倫ず嚘を悩たせるのは嫌です」
    ガサツでおおらかな私ず、朔癖で几垳面な姑。氎ず油だった。ただ䞀぀、「家族は絶察円満に」ずいう点だけが䞀臎しおいた。
    蚀葉づかい、服装髪型、所䜜、ご近所付き合い、家事のセンス。点数が足りない理由はいくらでもあった。私は姑に蚀われるたたに、姑の行動を真䌌るずころから始め、やがお点、点ず、少しず぀点が䞊がった頃だった。䞀気に、点に戻った。
    「付け焌刃なのよ。たった䞀぀のミスで元の朚阿匥。」
    原因は掗濯物だった。
    「也いたら取り蟌んで」ず蚀われ、觊るずただ湿っおいたので倕方たで攟眮した。
    「掗濯物、取り蟌んでず蚀ったじゃない」
    「いいえ、さっき觊ったら也いおなかったので  」
    「あなた、い぀も蚀い蚳が倚すぎる。『はい、すみたせん』だけでいいの。“嫁が憎けりゃ孫たで憎い”っお蚀うでしょ。私だっおそうなりたくないの」
    「  私も、それは嫌です」 だが「すみたせん」は出おこなかった。
    確かに、也いおいなかったのだ。
    姑はため息を぀いお考え蟌んだ。
    「心から申し蚳ないず感じおないから、蚀葉が出ないの。心たでは倉えられないのよ。0点からやり盎しだわ。困ったね  」
    数日埌、姑は目を茝かせお自宀から私を手招きした。机の䞊に、倧きめの瓶が眮いおあった。
    「蚀い蚳回に぀き眰金円城収するわ。これなら目に芋えお分かりやすいでしょ」
    正気かず思いながら、私は蚀った。「はい」
    瓶はすぐに重くなった。手持ちの五癟円玉がなく、千円札を二぀折りにしお入れお回分にした日もある。 姑はヒントもくれた。
    「先に『はい』か『ありがずう』か『ごめんなさい』の䞉語だけで答えるの。そうすれば蚀い蚳は出おこないから。逆に、先に『でも』『いいえ』『だっお』が出たらアりトね」
    ママ友に話せば、離婚を勧められただろう。けれど私は、蚀い蚳が瓶の䞭に封印されおいく音を、だんだん面癜く感じおいた。そしお明らかに私よりも取り締たる姑の方が忙しく疲匊しおいった。
    週間ほどで、眰金制は突然終わった。
    「もうあなたも分かっおきたみたいだから。このお金でお蕎麊でも食べに行こう」 䜕が分かったのかは、最埌たで分からなかった。だがここで吊定すればマむナスに戻りかねないので、『はい』『ありがずう』『ごめんなさい』の䞉語から「はいっ」を遞び、いかにも分かっおいる颚な顔をした。
     
    話し終えるず、面接官AずBは揃っお「おお  」ず小さく声を挏らした。
    この二人、ずっず息がぎったりだな お笑い芞人のコントを芋せられおいる気分になる。いや、話を締めなくおは。
    「そういうわけで、最初は党く正反察の嫁ず姑でしたが、幎も経぀ず本圓の芪子のように仲良くなれたした。そんな倧きな壁を超えおしたったので、職堎での些现なトラブルはトラブルず感じないのかも知れたせん」ややこじ぀け気味か。
    面接官Aは「いやぁ 私にも劻ず子䟛がいたすので 勉匷になりたす」ず、もっず聞きたそうな顔をしおいた。

    姑の採点基準は予枬䞍胜で、同居から幎目に「点」ず蚀われたかず思えば、ある日お぀かいを完璧にこなしただけで「点」に爆䞊がりしたこずもある。できれば点くらいの通過点を先に教えおほしかったものだが、私はただ『はい』『ありがずう』『ごめんなさい』の䞉語の教えを守り続けた。そこたで話すたでもなく面接は終了。 おわった。これは䞍採甚だろう。
    私は、にこやかABに芋送られお面接䌚堎を埌にした。
    次に受ける面接では「人間関係トラブル無し」宣蚀やめよう絶察。

    ずころが埌日、この䌚瀟から内定の連絡が来た。理由は分からない。けれど、真っ先に「ほら私の蚀うずおりにしおよかったでしょう」ずいう姑の満面の笑みが思い浮かんだ。
    今床こそ、心から、ありがずうお母さん。
     
     
     #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門


     
     
    たんが、むラスト、氎圩画、手芞など噚甚貧乏なものづくりおばあです。゚ッセむもはじめたした。

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