
MEGADETH🇺🇸【全37作レビュー】 〜怒りと理性が交錯するインテレクチュアル・スラッシュメタル
Peace sells... but who's buying?
Metallicaを追放された天才、Dave Mustaineの執念が生んだMegadethは、スラッシュ四天王のなかでも異様な光を放ち続けてきた。冷静な理論構築と爆発的な情念、政治と私怨、理知と暴力──そのすべてをギターで綴り、ひとりの人間の復讐劇を音楽へと昇華した存在である。
しかし、いま彼らはついに終焉を迎えようとしている。Mustaineの声が衰え、時代も変わった。それでもなお、Megadethという名が刻んできた軌跡は、単なるバンド以上の意味を帯びている。Metallicaに追放された怒りを燃料に走り続け、何度も崩壊と再生を繰り返しながら、ついにここまで辿り着いた。
筆者が初めて出会ったのは高校生のころ。MetallicaやSlayerと共に『Killing〜』や『Peace Sells〜』を聴き、やがて『Rust in Peace』が人生を変える導火線となった。Mustaineという現象に気づいた瞬間から、過去も現在もすべてMegadethの物語に繋がっていた。
成功しても満たされず、200万枚売れても納得できず、自分のベンツを持ちながら隣のベンツを気にしてしまう──そんな人間臭い業を、彼はギターに焼き付けた。怒りを理性で編み、暴力を構築美で昇華する。だからこそ、Megadethは人間の暗闇と執念を映し続けた“生の黙示録”なのだ。
本レビューでは、終焉を前にあらためて彼らの全キャリアを辿り、音と闇、破滅と再生の旋律を追っていく。
🔰 Megadeth初心者のための必聴5曲
1.「Holy Wars... The Punishment Due」
宗教対立と正義の名の下の暴力を描く、怒れる預言者の二重奏。
2.「Peace Sells」
平和を求める声と、その裏に潜む偽善を暴く、反骨のベースライン。
3.「Tornado of Souls」
裏切りと喪失の痛みを、魂を吹き飛ばす旋風に乗せて。
4.「Symphony of Destruction」
一人の指導者が群衆を破滅へ導く、静かなる終焉の交響曲。
5.「À Tout le Monde」
別れの言葉は悲しみではなく、愛と感謝を込めた優しさの旋律。
📼 Last Rites (1984年、デモ)
⭐️ 評価: ★3.5/5.0
📝 レビュー: Metallicaを解雇されたMustaineの「とりあえずあいつらの血が見たい」という怒りと復讐心が凝縮された初期音源。速い、粗い、激しいの三拍子揃ったキレ味抜群な初期衝動の塊。
🎵 注目トラック:
・「Last Rites / Loved to Deth」 — 「Loved to Deth」以降前のソロがクリーン。
・「Mechanix」 — 1stと比較してもかなりの猛スピード。血の気が多すぎる。
・「The Skull Beneath the Skin」 — テンポアップした際のソロのカオス度が凄まじい。素面ではなさそう。
💿 Killing Is My Business... And Business Is Good! (1985年6月、1stアルバム)
⭐️ 評価: ★3.5/5
📝 レビュー: 予算をドラッグへ注ぎ込んで制作。尖りに尖ったシャープで複雑なリフと目まぐるしく変わる展開、衝動的な疾走感が共存したデビュー作。音質は悪いが、圧倒的なドライブ感を持ったリフはどれもフックがあって、浸透性があり、彼らのインテレクチュアルスラッシュは既に十分なオリジナリティがあった。
🎵 注目トラック:
・「Last Rites / Loved to Deth」 — バッハの引用から怒りと狂気の疾走曲へ傾れ込む。Mustaineの吼えっぷりが若々しい。
・「Killing Is My Business... And Business Is Good!」 — テンポチェンジが効果的。後半でさらに加熱する展開がたまらない。
・「Rattlehead」 — Megadethの数ある曲の中でも随一の疾走度を誇る。それでいてメロディアス。
・「Mechanix」 — Metallicaの「The Four Housemen」より遥かにスピーディーでアグレッシヴ。洪水の如くリフが溢れる。
💿 Peace Sells... But Who's Buying? (1986年9月、2ndアルバム) ⭐️名盤
⭐️ 評価: ★4.0/5.0
📝 レビュー: Dave Mustaineのソングライティングは飛躍的に向上し、展開が変則的で複雑になった上で洗練されている。テクニカルで捻くれているのに、同じくらい聴きやすいというバランス感覚は天才的。剥き出しの衝動を抑えたことで、Megadeth特有の刺々しいゴツさが出てきた。名リフ尽くしの代表作。
🎵 注目トラック:
・「Wake Up Dead」 — 薄気味悪いムードを持った独創的な展開の曲。これだけ繰り出してリフのごった煮にならないところが凄い。名曲。
・「Peace Sells」 — David Ellefsonのベースラインが際立つ代表曲。反復性まで強みに変えられる点も当時のMegadethの魅力である。
・「Good Mourning / Black Friday」 — 叙情的なイントロから何段階にも渡って加速していく展開は圧巻。Chris Polandの名演。
・「My Last Words」 — NWOBHMからの影響が色濃い緊張感溢れる疾走曲。かなり歌っているベースパートも聴きごたえがある。
💿 So Far, So Good... So What! (1988年1月、3rd アルバム)
⭐️ 評価: ★3.5/5.0
📝 レビュー: ドラッグを買うためにコマーシャル志向に走った作品。Sex Pistolsのカバーひとつとっても華があるし、インスト、バラード、疾走曲など、バラエティに富んでいる。名盤に挟まれて地味な扱いを受けるが、曲の質は確かで、Mustaineの反骨精神は益々滲み出ている。
🎵 注目トラック:
・「Into the Lungs of Hell」 — アコギからメタルパートへ傾れ込む開始はスラッシュ業界の常套手段だったが、壮大なスケールでテンションを上げる。
・「Set the World Afire」 — 次から次へとリフを繰り出す殺傷力高めのナンバー。
・「In My Darkest Hour」 — Cliff Burtonに捧げた名曲。バラード調から加速する展開はMetallicaにも通じるものがある。
・「Hook in Mouth」 — Ellefsonのベースラインが曲全体に不穏な緊張感を添える。
💿 Rust in Peace (1990年9月、4thアルバム) 🌟🌟超名盤
⭐️ 評価: ★4.5/5.0
📝 レビュー: Megadethの最高傑作にしてメタル史上の超傑作。薬物中毒のリハビリを経て、ギターにMarty Friedman、ドラムにNick Menzaを加入させた。東洋的な感性を併せ持つFriedmanのメロディはMustaineと好コントラストを成し、正確無比かつパワフルなMenzaのプレイも、よりテクニカルでスリリングな展開を可能にしている。スラッシュメタル期はここまで。
🎵 注目トラック:
・「Holy Wars... The Punishment Due」 — メカニックで歯切れのいいリフの応酬で、ドラマティックに展開する代表曲。歌詞も一気に社会派に。
・「Hanger 18」 — 後半で転調して、スリリングな壮絶なギターバトルが繰り広げられる。弾き倒しても曲が破綻しない骨格も秀逸。
・「Take No Prisoners」 — 疾走感溢れる複雑なリフワークも、トリッキーなプレイを見せるベースラインも聴きごたえがある。
・「Tornado of Souls」 — その名の如く回転しながら高揚するようなリフを持つ。情緒溢れるFriedmanのソロはメタル史上のハイライト。
・「Rust in Peace... Polaris」 — Mustaineがバンドキャリア極初期に書いた曲。複雑なリズム感のリフワークと、手数の多いドラムが特徴的。
🎞 Rusted Pieces (1991年2月、MV集)
⭐ 評価: 4.0/5.0
📝 レビュー: MV集といっても当時のMegadethはまだ6曲だが、この6曲の内容が実に粒ぞろいだし、合間にMustaineとEllefsonのメイキング解説が入って見ごたえのある42分だ。なお、内容は全て『Arsenal of Megadeth』に収録されているので、今やコレクターズアイテムと言っていいだろう。
✅ 注目ポイント:
・「Peace Sells」 — 「ニュースを見せろ!」「これこそがニュースだ!」という有名な父子の掛け合いが印象的。このMVは英国では放送禁止だった。
・「Wake Up Dead」 — 檻の演出や、カメラにヘルメットに取り付けてステージから客席にダイブさせた臨場感のある視界が特徴。
・「In My Darkest Hour」 — 自殺を連想させるのでMTVから拒絶を喰らったので制作。収容人数800人くらいのライブハウスに2000人近くも大集合。
・「Holy Wars...The Punishment Due」 — 「格納庫の中、真夏の8月で、気温は軽く摂氏40度超えてた」という過酷な撮影。中東の指導者とも"共演"した無修正バージョン。
・「Hangar 18」 — 「クリーチャーも山ほど登場したし、メイクや特殊効果、あとミニチュア化技術も使った」野心作。
💿 Maximum Megadeth (1991年4月、プロモーションリリース)
⭐️ 評価: ★4.0/5.0
📝 レビュー: 『Rust in Peace』リリース後の1991年に、Capitol Recordsからプロモーションディスクとして発行されたEP。収録曲はわずか8曲だが、2nd~4thからバランスよく選曲されているし、Megadethクラシックの次々叩きつけるような流れも素晴らしい。「Hook in the Mouth」が来る頃には、これが聴きなれたスタジオ音源であるにも関わらず、まるで汗だくでコンサート会場にいるような感覚になる。
✅ 注目ポイント:
・「Hanger 18」「Anarchy In The U.K.」 — 音質も良好な上に、極めて推進力のあるテイク。このプロモーションディスクになぜ選出されたのか、一聴すればよくわかる。
💿 Countdown to Extinction (1992年7月、5thアルバム) ⭐️名盤
⭐️ 評価: ★4.0/5.0
📝 レビュー: Megadethの商業的成功を決定づけた名盤。Metallicaのブラックアルバムに触発されたかのように音楽性はスラッシュメタルから聴きやすいメロディアスなヘヴィメタルへシフトした。プログレッシヴな展開も減退したが、リズム隊のグルーヴが強力なので、Megadethとしての毒が絶妙な按配で保持されている。
🎵 注目トラック:
・「Skin O' My Teeth」 — 出だしからMenzaのドラムが映える、キャッチーかつタイトな疾走感を持つ曲。
・「Symphony of Destruction」 — 冷徹なヘヴィネスを持つ代表曲。無機質な演奏と、ねちっこいヴォーカルのコントラストも秀逸。
・「Sweating Bullets」 — 語りかけるようなヴォーカルとシャッフル系のリズムが特徴的。
・「Countdown to Extinction」 — 退廃的でダークなムードの曲。演歌的な泣きのソロはマーティの真骨頂。
・「Ashes in Your Mouth」 — Megadeth史上最もプログレッシヴな曲の一つ。ここまで奇抜なリフワークで、メロディアスに構築するセンスが凄い。
🎤 Live at the Cow Palace, San Francisco, 1992 (1992年12月4日収録、ライブ音源) ⭐名盤
⭐️ 評価: ★4.0/5.0
📝 レビュー: 元々『Limited Edition! Megadeth Live』はWestwood Oneによりラジオ放送用に録音された6曲入りプロモーション用ライヴEPで、ラフな音質だったが、『Countdown to Extinction 20th Anniversary Edition』に収録されたフルセットは、生々しさはそのままにリマスターされて非常に聴き応えのあるライヴ盤に仕上がっている。
✅ 注目ポイント:
・Megadethに情熱があった頃のMarty — 音量はソロを除いてMustaineの方が大きいが、メタルにまだ飽きていない勢いのあるプレイ。
・Nick Menzaのタイトなドラム — 「Holy Wars」「Sweet Bullet」「Hanger 18」での加速は圧巻。
・煽り気味なMustaine — セールスでMetallicaに及ばず苛立っていた時期。
💿 Youthanasia (1994年10月、6thアルバム)
⭐️ 評価: ★3.5/5.0
📝 レビュー: 前作の商業的成功を受けて、バンドはより多くのリスナー獲得を目指し、音楽性を洗練させた。テンポは更に遅くなり、メカニックで無機質だったリフはメランコリックになり、ヴォーカルもメロディが強調されている。バンド独特のエッジが減退したのは惜しいが品質は高い。
🎵 注目トラック:
・「Reckoning Day」 — ドラムの個性的なリズムが大砲の如く鳴り響くヘヴィナンバー。
・「Train of Consequences」 — 実に非凡なリフ。ダンサブルだけどヘヴィでザクザクしている。
・「Addicted to Chaos」 — 歌メロもギターフレーズもメロディを強調したサビが印象的。
・「A tout le monde」 — 歌詞・歌・演奏どこを切ってもエモーショナルなバラードだが、ツインギターソロなどバンドのエッセンスがよく出ている。
💎 Hidden Treasures (1995年7月、レアトラックス)
⭐️ 評価: ★3.5/5.0
📝 レビュー: 映画サントラやトリビュートに提供された楽曲を集めたもの。録音期間は1987〜1994年の間に跨っており、アプローチの幅も広い。統一感こそオリジナル盤に引けを取るが、これに続く低迷期のスタジオ盤より遊び心が溢れていて面白味を感じる。
🎵 注目トラック:
・「Angry Again」 — 映画『Last Action Hero』サウンドトラックへの提供曲。抑えの効いたミドルテンポで進むかなり渋い曲。
・「99 Ways to Die」 — 映画『Beavis and Butt-head Experience』サウンドトラックへの提供曲。スラッシュメタル度の高いストレートさが魅力。
・「Paranoid」 — こちらは逆にMenzaの抑えの効かない暴走系。彼が注意されるオチがユニーク。
🎤 Live Trax / Live Trax II (1997年2〜6月収録、ライヴEP)
⭐️ 評価: I: ★3.5/5.0、II: ★3.0/5.0
📝 レビュー: 日本限定リリースのライヴEP。『Live Trax』のトラック4〜5だけは1997年2月26日のロサンゼルスでの音源で、それ以外は6月13日フェニックスの音源。黄金期のメンバーによる推進力に満ちた演奏だが、プロダクションはややラフ。
✅ 注目ポイント:
・「Reckoning Day / Peace Sells」 — 1トラック内で続けて演奏される演出で掴みはバッチリ。
・「Use the Man」「Almost Honest」 — リリース前の『Cryptic Writings』収録曲を演奏している。『Live Trax II』のリミックスは退屈。
・ドラム音の大きめなバランス — Menzaの正確でドライブ感溢れるプレイが際立つ。
・Mustainのヴォーカルが荒々しい — これに関しては悪い意味ではない。かなりエモーショナル。
💿 Cryptic Writings (1997年6月、7thアルバム)
⭐️ 評価: ★3.0/5.0
📝 レビュー: よりラジオフレンドリーな音楽を推し進めた作風。うねりのあるミドルテンポは当時のMegadethのトレードマークであるが、リフのキレや力強いグルーヴも減退し、あらゆる要素やパロディまで絞り出してバラエティ性が強くなった分、散漫でパンチに欠ける印象が強い。
🎵 注目トラック:
・「Trust」 — アプローチ的に「Enter Sandman」を彷彿とさせるイントロがドラマティック。Menzaのセンスが特にいい。
・「The Disintegrators」 — 疾走曲ですらメロディアスに。この曲もドラムが好プレイ。
・「She-Wolf」 — スラッシュメタル特有の攻撃性とIron Maiden的なメロディアスな疾走感を併せ持った本作のハイライト。
🎤 Unplugged in Philly (1998年7月10日収録、ライブ音源)
⭐️ 評価: ★2.5/5.0
📝 レビュー: 1990年代、MTVの「Unplugged」シリーズが人気を博し、多くのアコースティックライブアルバムがリリースされた。Megadethもその流れに乗り、1999年にアコースティックライブを行った。ヘヴィなリフや激しいドラムが特徴のMegadethの楽曲が、アコースティックギターの繊細な音色やパーカッションのリズムに乗せて演奏されることはファンにとっても新鮮味のある体験だった。しかし、それ以上の価値はない。
✅ 注目ポイント:
・アコースティック演奏 — セットリストが弱いのもあり、『Unplugged in Boston』と比べて単調。せめて「A tout le monde」くらい入っても良かった。
・Mustaineの歌唱 — 彼のアクの強いヴォーカルは、あまりアコースティック仕様に向きとは思えない。「Anarchy In Philadelphia」は演奏含めて悪ノリに近い。
・プロダクション — ニーズが希薄なせいか、あまり手を加えられていない。
💿 Risk (1999年8月、8thアルバム)
⭐️ 評価: ★1.5/5.0
📝 レビュー: あまりにもリスキー過ぎたリリース。従来のMegadethサウンドから大きく逸脱して、ハードロック、ポップロック、オルタナティヴロックなどの要素を盛り込んだ最大の問題作。曲の方向性やバリエーションとプロダクションはあまり噛み合っていないのも難点。Menzaも離脱したが、グルーヴ云々以前の問題。MegadethがBon Joviをやってもファンは楽しめない。
🎵 注目トラック:
・「Insomnia」 — デジタル色が新鮮な不眠症を扱った曲。1曲目としては弱い。しかし、全体を聴けば1曲目はこれしかない気もする。
・「Crush 'em」 — Megadeth流ポップメタル。ライブ向きのアンセミックなコーラスが特徴的。
・「I'll Be There」 — 更にポップロックへ傾倒した曲。ファンへの感謝を歌うのは良いが、曲調のせいで損をしている。
🏆 Capitol Punishment: The Megadeth Years (2000年10月、ベスト盤)
⭐️ 評価: ★4.0/5.0
📝 レビュー: 1985年〜1999年のCapitol Records時代の集大成としてリリース。基本的には歴代のシングル曲中心で構成された、契約消化的な内容。リマスター版や『Greatest Hits』があると影が薄くなるが、Megadethのマーケティングの遍歴を概観させるベスト盤。
✅ 注目ポイント:
・選曲の偏り — 1stの曲が未収録なのは仕方ないが、『Cryptic Writings』から3曲も入れて「She-Wolf」が入ってこないのは残念。
・良質なリマスター — 『Greatest Hits』はリミックス仕様。聴き比べも一興。筆者は『Capitol Punishment』の方が好み。
・「Kill the King」 — 新曲。イントロのザクザクした刻みリフが特徴的。
・「Capitol Punishment」 — こうしたダイジェストトラックは、あまりニーズがない。
🎞️ VH1 Behind the Music (2001年4月放送、ドキュメンタリー)
⭐️ 評価: ★4.0/5.0
📝 レビュー: 『The World Needs a Hero』に先駆ける形で4月22日に放送されたVH1によるドキュメンタリー。ドラッグ問題がかなりの比重を占めるが、Mustaineに加えてMetallicaや歴代メンバーによる生の語りは主観一色の自伝とはまた一味違った視点を与える。Mustaineの傍若無人ぶりが引き立つ。
✅ 注目ポイント:
・Metallica解雇時の回想 — James Hetfieldに「このままだと自分の生命が危なかった」と言われる始末。
・Ellefsonの母親まで登場 — 音楽の学校へ行くと言われて送り出した息子がドラッグ中毒に。母子共に品よく笑いながら語るノリがロックだ。
・Jeff Young — "身に覚えのない"Mustaineの恋人を寝取った疑いで解雇。理不尽度MAX。
・Alice Cooper — 先輩としてMustaineの忠告者からメンターへ。業界の御意見番的な存在感。
🎤 Unplugged in Boston (2001年5月9日収録、ライブ音源)
⭐ 評価: ★3.0/5.0
📝 レビュー: 『The World Needs a Hero』リリースに先立ってのアンプラグド。『Unplugged in Philly』と比較すると、Mustaine以外に存在感が出て、曲や表現幅も豊富になったので退屈しない。あまりにアコースティック仕様にすると曲が活きないことにが気が付いたようだ。こちらも、プロダクションは粗い。マーケティングに熱意を感じられない。
✅ 注目ポイント:
・「Punishment Due」 — 「Holy Wars」抜きなので、かなりメランコリック。こうして聴いてもこの曲の良さが分かる。
・「Moto Psycho」「Promises」 — ニューアルバム収録曲。皮肉なことに、メタルバージョンと水準的にあまり差がない。
・アンプラグドの限界 — Megadethが本質的にアンプラグドと合わないと思わせる。
💿 The World Needs a Hero (2001年5月、9thアルバム)
⭐ 評価: ★2.5/5.0
📝 レビュー: 従来ヘの「リフ主体」路線への回帰を目指したものの、テンションが追いついていない。メタルには戻ったが、前作よりも一層覇気が感じられないし、プロダクションに厚みがない。Al Pitrelliのギターもよそよそしい。「When」を聴くに、Mustain自身アイデンティティクライシスを拗らせていたように思える。
🎵 注目トラック:
・「Disconnect」 — 冷ややかな風に吹かれて、とぼとぼと歩くような哀愁。オープニングらしからぬ曲。
・「Dread and the Fugitive Mind」 — 「She-Wolf」のアップデート版。"自己紹介させてくれ"で始まるMustainの歌詞も印象的だが、もう少し勢いのある時期にアレンジしたら名曲になれたかもしれない。
・「Return to Hangar」 — 「Hangar 18」続編。ソロの応酬がある後半の疾走パートが聴きどころだが、あのインパクトには及ばない。
🎤 Rude Awakening (2001年11月収録、ライブ盤) ⭐名盤
⭐️評価: ★4.0/5.0
📝 レビュー: Mustaineの腕の故障により、結果的にMegadethの一時解散ライヴになったフェニックス公演2Daysより。Al PitrelliとJimmy DeGrassoという実力者がいかに不運なタイミングで加入したか、何故このラインナップが未だ根強い支持があるのかは本作を聴けばわかる。冴えない新作とは全くの別人のようにパワフルな演奏。
✅ 注目ポイント:
・Al Pitrelli — Friedmanの東洋的エッセンスを咀嚼しつつ独自のカラーも出す。「She-Wolf」「Hangerメドレー」の絡みは必見。こんな下げた位置で正確に弾くとは。
・Jimmy DeGrasso — Megadethの曲に通底するゴツさやドライヴ感を自然に引き出すプレイ。バスドラが些か強調されすぎな嫌いがある。
・Dave Mustaine — MCもなく淡々と進行するが、「Sweating Bullets」から狂気の迸った煽りを交えて白熱。腹が出てきてもカリスマ性はある。
・ベスト盤以上にベスト選曲な24曲 — CDとDVDでは曲順や編集が異なる。
💎 Still, Alive... and Well? (2002年9月10日、編集盤)
⭐ 評価: ★2.5/5.0
📝 レビュー: Dave Mustaineの負傷によってMegadethが一時的に終焉を迎えた結果、レーベルとの契約消化を目的に登場したのが本作。内容は『The World Needs a Hero』の後半をそのまま再収録し、前半には『Rude Awakening』からの抜粋を並べた折衷形式。コンピレーションとしては一貫性を欠き、全体の構成意図が曖昧で、新規性には乏しいため、キャリアの通過点としては物足りない。価値があるのは、
✅ 注目ポイント:
・「Time / Use the Man」「The Conjuring」― 『Rude Awakening』から漏れた音源。本作の価値といえばこれくらい。
・「再生の予兆」―バンドの“死”を否定するようなタイトルは、結果的に象徴的なものになった。
💿 The System Has Failed (2004年9月、10thアルバム)
⭐️ 評価: ★3.0/5.0
📝 レビュー: ソロプロジェクトの延長での復活作。初期スラッシュメタルの雰囲気を取り戻しつつも、近年のメロディアスなヘヴィメタルも取り入れた集大成的な内容。全体に新鮮味のなさ、後半のパワーダウン、セッションミュージシャン起用によるグルーヴ不足が目立つが、Mustaineに覇気が戻ったのが大きなポジティヴ要素。
🎵 注目トラック:
・「Blackmail the Universe」 — 初期の刺々しいリフワークが回帰。ナレーションも効果的。
・「Die Dead Enough」 — 哀愁の漂うキャッチーな曲。Mustaineの声質の変化を強く感じた。
・「Kick the Chair」 — 「Take No Prisoner」と些か被り過ぎる嫌いがあるが、Mustaineの健在ぶりを示すには良い。
🏆 Greatest Hits: Back to the Start (2005年6月、ベスト盤)
⭐️ 評価: ★4.0/5.0
📝 レビュー: 1984年から2000年までのMegadethのキャリアを網羅。『Capitol Punishment』と比べると、1stの曲や『Hidden Treasures』からも収録されているのでより包括性が高い。特に前半が強力になった。Bonus DVDの『Live at Fillmore Auditorium』は1999年12月27日デンヴァーでの公演。サウンドに難あり。
✅ 注目ポイント:
・1枚のベストとしては上々 — 初心者にも安心して推薦できる。
・Capital期の曲はリミックス仕様 — 当時出たリイシュー版の広告にもなった。
・『Live at Fillmore Auditorium』のサウンド問題 — 脱退前のFriedmanのギターが頭4曲くらいほとんど聴こえないし、Ellefsonのサイドヴォーカルも全体に聴こえづらい。「Trust」がかなりドライブ感のある仕上がり。『Risk』期でもバンドが精力的にステージをこなしていたのは伝わる。商品化されたのは抜粋ものだが、下にフルセットも貼っておく。
🎤 That One Night: Live in Buenos Aires (2005年10月9日、ライヴ映像) ⭐名盤
⭐️ 評価: ★4.0/5.0
📝 レビュー: 復活してもなお、Megadethとしての活動に葛藤を抱えていたMustaineに覚悟を決めさせた伝説的なライヴ。何しろ、観客の熱狂ぶりが半端ではない、これだけは他のライブ盤を圧倒している。James MacDonougやDrover兄弟を擁するこのラインナップは、メタル界の一大ブランドを担うだけの華がなかったかもしれないが、本作はIron Maiden『Rock in Rio』と同様に観客の力で名盤にのし上がった作品だ。ノスタルジックな言い方をするなら"ファン教育ビデオ"。
✅ 注目ポイント:
・隙あれば歌いまくる観衆 — サビは勿論、リフ、ツインリードまでシンガロング。「Hanger 18」「Symphony of Destruction」は特に凄まじい。Mustaine「これには驚くよ」
・ホテルまで追っかけてくるファン — Mustaine「ちょっと怖いけど嬉しいよね」、Megadethのアンプラグドはこういうのだけでいい。
・喜悦が充満していくMustaineの表情変化 — 「Symphony of Destruction」「Peace Sells」「Holy Wars」のラスト曲は必見。
・『Rust in Peace』収録曲はちょっと速め — 歴代ドラマーに比べて手数は控えめだが、Shawnも勢いに乗っている。
・ある種のドキュメンタリー — Mustaine「また会おう!君たちは最高だ!Megadethだ!」
🎞️ Arsenal of Megadeth (2006年3月、MV&レア映像集) ⭐名盤
⭐ 評価: ★4.0/5.0
📝 レビュー: バンドの映像記録としては初の本格的回顧作であり、キャピトル時代(1985〜1999年)を総括する2枚組DVD。MV、TV出演、未発表のライヴ映像、インタビューなどが年代順に構成され、バンドの成長や時代ごとの雰囲気の変化を追体験できる。鋭利で攻撃的な初期から、より整ったサウンドへと向かう過程が可視化されている一方、画質や音質にバラつきがあり、5.1ch非対応など物足りなさも感じる。中には収録されていないMVも幾つかあり、資料性として詰めは甘い。とはいえ、90年代の音楽シーンの一角を担った存在としての軌跡を映像でたどる価値は高い。ファンでなくとも、メタルの時代的変遷を感じられる構成になっている。
✅ 注目ポイント:
・当時のTV出演 — スカイダイビングやMTVでの特集、Drew Carey ShowやCM映像、映画出演なども含まれている。
・『Video Hits』との重複 — 「Peace Sells」「Anarchy in the U.K.」「Train of Consequences」「Trust」
・未収録 「99 Ways to Die」「Breadline」など。
・検閲 — 「Holy Wars」は修正版、インタビューも時々規制が入って音が消える。
・未発表ライブ映像 — GIGANTOUR 2005において、南米ファンの特異性を語るMustaine。『Live in Buenos Aires』の背景と呼応するくだり。
💿 United Abomination (2007年5月、11thアルバム)
⭐️ 評価: ★3.0/5.0
📝 レビュー: 体制を一新して、ちゃんとしたバンド形態に整えた結果、順当にグルーヴが向上した。Andy Sneapによるプロダクションも洗練されている。Drover兄弟が健闘しているが、頭3曲以外がパンチに欠ける構成が前作以上に際立つ。「A tout le monde」再録で、後半をつなぐような流れも商業性というより苦し紛れな気もする。
🎵 注目トラック:
・「Sleepwalker」 — 今回も複雑な三連符リフで開始。本格復活を印象付ける勢い。
・「Washington Is Next!」 — 90年代よりもIron Maidenへの接近を感じる本作のハイライト。
・「Never Walk Alone... A Call to Arms」 — 往年のMegadethらしいエッジの効いたリフ。
💿 Endgame (2009年9月、12thアルバム)
⭐️ 評価: ★3.5/5.0
📝 レビュー: メロディ控えめな"スラッシュメタルアルバム"。復活後では本作がイチオシ。曲ではなくアルバムとして勝負したような勢いと密度があり、聴かせる部分もバランスよく盛り込むバランス感覚はさすがベテラン。Chris Broderickのテクニックも確かなものだが、こうした方向性の明確ささえあれば他のギタリストももっと活きる余地があったのではないかと思えてくる。
🎵 注目トラック:
・「Dialectic Chaos」 — Broderickの技巧を披露するインスト。流れは3rdの開始を想起させる。
・「This Day We Fight!」 — およそ弾きながら歌うレベルではないリフの疾走感はMegadeth随一。
・「1320°」 — こうした加速を好むのはMetallica時代から変わらないようだ。
・「Head Crusher」 — 文字通りヘッドバンギング向きの曲。Broderickのリードも冴えてる。
🎤 Rust in Peace: Live (2010年3月31日収録、ライヴ映像) 🌟超名盤
⭐️ 評価: ★4.5/5.0
📝 レビュー: David Ellefsonの復帰ツアーで、『Rust in Peace』の20周年を記念して全曲演奏。代表作の全曲再現はSlayerやMetallicaもやったが、Friedman&Menzaなしで期待値を上回るパフォーマンスを見せたMegadethは紛れもない現役バンドだ。プロダクションがクリアなのは確かだが、リズム隊が所々引っ込みがちで、全体に無機質に仕上げすぎて、臨場感に欠ける。音源のみと映像付きとで印象に格差が出やすい。
✅ 注目ポイント:
・「Five Magics」 — Broderickのネオクラ節全開の速弾きで別物に。
・「Poison Was the Cure」 — Droverのドラムの精巧さが際立つ。Broderickのギターリフは引っ込みすぎ。
・「Lucretia」 — Mustaineのエモーショナルなヴォーカルが聴ける。
・「Tornado of Souls」 — Friedmanの正確に再現したうえで独自のカラーも出す。技巧ならBroderickは歴代トップクラス。
・「She-Wolf」 — シャープなリフのユニゾンにアンサンブル水準の高さが出る。
🎤 The Big Four: Live From Sofia, Bulgaria (2010年7月22日、ライヴ映像) 🌟超名盤
⭐️ 評価: ★4.5/5.0
📝 レビュー: 本作が超名盤なのはMegadethのおかげ。"「Holy Wars」で雨が降る"というEffefsonの賭けは残念ながら当たってしまったが、それをものともしない演奏。Metallicaを前に、絶対にトチれないプレッシャーや気迫はひしひしと感じる。初期2枚からもう少し演って欲しいという注文はSlayerと同様だが、あそこまでバランスが悪い印象もない。
✅ 注目ポイント:
・悪天候でもMegadethの圧勝 — 雹まで降ろうが終演後に全員スマイルで愚痴れるだけの完璧主義。ギター2人の安定したキメは凄い。Drover曰く"秘訣はコーヒー"?
・MCほぼなし — ひたすら押すのみ。Urlichらの観客とのコミュ力は認めるが、音楽一筋で勝負するバリバリの現役感はかっこいい。
・ステージ裏の進行を務めるEllefson — 卒がなく温厚な彼以上の適任はいない。
・サウンドでも輝くEllefson — ベース音がハッキリしてて、ピッキングのリズム感もいい。
💿 TH1RT3EN (2011年11月、13thアルバム)
⭐️ 評価: ★2.5/5.0
📝 レビュー: 再びヘヴィメタル寄りの音楽性。Broderickの引き倒しに味を占めた模様。David Ellefsonが復帰してグルーヴに安定感が出たが、過去のデモやボーナストラックはリメイクするだけの魅力を感じないし、仕上がりを散漫にした印象。Mustaineのヴォーカルに衰えも感じる。Machine HeadにしてもDisturbedにしてもJohnny Kの仕事はメタル向きに思えない。
🎵 注目トラック:
・「Sudden Death」 — 冒頭から終わりまで、シュレッドギターソロが散りばめられた、激しく暗く混沌としたオープニングナンバー。
・「Public Enemy No. 1」 — スラッシーでドライヴ感のあるリフワークとキャッチ―なコーラスをもつ先行シングル曲。MVのインパクトが強烈。
・「Never Dead」 — Shawn Droverのパワフルなドラムプレイが特徴的な作中数少ないアグレッシヴな曲。
🎤 Countdown to Extinction: Live (2012年12月7日収録、ライヴ映像)
⭐ 評価: ★3.0/5.0
📝 レビュー: 『Rust in Peace: Live』の反響を受けて、バンドは新たな完全再現ライブツアーを企画した。本作には、2012年12月7日にカリフォルニア州ロサンゼルスのフォックス・シアターで行われた公演の模様が収録された。しかし、Mustaineのヴォーカルの衰えや、映像演出に頼り過ぎたパフォーマンスは、賛否両論を呼んだ。
✅ 注目ポイント:
・演奏力の高さ — Chris Broderickのテクニカルなソロ、Shawn Droverのタイトなドラムを擁するアンサンブルは今回も安定。
・Dave Mustaineの衰え — かつての力強さが失われつつあり、特に高音域の伸びに苦しむ場面が目立つ。
・映像作品としての魅力の弱さ — CG映像やスモークなど単調な視覚的な演出ばかりで、カメラワークやライヴの段取りもかなり淡々としている。
・堅実過ぎる再現 — Megadethにしてはライブならではのアレンジや即興性が少ない。本当に盛り上がるのは再現完遂後のラスト3曲。
💿 Super Collider (2013年6月、14thアルバム)
⭐️ 評価: ★1.5/5.0
📝 レビュー: 商業的な方向性と楽曲の質の低さで猛烈な酷評を浴びたキャリアの底辺。よりハードロックやオルタナティブメタルの要素を取り入れた作風で、スラッシュメタルの要素はなくなり、楽曲はよりメロディアスでラジオフレンドリーな方向にシフトしている。Mustainのヴォーカルも穏やかになり、しばしばスポークンワードに近いスタイルで歌う。惰性で作られたと感じる唯一のアルバム。
🎵 注目トラック:
・「Kingmaker」 — 比較的スラッシュメタルの要素があり、本作では最も存在感のある曲。2人のギターソロは数少ない聴きどころ。
・「Dance in the Rain」 — DisturbedのDavid Draimanがゲスト参加したヘヴィかつダークな曲。近年のMegadethらしいメロディアスなリフ。
・「Cold Sweat」 — Thin Lizzyのカバー。原曲に忠実な仕上がりで、Megadethのオリジナル曲より聴いていて楽しい。
💿 Dystopia (2016年1月、15thアルバム)
⭐️ 評価: ★3.0/5.0
📝 レビュー: 前作の失敗を受けて、再びスラッシュメタルへの回帰を試みた作風。メロディアスなフレーズを弾くKiko LoureiroとパワフルなChris Adlerの加入は、90年代を再現する意図を感じる。中盤以降単調さが目立つのと、Mustaineのヴォーカルの老いの顕在化、目立った革新性もなく、マンネリが本物になってきた感がある。
🎵 注目トラック:
・「The Threat Is Real」 — エキゾチックなアレンジが特徴的なオープニング。
・「Dystopia」 — ソロの掛け合いなど、あえて「Hanger 18」展開をやる事でLoureiroのカラーを出している。2010年代では出色の曲。
・「Fatal Illusion」 — 80年代まで戻ったような刺々しいリフ展開。Adlerによるグルーヴが強力。
🏆 Warheads on Foreheads (2019年3月、ベスト盤)
⭐️ 評価: ★3.5/5.0
📝 レビュー: キャリア"35"周年を祝うベスト盤。既出の15枚のスタジオ版からMustain自身が選出した"35"曲。このCD3枚組のボリューム感は、ベスト盤というよりアンソロジー的な趣が強い。新マテリアルはない。
✅ 注目ポイント:
・「Peace Sells」未収録 — Mustaine自身が「最も効果的な武器となる曲を揃えた」と言っているのにこの定番曲を除外。他はまずまずの選曲。
・リマスター — 小綺麗に洗練されたモダン志向は好き嫌い別れそう。
・新曲なし — これといった特別感がないので、結局影が薄い。
💿 The Sick, the Dying… and the Dead! (2022年9月、16thアルバム)
⭐️ 評価: ★3.0/5.0
📝 レビュー: よりスラッシュメタル度を高めた作風だが、咽頭癌の影響かMustaineがスポークンワードを増やした上に、プロダクションが洗練されすぎて往年のエネルギーに掛ける。マンネリや中弛みも目立つ。Ellefsonの後任Steve Di Giorgioの持ち味である奇抜なラインも控えめ。
🎵 注目トラック:
・「The Sick, the Dying… and the Dead!」 — イントロはAC/DC「Hells Bells」を想起させ、メロディアスなリフもつかみが良い。
・「Night Stalkers」 — Ice-Tの参加によりラップパートが入ったスラッシュナンバー。
・「We'll Be Back」 — 近年では稀なキレ味を持つオールドスクールなスラッシュメタル。
💿 Megadeth (2026年1月23日、17thアルバム)
⭐️ 2.5/5.0
📝 オリジナル最終作は、至って「清算」的な作風。新しさへの挑戦よりも、自分が何者であったかを再確認し、散らばったパズルのピース(リフの使い回し、過去作へのオマージュ、そして METALLICA)を無理やり一つにまとめ上げようとする強引な意志が働いている。Mäntysaariの演奏は楽曲の弱さを浮き彫りにするくらいに完璧。
✅ 「Tipping Point」 ー 中盤のテンポチェンジから雪崩れ込むソロパートの応酬は、これぞ Megadeth と言わんばかりの様式美。
✅ 「Let There Be Shred」 ー リフのキレはアルバム随一、ギターキッズに向けたファンサービスか。
✅ 「Ride the Lightning」 ー 出来栄えはともかく、この一曲が放つ「執着のオーラ」はアルバム全編を凌駕している。
考察|Megadethという“怒りの神殿”──Dave Mustaine、道義と怒声の音楽
Dave Mustaineは、メタル界における最も“原理主義的”な音楽家の一人だ。原理とは何か?それは「決めたら絶対に曲げない」という意志そのものだ。
Alice Cooper「道義人の強いやつだ。やるときめたらとことんやる」
──Alice Cooperの言葉は、薬物地獄を抜けたMustaineの“芯”を示している。自伝を読んだファンは知っている。かつて彼がリハビリに成功したDavid Ellefsonのドリンクにヘロインを混ぜたこと。Kirk Hammettをみて"本当は俺のはずなのに!"とステージを睨んでいたこと。リハビリを17回繰り返し、再起不能になりかけたこと。そして2000年代、彼は“信仰”という不可逆の選択をした。だがその信仰は、過去を“なかったことにする”ための赦しではない。むしろ怒りの矛先を社会に定め、戦い続けるための“原理”としてのキリスト教だった。
だからこそ、Megadethは40年以上もファンと共に歩み、そして今、最後のアルバムと世界ツアーをもって幕を閉じる。どれだけメンバーが変わろうとも、Mustaineの中にある怒りと意志、そして感謝の心が不変である限り、バンドの精神は永遠に揺るがない。怒りをそのままぶつけるのではなく、構築し、練り上げ、論理と技巧で聴き手の胸をえぐる。Mustaineは「感情を持った建築士」だ。
彼の音楽が持つ最大の特徴は、“知性をもった怒り”だ。社会不信、自己嫌悪、世界情勢、個人的な裏切り──それらを抽象化せず、極限まで緻密に、リフと構成に編み込んでいく。これこそが、Megadethの唯一性。Metallicaのような普遍性でも、Slayerのような暴力性でもない。Megadethは常に「Mustaineの論理」と「聴き手の怒り」が共鳴し合うために存在している。
たとえば、2005年10月9日、ブエノスアイレス。Pepsi Musicフェスのステージで、Mustaineは25,000人の観客と一体化した。ギターソロすら合唱される“宗教的熱狂”の中、彼は悟ったのだ。
『今夜ここに来てくれて、ありがとう。楽しんでもらえたなら、俺たちも本当に楽しかった!必ず戻ってくるから!Megadethでな!』」
Megadethは、どんな形であれ続くだろう。そして俺も続くだろう。
Megadethは、Mustaineの狂気と義憤と信念の結晶だ。バンドというより、これは一種の“思想”である。過ちも裏切りも、構成員の変遷も、すべてが物語の一部として蓄積されていく。そして彼は静かにこう断言した。
口に出せない不満や怒りの代弁者を人は求めるんだ。それこそが俺たちのやる音楽さ
この音楽は、正義ではなく“復讐の倫理”に基づいている。だがそこには、不器用な人間たちが唯一、声を上げられる救済の場がある。それがMegadethだ。
終焉を迎えようとしているMegadeth
「終わらせる」という判断は、個人の体力と美学の選択だ。Mustaineは過去に喉頭がんを公表し、療養を経て復帰している。長期ツアーの肉体的負荷や、表現者としての終わり方への美学的志向が、今回の決断の背景にある。衰えの宣告ではなく、自らの意思で描く能動的な終幕宣言であり、ファンへの最後の贈り物でもある。
それは、Megadethの死ではなく「完成」だ。Mustaineの作品群は怒りを理性で構築し、リフと構成に哲学的命題を埋め込む作法こそが彼の特徴だ。最終作はその総括であり、過去の遺産を再解釈する機会となるだろう。ジャケットやライナーノーツ、曲順の選定に至るまで、すべてが彼の物語の一部として提示される。
Metallicaとの比較も、もはや「競争」ではない。かつては「追いつき、追い越す」情念が原動力だった。しかし年月を経て自身の物語を独立させたMustaineは、最後に描くのは“対抗”ではなく“総括”であることを示すのだ。フェアウェル前提の最終作とラストツアーは、各アルバムやライブの歴史的位置づけを変え、初期の混沌や技巧の冴え、商業的実験といった要素が「一つの物語」として結実する瞬間をファンに提示する。
音楽史的には、これはひとつの時代の終幕でもある。Megadethはテクニカルなスラッシュの規範を作り、ギター表現の地図を書き換えてきた。彼らの「終わり」は80年代〜21世紀のヘヴィメタル史における大きな区切りであり、後続世代が受け継ぐべき課題を明示する。最終作がどのように“Mustaineの論理”をまとめ上げるかで、評価は長期的に決まる。
40年以上、Mustaineは世界中のステージで怒りを叫び続けてきた。だがその怒りは衝動ではなく、緻密に組み上げられた意思の建築物だった。彼が音楽で築いたのは、“破滅の予言”でも“救いの福音”でもない。それは、「俺たちは壊れているけど、それでも生きる」という戦士たちの黙示録であり、Megadethの旅路の最期の光でもある。人生に背を向けられた過去や積み重なる劣等感の中で、Megadethの音楽はそっと背中を押し、怒りを恥じず、迷いを肯定しながら、「まだ終わっちゃいねえぞ」と最後まで叩きつけてくれる。
今こそ、“最初の1枚”を聴いてほしい。すでに1枚でも知っているなら、“次の1枚”、そして最終作へ。あなたの「怒り」は、どのアルバムに宿るだろうか。そして、ラストツアーで刻まれる音の余韻は、Megadethがファンと共に走り抜けた証として、永遠に胸に残るだろう。