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Photo by2024gts

第2話 気にかけてくれて、こころが...

    その日、私は少し疲れていた。

    子どもが夜中に熱を出して、ろくに眠れなかったまま朝を迎え、
    バタバタと家を出て、気づけばエプロンのポケットに子どものハンカチが入っていた。
    夫は何も言わずに出勤していった。いつも通り。まるで空気のように。

    ⸻

    そんな状態で職場に入ったから、いつも以上に気を張っていたのかもしれない。

    開店準備のとき、商品が入った段ボールを運ぼうとしてバランスを崩した私に、
    後ろからすっと手が伸びた。

    「無理しなくていい。休憩、入ったら?」

    その声に、ふと力が抜けた。

    ⸻

    午後の休憩室。
    たまたま時間がかぶった彼と、2人きりになった。

    私はアイスコーヒーを持って、ソファに沈むように座った。
    彼は私の向かいに腰を下ろして、缶コーヒーを手にしていた。

    「朝倉さん、…今日、ちょっと元気ない?」

    何でもない風にそう言われて、一瞬、言葉に詰まった。

    「娘がちょっと熱出しちゃってて、寝不足で…」 

    「ああ、それはしんどいな。奥さんって休まれへんよな」

    その一言が、不思議と胸に沁みた。

    ⸻

    夫は、こんなふうに私の体調や気持ちに気づいたことがあっただろうか。
    いや、たぶん、もうずっとなかった。

    私は苦笑いをしながら、「まぁ…そんな感じです」とだけ返した。

    ⸻

    彼は、視線を外して缶コーヒーのプルタブをいじっていた。

    その姿がなぜか妙に落ち着いていて、
    この人といる時間が少しだけ心地いいと思ってしまったのが、
    自分でも意外だった。

    ⸻

    休憩が終わると、彼は立ち上がってこう言った。

    「無理せんといてな。って、言っても、無理しちゃうんやろけど」

    その声のトーンが、少しだけ優しくて、
    私は思わず背中を見送ってしまった。

    ほんの数秒、なぜか動けなかった。



          次回一気に距離が縮まる。。

     
     
     
    心だけのつもりだった。 でも先に濡れていたのは、いつも身体だった。 39歳。妻であり母である私が、 ひとりの“女”としてほどかれていく過程を綴ります。 誰にも言えなかった、ないはずだった恋の記録を綴ります。 感情の波をそっと見つめるあなたに、 この物語が届きますように。

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