
誰も遊ばない公園
5年前の話。
当時、私は大学生で一人暮らし。
この話は、後に母から聞いたものだ。
私には8歳離れた兄がいて、兄夫婦には子どもが2人。長女が当時3歳、長男は産まれたばかりだった。
義姉が長男を出産してから1ヶ月ほど、母は義姉を休ませるために、毎日長女を朝から夕方まで預かっていたらしい。
朝、兄の家に迎えに行き、実家に連れて来て、近くの公園をはしごする。
「昼寝で爆睡させるための体力削り散歩」——母のルーティンだ。
私の実家の周りは、公園がやたら多い。
母はその日も、砂場セットを持って姪と手をつなぎ、いつものように出かけた。
遊んだあと、「そろそろ帰ろうか」と散歩しながら歩く。
方角だけを頼りに、歩いたことない道をクネクネと進んでいくと、急に視界が開けた。
知らない公園があった。
「こんなところに、公園…?」
時間もあるし、せっかくだからと中へ入る。
広いのに、人の気配がまったくない。
木々が異様に高く、枝が空を覆い、昼なのに薄暗い。
風もないのに、葉だけがざわ…と揺れた気がした。
「なんだか気味が悪い…」
そう思いながらも、母は姪を砂場で遊ばせた。
しばらくして、ふと気づく。
姪が、入ってきた側とは反対の木の辺りを、じーっと見つめている。
「どうしたの、〇〇ちゃん?」
返事はない。
ただ、目だけがそちらを向いたまま。
やがて姪は砂場遊びに戻るが、またしばらくすると、同じ木をじーっと見つめている。
その視線が、まるで“誰かと目が合っている”ように見えて、母は背筋が冷えた。
10分も経たずに、「もう帰ろっか」と切り上げた。
入ってきたのとは反対側の出口から出て、振り返った瞬間、母は息を呑んだ。
——そこは、私の実家の近くにある“誰も寄りつかない公園”だった。
私が小学生の頃、近くに怖いお婆さんが住んでいて、ボールが飛んでいくと怒られる、公園でうるさくすると怒られる、という噂があった場所。(公園の隣に住んでおきながら、なんて理不尽な)
公園自体も暗くてじめっとしていて、子どもたちの間では“近づかない公園”として有名だった。
きっと年齢的にお婆さんはもう住んでいないだろうに、今でも人が遊んでいるところを見たことがない。
「裏から入ると、こんな感じなのか…」
母はそう思い、その日は普通に家に帰った。
姪を送り届け、家でひと息ついたとき、ふとあの公園のことを思い出す。
ほんの好奇心で、大島てるの事故物件サイトを開いてみた。
——炎がひとつついていた。
しかも、姪がじーっと見ていた、あの木があたりに。
コメントには、"心理的瑕疵"とだけ書かれていた。あの時、姪は何を見ていたのだろう。