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Photo byai_gazou

竜巻を巡るそれぞれの記憶 essay#1


    夕食中、夫が唐突に「小学校の時の運動会で、竜巻あったよね?」と聞いてきた。

    竜巻……?

    私の脳が一気に、30年近く前の記憶を遡る。そんな大昔のこと、と思ったけれど、ある記憶の引き出しがピタッと止まった。

    校庭の真ん中で、競技の待機中。突風が吹き荒れ、体が大きく揺さぶられた。恐怖を感じた私は、隣にいた同級生に思わず抱きつく。
    「きゃー!」という悲鳴の先を見ると、【◯◯小学校PTA】と書かれた白いテントが、風で空高く舞い上がっていた。
    恐怖心と、非日常への不謹慎な好奇心。あの強烈な映像は、今でも脳裏に焼き付いている。

    その話をすると、夫は目を輝かせて言った。
    「あれ、やっぱり竜巻だったんだよ。俺、島の方を見たら竜巻が渦巻いてるのが見えてさ、竜巻だー!って叫んだもん」

    夫の言う「島の方」とは、まさに私が住んでいた地域であり、通っていた小学校がある方向だった。

    気になった私は、夕食もそこそこにスマホで検索を始めた。
    『◯◯市 竜巻 運動会』
    『◯◯市 竜巻 平成◯年』

    しかし、ヒットするのは近年のニュースばかり。平成初期の、田舎の地方都市の記録なんて、インターネットの海には一つも残っていなかった。あれは本当に竜巻だったのか、それともただの大きなつむじ風だったのか。ネットの検索窓は、何も教えてくれない。

    結局、答えは出ないまま、スマホの画面を閉じた。

    解決しない謎に少しだけ胸が燻っているけれど、ふと思う。
    30年前、まだお互いの存在すら知らなかった少年と少女が、同じ日に、同じ突風に目を見張っていたのかもしれない。

    答え合わせのつかない夫婦の記憶のピースは、未完のまま、今夜の食卓を少しだけ不思議な空気で満たしている。

     
     
    そのへんに生息する普通の人。 本と暮らしと、ときどき保育。 3行日記という全く3行に収まってない日記とエッセイを綴りながら人生組み直し中💁‍♀️ 40代目前。私には何ができるのか。

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